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【フシギなくらい見えてくる!本当にわかる社会学】レポート

【フシギなくらい見えてくる!本当にわかる社会学】
現代位相研究所編 (著), 堀内進之介 (著), 大河原麻衣 (著), 山本祥弘 (著), 塚越健司 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4534047053/

○この本を一言で表すと?

 社会学の各論をコンパクトに紹介した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・社会学という幅広い学問の各分野、派閥の考え方について、見開き2ページごとに1つのキーワードの概要を平易な言葉で説明していてわかりやすかったです。
対立する考え方でもそれぞれどういった経緯でそういう考え方が生まれたかが最初に書かれていて、それぞれなるほどと思えました。

・100のキーワードそれぞれに原作1冊が対応していて、社会学を専門にしている人が書いたとはいえ、それらの本を読んで理解してきたというのはすごいなと思いました。
興味のあるテーマについては原作の本を読んで自分で学んでみるのも面白そうだと思いました。

第1章 個人と集団

・個人と集団の関係はかなりわかりやすいですが、それだけにいろいろな考え方があり、それぞれ筋が通っていてなるほどと思いました。
ゲオルグ・ジンメルの三者関係についての考察は、「三人いれば派閥ができる」のような一般的に言われているような内容と符合していて、その詳細として三人以上いれば「私たち」「あの人たち」という表現が生まれてくることが説明されていて分かりやすかったです。

・ロバート・マートンの所属集団と準拠集団の話は、ある集団に属する人に対しては嫉妬せず、別のある集団に属する人に対しては嫉妬することの心理的な要素をうまく説明できているなと思いました。

第2章 家族と教育

・家と家族の使い分けや教育など、論じやすいことですが、どこか極論になりやすいところがあるなと各パートを読んで思いました。
フィリップ・アリエスの「<子供>の誕生」の話で、かつては「小さな大人」は存在しても保護される対象としての「子供」は存在しなかった、というのは多産多死型の社会から少産少死型の社会への変遷の話と繋がるなと思いました。

・イヴァン・イリイチの「学校化」の考えは思い当たることが多く、確かにそうだなと思いました。
学ぶことから進学することに意識がシフトして、教育を与えられることが当然と考え、学ぶこと自体より進級することに意味があるように思い違いをして自律性を失う、というのは、日本でも大いに当てはまりそうだなと思いました。

第3章 労働と消費

・労働と消費という社会の中でも主要な位置を占めそうな内容では、経済学が強いのか、ほぼ経済学のパートになっていました。
ジャン・ボードリヤールの「消費社会論」はいろいろな本ででてきますが、商品の使用価値から記号としての価値にシフトしているというのは確かにそうだと思いました。
自分自身はどちらかと言えば使用価値に価値を見いだす方ですが、それが周囲と乖離しているなと思うことが多々あり、消費社会であることを実感しています。

第4章 都市と犯罪

・都市についての社会学について述べられていましたが、日本が都市と都市以外の境界があいまいなのか、実感とは少しずれている内容に思えました。
日本以外だと都市と都市以外が地理的にも心理的にも離れているからこういった考え方になるのかなと思いました。

・アーヴィング・ゴフマンの「儀礼的無関心(市民的無関心)」の話で、街で過ごすことは社会的相互行為の連続であることが説明されていて、「人酔い」になることもそれで説明がつくなと思いました。
無関心を装うことがマナーということも不特定多数と接するのであれば自然にそうなるのだなと思えました。

・アーヴィング・ゴフマンの「スティグマ」やハワード・ベッカーの「ラべリング理論」で、逸脱していると周囲から押し付けられることで、より逸脱していくというのは、確かにそういうこともありそうだなと思いました。

第5章 政治と権力

・エーリッヒ・フロムの「権威主義的パーソナリティ」の話で、伝統的な拘束から解放されて自由になった者の中で、その自由を生かす目標を見出せなかった者は自由を重荷と感じ、その自由から逃れるために自分を拘束する権威へ盲目的に服従する、とありましたが、これも結構当てはまる事例が多そうだなと思いました。

第6章 宗教と文化

・この章の序盤の文化についての話は極論過ぎて納得はしづらいですが、こういった考え方もあるのだなと参考になりました。
ロバート・ベラーの「市民宗教」の考え方はキリスト教の教会とは別に、体制や価値自体を神聖なものと見なすもので、テレビや漫画などで出てくる典型的なアメリカ人のイメージと結構一致するなと思いました。

・ヴァルター・ベンヤミンの「アウラの喪失」の話で、芸術を写真等で複製できるようになったことで、アウラ(優れた芸術作品への崇敬の感覚)が失われ、「礼拝的価値」から「展示的価値」へ転換されたという考え方は興味深いなと思いました。
それまでになかった技術が芸術という別分野の価値を変えるという事例は、今後もいろいろ出てきそうだと思いました。

第7章 歴史と近代

・近代の捉え方について様々な見方があって面白いなと思いました。
アンソニー・ギデンズの「モダニティの再帰性」の話で、結婚率や離婚率などのデータや議論によって政府の政策や人々の行動が変化するなどの、社会科学の知見自体が社会を変えるというという話があり、テーマが違いますが周囲がラベリングしたことで対象がよりそのラベルにふさわしくなっていくラべリング理論もあり、再帰性という性質は結構いろいろなことに当てはまりそうだなと思いました。

第8章 グローバリゼーションと国家

・グローバリゼーションに関する話で、ジョン・アーリの「観光のまなざし」で観光客のまなざしを意識することを通じて刊行される側が自らの文化・伝統を改めて意識するという再帰性の話が興味深かったです。

第9章 理論とモデル①

・レオン・スティンガーの「認知的不協和」の話は、自分の行動と周囲の現実に不協和が生じた場合に自分の行動を正当化するという話ですが、結構誤解されて使用されている用語であるように感じるので、この機会に正確に憶えておこうと思いました。

・グレゴリー・ベイトソンの「ダブルバインド」の話で、「自発的になれ」と命令されるという矛盾した命令等を受け続けるというのは結構ありそうな話だなと思いました。
このダブルバインドの積み重ねで心理的苦痛が重なり、統合失調症の発症リスクを高めるということも考えられるそうで、気を付けないといけないなと思いました。
ただ、グレゴリー・ベイトソン自身もダブルバインドがなくなるものとは考えておらず、ダブルバインドは人間にとっての現実がさまざまな側面をもち、さまざまな解釈が可能であることの条件でもあるそうです。

・ハロルド・ガーフィンケルの「エスノメソドロジー」の話で、日常の暗黙のルールを破る受け答えでその暗黙のルールを明るみに出す「違背実験」の取り組みは興味深いなと思いました。
研究者自身にとっても当たり前な状況でそのルールを見出すことが困難だということで、その状況を打開する方法としてうまい手法だと思いました。

第10章 理論とモデル②

・タルコット・パーソンズの「AGIL図式」の話で、社会システムをA(適応:経済)、G(目標充足:政治)、I(統合:社会的制御)、L(潜在的パターンの維持:文化・価値)に分類し、それぞれを制御・非制御の関係として描いたサイバネティック・コントロールの考え方は興味深いなと思いました。
経営学の外部環境分析で出てくるPEST分析と似ているなとも思いましたが、同じく社会そのものを分析するのであれば同じような所に考え方が収束するのかなと思いました。

・ハーバーマスはよく「ハーバーマス的○○」のように引用されている記述を見かけますが、その考え方として「コミュニケーション的行為」を重視している話があることが分かりました。
他者に権力や貨幣を介して影響を与える「戦略的行為」と対比して自分が表明する考えや意思を言語的なコミュニケーションを通じて相手に伝えて承認を求める「コミュニケーション的行為」を挙げ、後者が重要であると考えているそうです。

○つっこみどころ

・各章の最初にニーチェの引用が載せられていましたが、各章の内容に沿っている箇所を選んだと思われるものの、それほど一致しているわけでもなく、ない方がよかったのではと思いました。

・社会学の各分野でそれぞれ反目しあう学派もありそうで、読む前にはそれらの矛盾をどう着地させるのかなと期待していましたが、この本の各キーワードの文章を書いた人自身の考えが先にあり、そこに向けてまとめられていて、理論的な話からなぜそういう意見になるのかと腑に落ちない箇所もありました。