【タコの知性 その感覚と思考】レポート

【タコの知性 その感覚と思考】
池田 譲 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022950668/

○この本を一言で表すと?

 イカの専門家によるタコの感覚と思考の研究の本

○よかったところ、気になったところ

・研究が難しいタコについてのこれまでの研究結果や、まだ結論が出ていない研究内容などについて、その研究プロセスも含めて紹介されていました。

・海洋研究、イカやタコの研究の日常なども紹介されていて興味深かったです。
沖縄での海の研究は楽しそうに思えました。
飼育の難しいイカやタコは、活きたイカやタコを買い付けて運んでもらうという話もなるほどなと思いました。

・タコは同じタコでも種が異なれば異なる生態だったりすること、脊椎動物とは異なる進化を辿っていても匹敵するような知性を有していること等、興味深い内容がたくさんありました。
タコが賢いという話は聞いたことがありましたが、昔のSFで火星人がタコから進化したような姿だったりするのにも意味があったのかなと思ったりしました。

序章 タコと人と日本と

・タコとイカはよく一括りにされますが、漁獲量はイカのほうが圧倒的に多いそうです。
イカの中で漁獲量第三位のスルメイカの漁獲量がタコ全種の総合計と同じくらいだそうです。その理由として容易に獲れるかどうかの違いがあり、イカは海の表層で大規模な群れをつくるのに対して、タコは海底で単独で暮らしていることが理由だそうです。

・日本ほどタコの料理の種類が多く、身近にタコがある国は他にないそうです。

第一章 タコのプロフィール

・タコは軟体動物門の頭足綱に属し、頭足綱はタコやイカの二鰓亜綱とオウムガイやアンモナイトの四鰓亜綱に分かれ、タコは八腕目に属し、八腕目は有鰭亜目と無鰭亜目に分かれ、タコのほとんどは無鰭亜目でヒレがない種類だそうです。

・タコは胴体・頭部・腕部に分かれ、胴体(外套膜)と腕部の間の目のある部分だけが頭部だそうです。
墨を吐く頭部の漏斗がタコの口とよく間違われるそうですが、タコの口は腕部の足のつけ根の真ん中にある部分だそうです。

・タコは表皮に色素胞を持っていて、色素胞を収縮することで色を表現しているそうです。
タコとイカの体色変化速度は動物界ナンバーワンで、更に体表の凹凸も変えることができ、隠蔽に達人なのだそうです

・タコのほとんどは短命で一年程度、長くても二年程度の寿命だそうです。
タコやイカの大部分は繁殖後に死亡するそうですが、イカは産卵後にすぐ死亡し、タコは子育てしてから死亡するという違いがあるそうです。

第二章 タコの賢さ

・タコは、物に対する行動と刺激を関連付けるオペランド学習や、ガラス瓶に好物のカニを入れてコルクで栓をしたものに対する新規課題の学習などを解決でき、またオペランド学習している他のタコを見て学習する観察学習もできたそうです。
観察学習はチンパンジーでも難しい高度な学習だそうです。

・現生種のタコは250種類程度だそうですが、たった一種のマダコに対する研究が進み、他のタコに対してはあまり進んでいないそうです。
日本ではイイダコで同様の研究を実施して、マダコと同様に観察学習できることを確認したそうです。
イイダコはマダコより小さく、孵化してすぐに着底する性質があって飼育が容易で研究に向いているそうです。

・メジロダコというタコは二枚貝の殻やココナッツの殻を持ち歩き、シェルターとして利用する道具利用が見られるそうです。

第三章 タコの感覚世界

・タコの目はヒトの目とかなり構造が似ているものの、ヒトは反転網膜という仕組みで盲点があり、タコは直接光を受ける仕組みで効率的なのだそうです。
一方でタコはヒトのように錐体細胞と桿体細胞の区別がなく、白黒の世界で見ているそうです。
タコはヒトが感知できない偏光を感知できるという特性もあるそうです。

・タコの腕の吸盤には感覚器が集まっていて、腕で考える生き物だとも言えるそうです。
著者の研究室で、iPadで表示した記号に触れるテストなどにあまり反応しないことと、実際の触れる物だと反応することから、視覚で確認し、触覚でも確認すると記憶できるのでは、という結論を出したそうです。

・軟体動物であるタコの腕でも、どこでも自由に動かすのではなくて、関節があるかのように一定のパターンを持たせて動かすことで速度を出しているそうです。

・タコの脳の体に対するサイズは、脊椎動物と比較すると、哺乳類と鳥類よりは小さく、爬虫類・両生類・魚類はよりは大きい、というくらいなのだそうです。
触覚に関わる部位、視覚に係る部位等はある程度分かっているそうですが、タコの脳の構造についてはまだまだ未知の部分が多いそうです。

第四章 タコの社会性

・オーストラリアの海でオクトポリスというところがあり、シドニーダコが複数で暮らしていて、互いに格付けする等の社会性が見られるそうです。

・タコにもヒトと同様にセロトニントランスポーターをコードする遺伝子があり、そこに作用する合成麻薬のMDMAを投与すると、通常は単独制・非社会性を示すカリフォルニアツースポットダコが他のタコに絡みに行ったそうで、潜在的には社会性を有しているのではと思われるそうです。

・沖縄の海に住むソデフリダコやトロピダコは同種同士で集まることがあり、社会性が見られるそうです。
最も研究されているマダコは単独性・非社会性が強く、集まるという事例は見られず、種によって社会性が異なるのではと考えられるそうです。

第五章 吾輩はタコである

・タコが鏡に写った自身の姿を自分自身と認知できるかどうかの研究について述べられていました。
鏡像自己認知は大型類人猿、バンドウイルカ、アジアゾウ、カササギ、掃除魚として知られるホンソメワケベラなどで見られるそうです。
アオリイカでは鏡像自己認知があるような結果が出たものの、タコではいくつかの種で実験しても見られなかったそうです。

・タコの表情について、タコは体色パターンで感情を表している様子が見られるそうです。

・タコは母ダコが卵塊を世話する動物ですが、母ダコが死亡した卵塊の蛸壺と他の母ダコの蛸壺を近づけると、両方の蛸壺を行き来して世話をした報告があり、タコの仮親行動が母性の表れとも考えられているそうです。

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