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【ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?】レポート

【ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?】
ダニエル・カーネマン (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4152093382/

【ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?】
ダニエル・カーネマン (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4152093390/

○この本を一言で表すと?

 行動経済学の大家が人間の対立する思考について実験結果と共に触れた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・自分の中にもある不合理さについて、その構造を分かりやすいテストとともに書かれていて、今まで考えたことがなかったようなことが分かりやすく書かれていました。

・行動経済学の本や自己啓発書などに出てくる人間の不合理さの元ネタがこの本の著者やその関係者が実験したことだったことが分かりました。

・常識として考えられていること、学問的に主流になっていることが本当に正しいのかを疑い、本当はどうなのかを解き明かしているところはまさに健全な懐疑心を持った科学者といった態度で、その態度のまま研究を続けている著者はすごいなと思いました。

・各章末の「井戸端会議で使う時はこんな会話」が書かれていることで、各章の話が分かりやすく、また思い出しやすくなっているなと思いました。
章末にこれをもってくることで、この本で書かれている「ピーク・エンドの法則」で分かりやすい印象を持たせる戦略かなとも思いました。

第1部 二つのシステム

・システム1とシステム2の違いとそれぞれの働きやそれぞれにかかるバイアスや共同作業による錯覚について触れられていました。

・プライミング効果、認知容易性、「基準」の設定、「自分が見たものがすべて」で結論に飛びつく傾向、質問の置き換えによる作業緩和など、どれも「あるある」と思いながらもどうしようもない思考の性質が挙げられていました。
自分も含めて、人間の思考の傾向にこういったものがあると知っているだけでも少しは今後の思考の錯誤の予防になりそうな気がします。

第2部 ヒューリスティクスとバイアス

・人間のありがちな思考パターンであるヒューリスティクスとありがちな思考の偏りであるバイアスについて触れられていました。

・少数の法則や平均への回帰の話は他の話に比べると思い込みと実態の差異を数字で明らかにしていて、単なる心理傾向よりも複雑な話だなと思いました。

・アンカリング・利用可能性・代表性・直観的予測の話など、文章で読めば「何でこんな不合理な傾向を持つんだろう?」と思うものの、実際には自分自身も避けられていないことが書かれていて、いろいろと自覚が促されたような気がします。そして知っていてもひっかかってしまうのだろうなと思いました。

第3部 自信過剰

・専門家の予測が外れる、ということ自体はよく他の本などでも載っていましたが、専門家の経験が活きる業界とほとんど活きない業界があることが明確に述べられていて、なるほどと思いました。

・内部情報に頼り、外部情報を無視してしまう傾向は、自分の知識にあっても実際には適用されないということに繋がり、一番後で悔いそうな傾向だなと思いました。

第4部 選択

・人が利益を得るより損失を避ける傾向があるということは他の本で知ってはいましたが、利益が倍でようやく釣り合うという感覚や、利益を得るギャンブルと損失を被るギャンブルでの意思決定の違いの話は意外で、この本で書かれているテストで自分自身が全て多数派の方になるわけではないものの、ある程度一致していて、自分自身を再発見したように思いました。

・保有効果やフレーミング効果はよく知られた話ですが、具体的な実験結果を知ることでよりその強さを思い知りました。

第5部 二つの自己

・「経験する自己」と「記憶する自己」の違いは、何となく誰でも感じているようなことだと思いますが、初めてはっきりとこの違いを自覚できたように思いました。

・「ピーク・エンドの法則」と「持続時間の無視」は自分自身の経験としても、小説や伝記を読んだ時の読後感としても、大いに当てはまる話で、改めて考えると確かに不合理だなと思えました。
しかし、その不合理さを理解できても自分自身の感覚は変わらないのだろうなと思いました。

○つっこみどころ

・各章の内容はそれぞれ面白く読めましたが、各章ごとに同じような内容についてびっしりと書かれていて読むのに疲れました。
章立てと書き方を工夫すれば3分の1くらいの章でもっと読みやすく構成できそうだと思いました。