【三酔人経綸問答】レポート

【三酔人経綸問答】
中江 兆民 (著), 鶴ヶ谷 真一 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334752861/

○この本を一言で表すと?

 明治半ば当時の両極端な理想論と現実主義論を提示した本

○よかったところ、気になったところ

・極端な平和主義の意見の後で侵略主義の意見を提示し、最後に実際に可能な現実主義の意見を提示するという構成になっていて読みやすく、興味深い内容でした。1887年(明治20年)という時期に、ここまで様々な方面の考え方を提示できるのはすごいなと思いました。

・著者がルソーの「社会契約論」を漢訳した人なので、ルソーの考え方が全面に出てくるかと思っていましたが、あまり出てこなかったのが意外でした。

・洋楽紳士の語りは日本だけでなく他国にまで射程を広げた理想主義で読んでいてあまりピンときませんでしたが、豪傑の客の「古いもの好きの人と新しがりやの人」の区分とその性質の話は、自身を古いもの好きとして侵略の過程でまとめて死なせてしまえばいいという意見も含めて興味深いなと思いました。

・南海先生の地に足の付いた現実的な意見は、当時の状況から見ても妥当に思えました。
洋楽紳士の言う「進化の神のもとめるもの」を否定し、進化の神がいるならこれまでの進化の過程自体も肯定するとした話なども納得するものがありました。

・解説で中江兆民の人生と考え方が紹介されていて興味深かったです。
フランスで学んだ後に植民地にも訪れて、理想と現実の差異を知って「“ごり押しの強者”批判」の考えを持ち、一貫して自分の考えを貫いて生き抜いたのはすごいなと思いました。

・余談ですが、私はずっと中江藤樹と中江兆民が呼び方の異なる同一人物だと思っていて、陽明学者の中江藤樹が社会契約論を漢訳したのはすごいなと思っていましたが、全くの別人ということを今回はっきりと確認できました。

○つっこみどころ

・本文は読みやすかったですが、それなりに元の言い回しを残していて、既に現代語訳が出ているこの本を新約で出す意味がそれほどあったのかなと思いました。
新約で出すことはこの光文社古典新訳文庫に加える口実なのかもしれませんが。

・三者の対話ということで三者のその立場の違いからのやり取りを楽しみにしていましたが、前半はほとんど洋楽紳士の語りだけでそれほど対話していないなと思いました。

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