【奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業  この生きづらい世の中で「よく生きる」ために】レポート

【奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業  この生きづらい世の中で「よく生きる」ために】
荻野 弘之 (著), かおり&ゆかり (著, イラスト)
https://www.amazon.co.jp/dp/447810137X/

○この本を一言で表すと?

 漫画と解説で綴る「よく生きる」ための考え方の本

○よかったところ、気になったところ

・エピクテトスの言説にこの本で初めて触れましたが、自分自身という自分が最もコントロール可能なものに集中し、他のものに煩わされない考えを徹底しているように思いました。
浄土真宗などでよく出てくる「他力本願」と対比する「自力本願」というキーワードが読んでいて思い浮かびました。

・エレノア・ルーズベルトやガンジーが「己を傷つけることが出来るのは自分自身のみである」というようなことを伝えていたと思いますが、エピクテトスの考えが基だったのだろうなと思いました。
1~2世紀の人物の言説が様々な人物に採り上げられ、今にも息づいていると思うとすごいなと思いました。

・「7つの習慣」で、全ての問題は「直接的にコントロールできる問題(自分の行動に関わる問題)」「間接的にコントロールできる問題(他者の行動に関わる問題)」「コントロールできない問題(過去の出来事や動かせない現実)」の三つに分けられるという話がありましたが、エピクテトスの考え方はそれの基になっている考え方かなと思いました。

・この本は、漫画での「よくない行動・思い→エピクトテスの教えによる指摘→納得」の流れの後で具体的に引用とその解説をするという構成で、かなり分かりやすく書かれていたと思います。

第1部 認識を正す―「我々次第であるもの」とは何か

・「自分次第であるものかどうか」を基準として、自分次第でないものを軽く見ることを勧め、自分次第でないものの例として病気のように避けようもないものや、他者からの評判などを挙げていました。
また、自身の意志は自分の体にも引っ張られずに自分次第であるものであることも述べられていました。

第2部 感情の奴隷から脱する

・事実そのものや他者からの侮辱が自分の感情を支配するのではなく、それらに対する自分自身の考え方が感情を支配していることが述べられていました。

・自分のものであっても他者のものであるように考えよ、という教えはかなり突き詰めた考え方だなと思いました。
自分の家族が亡くなった時でさえも例外なくそのように考えるように述べられていて、その徹底ぶりに驚きました。
他者のことであれば慰めるような内容でも自身のことになったら冷静に考えられないというのは時代を超えて共通しているのだなと思いました。

・失ったと考えずに神に返したと考える、というのは他でも聞いたことがあるなと思いました。
自分の人生、自分の魂もそう考えるように、という話を何度も別の機会に聞いたことがあるように思います。

第3部 人間関係のしがらみから自由になる

・他者がどのような人物かを決めつける、他者の行動を評価する等の「社会の鏡」と真実の違いについて述べられていました。

・他人を非難することだけでなく、自分を非難することもやめる、という考え方は興味深いなと思いました。
解説で書かれていましたが、自分の甘えに繋げるのではなく、一喜一憂せず事実を事実として受け止めることに繋げるのであれば有用な考え方だと思いました。

第4部 真に成長し、よく生きる

・承認欲求を満たすことを目的とするのではなく、自省を続けて成長することについて述べられていました。

・恐ろしいこと、特に「死」を考えて生きる意味を考え、自分自身を演劇の俳優として主役でなくても自身の役を立派に演じることを考えることが、「よく生きる」ことに繋がると述べられていました。

○つっこみどころ

・自己に完結した考えのみが紹介されていて、協働や競争などの他者との関わりの中での成長などを意図的に無視する考え方になっているように思いました。
自立のスタート地点ではよい教えになると思いますが、この本の教えで完結しては駄目なようにも思えます。

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