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【NHK「100分de名著」ブックス ニーチェ ツァラトゥストラ】レポート

【NHK「100分de名著」ブックス ニーチェ ツァラトゥストラ】
西 研 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4140815221/

○この本を一言で表すと?

 ニーチェを否定するような結論も含めてニーチェに絡めた考え方とその活用法を語る本

○面白かったこと・考えたこと

・ニーチェを読んで救われた、みたいなエピソードを複数聞いたことがありますが、「ツァラトゥストラ」を読んでも全くそのような印象を受けませんでした。
この本でニーチェの考え方の解釈を知って初めて「そういう意味なら救われる人はいるかもしれないな」と思えました。

・ニーチェの考え方の解説の本でしたが、「一人でがんばるのはよくない、頼ること・尋ね合うことが大事」とニーチェの根本を否定するような著者の主張もあるのが面白かったです。
それを言ってしまったらニーチェの各キーワードは成り立つものの、ニーチェ自身の考えたプロセスはいろいろ成り立たなくなってしまいそうな気もしますが。

第一章 ルサンチマンを克服せよ

・ニーチェが早い時期から成功を続け、28歳で「悲劇の誕生」を著してそれが自分を推薦した教授にも学生にも否定されて大学人としては挫折し、尊敬していたワーグナーとも決別し、体調を崩し、38歳でルー・ザロメに結婚を申し込んで即振られ、その翌年に「ツァラトゥストラ」の第一部を10日間で完成させ、その翌年に第二部と第三部、その翌年に第四部を完成させたそうです。
単純にルー・ザロメに振られた衝撃を原動力に「ツァラトゥストラ」を書き上げたのでは、と思えました。

・復讐心、嫉妬などを意味するルサンチマンが己を腐らせるものとして、このルサンチマンがキリスト教の神を生んだとする考えは極端ですが、興味深いなと思いました。

・力あることをよいとする貴族的価値評価法と、キリスト教の隣人愛としての善や快楽や喜びを求める悪の僧侶的価値評価法を対置して、前者を肯定して後者を否定するニーチェの考え方は、当時でも現代でも批判が多そうだなと思いました。

第二章 「神の死」から「超人」へ

・至高の価値と思っていたことが否定されることでニヒリズム・虚無感に陥ること、ある価値観に依存するのではなく、自ら創造する者になること(超人になること)を重要だとする考えは、少し違うかもしれませんが他律と自律の話、「アウトサイドイン」と「インサイドアウト」の話に似ているなと思いました。

・「汝なすべし」を否定して「われ欲す」を肯定する、という話は、カントの定言命法と仮言命法の優先順位と真逆になっていて面白いなと思いました。

第三章 永遠回帰とはなにか

・何度も同じ人生を繰り返す、という前提が「永遠回帰」で、それでも後悔しない人生を送る、という考え方は、かなり意欲的だなと思いました。
「もう一度この人生を送りたい」と思える生き方を目指すというのは素直に同意できそうだなと思いました。

第四章 現代に「超人」は可能か?

・創造する「超人」を目指すなら他者とともに成長するべし、というニーチェの真逆の方向性の結論が述べられていました。
「表現のゲーム」で①他者のあり方への感度を育て、②自己の生き方を振り返り、③生きる上での価値と目標を育てる、ことが重要なのだそうです。
あまりにニーチェ的ではない結論の気がして身も蓋もない気もしましたが、キーワードとしての「超人」「永遠回帰」の解決策としてならありかもしれないなと思いました。