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【この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた】レポート

【この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた】
ルイス ダートネル (著), 東郷 えりか (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4309464807/

○この本を一言で表すと?

 文明が一度途絶えた後に、どうすれば再興できるのかを検討した思考実験の本

○面白かったこと・考えたこと

・文明を再興するのに必要な内容について、主に化学面で様々な事項が述べられている本でした。

・読み始める前に、何となくこれが重要だろうと思っていたことが書かれていましたが、あまり重要だと考えていなかったことも重要であると書かれていて、意外な発見が多かったです。
ガラスが化学実験や計測に重要であること等、技術が成り立つ上で前提として必要となるものごとが結構あるのだなと気付かされました。

序章

・ファインマンの全ての文明がなくなってしまった後に知的生命体に最も多くの情報を最も少ない単語数で伝える一文が「原子仮説」としたというのは深いなと思いました。

・純粋な知識と技術の違いを挙げ、飛躍的に技術上の革新を遂げた例として明治維新期の日本が挙げられていました。

第1章 僕らの知る世界の終焉

・文明の終わり方と復活可能かどうかの検討で、わずかな人類しか生存していなければ存続そのものが難しく、文明を復活させるより目の前のことをこなすしかなくなること、1万人くらいは生存する仮定でなければ文明復興は不可能か、数百年以上先になる、という話が述べられていました。
文明破局後には自然が割と早い時期に復活していくそうです。

第2章 猶予期間

・文明崩壊から文明復活まで、人口が相当数減っただけで物資等が残っている仮定であれば、避難場所・水・食糧・燃料・医薬品等は人類の数に比べてかなり余っている状態なので、それらの消費期限までは猶予になるそうです。

・都市は様々な文明による基礎によって動いているため、文明崩壊後はかなりのスピードで朽ちていくので離れた方が賢明だそうです。
都市の資源は都度活かしつつ、離れて暮らすのがよさそうです。

第3章 農業

・猶予期間のあるうちに農業に失敗しながらも試行錯誤することがスタートになるそうです。

・農業は窒素を循環させる過程でもあり、肥料やマメ科の植物などで土壌に窒素を固定し、その土壌でできた食料で人間が窒素を取り込み、排出したものを肥料として再度土壌に投入、というプロセスでもあるそうです。

・農業を原始的な農具や手法で効率化して1人が10人分の食糧を生産できるようになれば人は農業だけの状態から解放され、他の文明復興に着手できる余裕ができるそうです。

第4章 食糧と衣服

・生産した食料をどうやって処理し、保管するかということも重要になるそうです。調理方法や穀物の処理方法、温度管理等について述べられていました。

・冷媒にアンモニアの溶解・分離を利用する冷蔵庫についても述べられていて、故障した時は悲惨なことになりそうですが、現在の冷蔵庫より再現しやすそうだなと思いました。

・衣服も重要な要素であると述べられていました。
割と優先度が低めな要素だと思っていましたが、体温を確保できないと人間は3時間で死亡すると聞いたことがあるので、文明崩壊後かなり早めに解決すべき要素なのだなと思いました。
植物由来・動物由来のどちらにしても、糸にして布にしていく過程はかなりの労力が必要となるので、技術的に解決するのは早めの方がよさそうです。

第5章 物質

・熱エネルギーを得るための物質として、石炭より木炭の方が温度の高さなどの点から優れた燃料であり、文明崩壊後の自然の復活で木炭が有用なエネルギー源となりそうなこと、最初に加工しなければならない物質は炭酸カルシウムであることが述べられていました。
また石鹸も衛生面の確保のために早めに生産できるようになっているべきだそうです。

・木材を木炭にする過程で出てくる蒸気が木酢や粗タールになり、これらの物質もまた重要になるそうです。

・人類の歴史では石灰や炭などからアルカリを確保し、利用してきたそうですが、酸については酢酸以外なかなか確保できなかったそうです。
硫酸が生産できるようになり、それ以外の酸も生産できるようになって様々な技術に発展していったそうです。

第6章 材料

・文明崩壊後、容易に集めることができ、レンガや陶器等を作成する材料になる粘土がまず重要になるそうです。

・石灰をコンクリートにすることで様々な建造物にできることも、ローマ帝国時代から使用されていて現代でも使われている重要な技術だそうです。

・粘土や石灰を使いこなすことで金属の加工ができるようになるそうです。

・医薬品や化学実験等の派生する技術のために透明なガラスの生産も重要であることが述べられていました。

第7章 医薬品

・医療技術は様々な基礎技術や医薬品、医療器具などから成り立っているため、医師や看護師が生き残っていても復活させることが容易でない分野なのだそうです。

・文明崩壊後でもすぐに可能なのは、感染源についての知識に基づく衛生管理、聴診器等の原始的な仕組みでも可能な医療器具、柳やトウガラシ等を利用した鎮痛剤などだそうです。

・手術を実施する上で必要なのは3つのAであるアナトミー(生体構造)、エイセプシス(無菌)、アネスシージア(麻酔)であり、この3つに関する知見が十分になければ手術は実現できないそうです。

・微生物学が廃れてしまった場合、再興するのに必要なものはガラス製品であり、レンズによって拡大してみることができることが前提になるそうです。

第8章 人びとに動力を

・水力や風力で物を動かす、というのが割と文明崩壊後すぐにできそうな内容として書かれていました。

・力を伝える手段としてのクランクやカムとトリップハンマー等はシンプルながら様々な用途に展開できる技術だなと思いました。

・動力源と利用場所を離れた場所にできる電力を介した仕組みのすごさは、現在の生活の様々な面を支えていていますが、改めて画期的なことだったのだなと思いました。
この分離の波及効果を考えると、技術革新のインパクトのすごさが想像できるように思いました。

第9章 輸送機関

・現在の機械文明を失った場合の輸送機関について、畜力によるものと風力等によるものが挙げられていましたが、この切り替えからまだ100年ちょっとしか経っていないというのは、すごい変化のある100年だなと改めて思いました。

・ソ連崩壊後のキューバが20年目に急に化石燃料の供給がなくなり、畜力に戻った話が出ていましたが、文明が崩壊しなくても供給から切り離されるだけでものすごい後退に見舞われることもあるのだなと思いました。

第10章 コミュニケーション

・人間の発展の要因を辿るとコミュニケーションができることに行き着く気がしますが、文字を書く媒体、印刷技術、電気通信技術と、この技術についても近年になって急に加速しているのだなと改めて思いました。

・電気通信技術も基礎的なものは基本原理がわかっていれば再現できるものとして書かれていて、この原理を理解しているかしていないかで文明崩壊後の発展度合いも結構変わってくるのではないかと思いました。

第11章 応用化学

・爆発物や写真技術の発展が現在の文明に至るまでの役割や、工業的に目的の物質を大量生産する技術をソーダ灰やアンモニアを精製する技術を例に挙げるなど、化学知識の応用で莫大な成果を上げられる事例が述べられていました。

・この章までの特に前半の章で書かれていた衣食住や必要な物資に関わる技術を高いレベルで解決するには、高度な化学の知識が実践される必要があるのだなと思いました。

第12章 時間と場所

・感覚で分かる時間よりも短い秒などの単位、長い月や年などの単位をどのように把握して実現するか、相対的な位置をどうやって把握するかなどが述べられていました。

・前提となる知識がある程度残っていなければ、それぞれ確立するまで長い年月が必要になりそうで、定着するにはその年月の間文明が成長し続ける必要もあり、時間と場所を把握するというのはかなり構築が困難な内容なのだなと思いました。

第13章 最大の発明

・科学的な思考、実践こそが最も重要であると締められていました。
計測すること、検証すること、証拠を確立することなどが全ての基礎にあるそうです。

○つっこみどころ

・章をまたいで説明されている内容が多く、時間をおいて読むと前提の記述に関する記憶が薄くなっていて読み返す必要があり、大変でした。
もう少し順序や構成を分かりやすくしてくれていればもっととっつきやすい本になっていたかなと思いました。

・個別の記述では、基礎となっている技術・文明がどの程度まであるか、どれだけ復興しているからそれができるか等のレベルがバラバラで、一からどういった順序で復興させるべきなのか等がわかりづらかったです。
基礎・応用・発展等にもっとわかりやすく章立てしてくれていたらもう少しわかりやすかったのかなと思いました。