
【宇治拾遺物語 ビギナーズ・クラシックス】
伊東 玉美 (編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4044002452/
○この本を一言で表すと?
含蓄ある話を集めた古典の解説の本
○よかったところ、気になったところ
・「ビギナーズ・クラシックス」シリーズは結構外れが多い印象でしたが、この本は初心者向けとしても背景や内容の理解の点でもとてもよかったと思いました。
今まで読んできたのはどれも中国の古典だったので、日本の古典はまた違うのかなと思いました。
・「ビギナーズ・クラシックス」シリーズを買う時はいつも全訳本も併せて買っていましたが、宇治拾遺物語の全訳は上下巻で1700ページ超の大作だったので今回は断念しました。
この本は抄訳でしたが全体像や背景、未掲載の話の内容や話同士の関連などにも触れられていて、全訳を読まなくても満足できるように思えました。
・宇治拾遺物語が13世紀前半、今昔物語集が12世紀前半に世に出て、内容に共通点があるという話は興味深いなと思いました。
承久の乱の頃の物語と保元の乱よりも前の頃の物語で時代背景が異なりそうですが、民間レベルではあまり考え方や習俗などは変わっていなかったのかなと思いました。
・信仰に熱心な聖・僧侶が信仰以外には無知で、化生に騙されている話がいくつもあり、興味深いなと思いました。
何かに依存することの怖さを示すエピソードで、現代にも通じそうです。また、9世紀前半に世に出た「日本霊異記」では信仰に熱心な僧侶が無条件に尊いものとして扱われていましたが、数百年経つと世相も変わるのかなと興味深かったです。
・そのまま物語として現代訳だけ読んでも面白い内容ですが、内容の意味や話同士の関連、解釈に必要な教養などを含めて考えるとより面白いなと思えました。
世に出た当時や、後世の人、現代人がそれぞれ読み継いでいった物語というのは貴重だなと思えました。
・所有格の言葉で「~が」「~を」だと「~が」の方が格下に向けて使う言葉であることや、そのことにまつわるエピソードが面白かったです。
小役人が旨味のある仕事に就いて調子に乗って自尊心を傷つけられ、周りを非難して失脚する話でしたが、こういう種類の人物の典型を見事に描いているなと思いました。
・日本だけでなく、中国やインドの話も出てくるのが興味深かったです。
伝聞や想像で述べられているような内容でしたが、当時の海外の認識レベルが伝わってくるようでした。
インドで仏教が衰退していることなど当時の日本ではほとんど知らなかったのかなと思います。
