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【ヤバい経済学 [増補改訂版]】レポート

【ヤバい経済学 [増補改訂版]】
スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー (著), 望月衛 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492313788/

○この本を一言で表すと?

 通念を疑ってひっくり返す、経済学を実践適用している本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・疑問に思うポイントの設定自体が面白く、またその疑問を分析する手法の適用がうまく、本当に頭がいい人が書いた本だなと思いました。自分が知らない裏の世界のさらに裏側まで実態を明らかにしているところはかなり面白かったです。

・本編が6、7割くらいで終わっていて、残りがオマケいうことに「なんだそりゃ」と思ってしまいましたが、そのオマケが面白くてよかったです。本編に対する批判や反論に、丁寧かつすこし茶化しながら返しているのは、著者たちはなかなか器の大きな人たちだなと思いました。

・翻訳者の翻訳がうまく「悪ガキ教授」が書いている雰囲気を出していて面白く書けているなと思いました。

第1章 学校の先生と相撲の力士、どこがおんなじ?

・1987年の春のある日にアメリカで700万人の子供が消えたという話で、所得控除の申請にそれぞれの子の社会保障番号が必要になった日に700万人分インチキがあったことが判明したというのは面白いなと思いました。

・生徒の成績で学校の先生が評価され、その評価が年に一度のテストである時、先生が生徒の答案を書きかえるインセンティブが高まることと、それを確かめるためのロジック(後半になるほど難しくなる問題で後半に正解の連続があるかどうか)を適用して見事に確かめたのはすごいなと思いました。

・日本の相撲で7勝7敗の力士と8勝6敗の力士の勝負で前者の勝率が8割近いこと、その次の場所で再戦したときは逆側が勝利するケースが6割という、データから導き出される八百長の可能性の話は、データ分析の可能性、最近流行の「ビッグデータ」の有効性について思い起こされました。著者ほどうまく適用できないと結果を出せなさそうですが。

・ポール・フェルドマンのベイグルを企業に置いて支払いを自己申告にするシステムで商売を始め、その回収率が良いところと悪いところの差、9.11事件以降に回収率が良くなったことの話は人間らしさが統計としても出ているなと思いました。

第2章 ク・クラックス・クランと不動産屋さん、どこがおんなじ?

・有名な秘密組織「KKK」と不動産屋の共通点として情報の非対称性を利用しているところとしているのは、かなりざっくりとした共通点ですが面白いなと思いました。

・ステットソン・ケネディがKKKの内情をラジオにぶちまけて「スーパーマンの冒険」の悪役に抜擢し、KKKが秘密にしていることで得られる利益を吹っ飛ばしたというのは面白いなと思いました。

・KKKと同じように、定期生命保険の値段も比較サイトができることで値段を下げざるを得なくなるようになったという話はかなりうまい比較だなと思いました。

・不動産屋が顧客のためでなく自分の利益のために動いていることを客観的に比較してデータで表したり、出会い系サイトのマッチング率のデータで本音と建て前の様子を表しているのは、これまた人間らしさが生々しく暴かれているなと思いました。

第3章 ヤクの売人はどうしてママと住んでるの?

・スディール・ヴェンカテッシュのギャングへの突撃インタビュー度合いが凄過ぎるなと思いました。この「ヤバい経済学」の邦題をパクったものだと思っていた「ヤバい社会学」の著者らしいので、この本も読んでみようと思います。

・ギャングの収益とその配分の話で頂点の数十人以外は食うに困るほどの収入しか得られないのに1年で4人に1人が死ぬという危険を秘めているという、その落差が「ママと住んでいる」という結論が面白かったです。

第4章 犯罪者はみんなどこへ消えた?

・ニューヨーク市のジュリアーニ市長の政策と「割れ窓理論」は別の本でも好例として取り上げられるくらい有名ですが、その実践者のブラットン警察本部長がタイム誌のカバーを飾り、市長が飾れなかったことが原因かわからないものの27ヶ月で無理やり辞めさせられていたり、そもそもジュリアーニ市長の政策の前から犯罪率は減少傾向にあったというのは驚きでした。

・犯罪率が減少した原因が、犯罪に走る可能性が高い人が生まれなくなったこと、つまり中絶が認められ、実施されたことという分析がデータと共に示されているのは、因果関係が理解できるものの、それでも感情的に納得しづらいことだなと思いました。サンデル氏の「それをお金で買いますか?」という本で麻薬に走った女性に不妊治療をすればお金を払う女性の活動が、お金で買うことの悪例として載っていましたが、少なくともこの女性の動機と得られる結果の因果関係は正しかったのだなと知りました。

第5章 完璧な子育てとは?

・学校の成績と親の要因の因果関係の結論で、「親がどんな人か」が大いに関係があり、「親が何をしたか」はそれほど関係なかったというのはなかなか衝撃的な結論だなと思いました。「学校の成績」との因果関係なので、どのような人間に育つかと直接関係があるわけではないと思いますが、そこに価値観を置くいわゆる教育ママなどの行動がそれほど影響力がないというのは当人たちには悲劇的な話だなと思いました。

第6章 完璧な子育て、その2

・「名前」の統計で、どんな名前がどんな属性の人につけられるか、それがどのように移り変わっていくかというのは、日本ではまた内容が違ってきそうですが、アメリカ社会の動機や教育格差などが現れているなと思いました。

オマケ

・本の捕捉や後に分かった事実関係などが書かれていて、かなりお得な「オマケ」だなと思いました。本編よりもさらに赤裸々に書かれているところもよかったです。