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【細胞の中の分子生物学 最新・生命科学入門】レポート

【細胞の中の分子生物学 最新・生命科学入門】
森 和俊 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062579448/

○この本を一言で表すと?

 京大教授の自身の研究成果も含んだ分子生物学講義の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・平易なわかりやすい文章で最新の知見も含めた分子生物学について、段階を踏んで説明されていて面白く読めました。
専門的な内容はコラムにまとめることで、本文をできるだけ読みやすくするという構成もよかったと思います。

・新しい内容が出る都度、そのことを説明する図が載せられていて、イメージしやすくなっていました。これも理解しやすい工夫でよかったと思います。

・後半では研究者としての著者の実績と、研究者としての競争や発表についてなど、どのような体制で研究が進んでいるか分かって勉強になりました。
研究者の大変さと、やりがいなども伝わってくるようでした。

・最後に用語の索引があって、後からふと疑問に思ったことなどをピンポイントに読み返しやすくなっているのがよかったです。

第1章 物質から生命へ

・遺伝子、DNAの発見等についてそのプロセスが書かれていました。
DNAの構成要素であるヌクレオチドの構造の図まで載せられていて、高校までだと化学と生物と区分されている内容をそれぞれ理解していないと分子生物学の内容に入っていけないのだなと思いました。

第2章 遺伝子からゲノムへ

・タンパク質の構造や、アミノ酸を指定する3つの文字で構成されるコドンの対応表などが載っていました。
分子レベルでどのような構成要素があって、どのように表現され、実際にどう動いているか、というところまで解析されているのはすごいなと思いました。

・スタンリー・ミラーの原始のスープの実験でアミノ酸が生成されるところまでは知っていましたが、2009年にRNA型のヌクレオチドが生成されることが証明されていたのは初めて知りました。
アミノ酸が生成されるくらいで生命が偶然誕生したというのは根拠が弱すぎるなと思っていましたが、遺伝子の構成要素まで生成されることが証明されたのなら、かなり状況が変わっているのかなと思いました。

・DNAとRNAの違いはチミンとウラシルということは知っていましたが、どちらでも使用されているシトシンが脱アミノ化するだけでウラシルになってしまうこと、そのために遺伝情報としては不安定であることは初めて知りました。

第3章 DNAからタンパク質へ

・DNAからRNAに転写する仕組みをはっきりと理解しておらず、都度全コピーするものかと勘違いしていましたが、コピーをスタートする記号のTATAボックスや終了の記号があり、そこだけをmRNAがコピーするというのは、効率的だなとお思いました。

・何らかの必要があってタンパク質を生成する必要があり、RNAに転写するのであれば、そのトリガーとなる仕組みがないと機能としておかしな話になりそうだなと思っていましたが、各アクションに対してそれぞれの転写因子があり、その転写因子が作用することで動くこと、その転写因子の有無で、どこでも生成されるタンパク質、特定の器官のみで生成されるタンパク質などができることなど、どの細胞でも(一部は違うみたいですが)同じDNAなのに違う器官によって違う働きをする理由も分かってよかったです。

・DNAが二重らせん構造とは知っていましたが、そのDNAがどういう形で省スペースに収められているかも説明されていました。
ヒストン芯に巻き付いてヌクレオソーム構造になり、それがクロマチンとして集合する形になっていることがよく分かりました。

第4章 細胞から細胞内小器官へ

・細胞小器官では言葉として誤りやすいので、「細胞内小器官」が浸透することを願ってこの本ではこの用語で統一するという著者のこだわりが面白いなと思いました。

・細胞内小器官についてはそれぞれ名前くらいは知っていましたが、各細胞内小器官がどのような働きをしているか、どのように連動しているかが詳しく書かれていてよかったです。

・mRNAが遊離リボソームに取り込まれ、合成されるタンパク質の末端にシグナル配列があり、そのシグナル配列が行き先を決めているという構造はすごいなと思いました。

・小胞体とゴルジ体について特に詳しく書かれていましたが、これらについては今まで簡単な説明しか読んだことがなかったので勉強になりました。
小胞輸送という仕組みで、ある程度まとまったタンパク質として輸送されている仕組みは面白いなと思いました。

第5章 タンパク質の形成と分解

・1列になっているタンパク質を折りたたむこと(フォールディング)が重要で、タンパク質の機能を決めるというのは面白いなと思いました。
昔、パソコンに触っていないときにタンパク質の折りたたみ方を分析する手伝いをさせるスクリーンセイバーみたいな画面を見たことがありましたが、この研究の手伝いだったのだなと思いました。
その折りたたむ手伝いをする分子シャペロンというものについては初めて知りましたが、介添人という意味のシャペロンという名前の通りにタンパク質を適切に折りたたむ手伝いをする機能があるタンパク質というのは面白いなと思いました。

・タンパク質の形がおかしくなるだけでプリオン異常の深刻な病気に繋がるなど、形そのものが機能を決定しているのは興味深いなと思いました。

・タンパク質の分解のしくみが2つあり、ユビキチンが複数くっつくことで分解致傷と認識されてプロテアソームに取り込まれるパターンと、リソソームに取り込まれて分解するオートファジー(自食)によるパターンがあるというのも興味深いなと思いました。

第6章 脅威の復元力

・小胞体ストレス反応の話で、著者の研究分野であり、アメリカの研究室でこの反応について発見した話が書かれていました。
異常なたんぱく質が存在する、ということを検知するセンサーがあるはず、という仮定で研究を続けてついにつきとめるプロセスには、研究者の凄みを感じました。

第7章 生命の基盤を解き明かす

・異常なたんぱく質の発生に対する対応で、まず生成を止めて様子を見て、改善を試みて、それでもだめなら異常なたんぱく質を分解するという仕組みは、確かに著者の述べるとおり工場の品質管理みたいだなと思いました。
このプロセスの研究の過程も、当事者としての著者の研究過程を含めてかかれていて、臨場感があって面白かったです。

○つっこみどころ

・第4章の細胞内小器官の説明で、ペルオキシソームだけ機能の説明がないまま終わっていて気になりました。
別の本で理解できたのでよかったですが、それほどページ数が増えるわけでもないので網羅してほしかったです。