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【それをお金で買いますか――市場主義の限界】レポート

【それをお金で買いますか――市場主義の限界】
マイケル・サンデル (著), 鬼澤 忍 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/415209284X/

○この本を一言で表すと?

 市場と道徳の対立と道徳の優位性について書かれた本

○この本を読んで興味深かった点

・どの論点に対しても「公正」の観点と「腐敗」の観点での検討で統一されていて、一貫性があり読みやすかったです。

第1章  行列に割り込む

・いろいろな形の「行列に並ぶ」行為(空港、高速道路、遊園地、無料公演、医者の予約、キャンプ場、ローマ教皇のミサ など)とその売買について書かれていて考えさせられました。
どれは許されて、どれは許されないという基準が非常に決め辛い分野だなと思いました。

第2章  インセンティブ

・いろいろな形のお金である行動に誘引する「インセンティブ」について書かれていて考えさせられました。
私自身、取引はできるだけ自由がいい方ですが、アメリカの不妊治療をさせてお金を払うようなかなり極端な事例を見ると、無条件に皇帝はできないなと思いました。

・教育でインセンティブを与えたり、不健康から健康になることにインセンティブを与えたりする事例は、確かに与えられたものの動機づけを歪めそうな気がします。

・保育所の引き取りの遅刻で罰金を取られるようになったら遅刻数が増えた事例はわかる気がします。

第3章  いかにして市場は道徳を締め出すか

・受け取るモノの中で現金の満足度が一番高いことと、プレゼントで現金が送られることは、理屈では現金のプレゼントが一番いいと分かっていても抵抗感を感じるいい事例だと思いました。

・金銭で解決してしまうことができれば際限なく負の方向に走ってしまう事例が出ていて分かりやすかったです。
金銭による解決が結果的に美徳を衰弱させるというのも納得できる気がしました。

第4章  生と死を扱う市場

・他人の生命保険受け取りの権利を買い取るビジネスについては、10年ほど前に参加した、いかがわしい投資セミナーでも言っていたのを思い出しました。
早期の自殺によって保険金が下りないようなことがないように、自殺による保険金発生が認められない期間は徹底的に人が貼りついて自殺を防ぐ仕組みもあると聞きました。
この手の保険(ライフセトルメント)がウォール街の投資銀行に買い取られパッケージして売られる仕組みは、成立するとさらに拡大しそうな気がします。
他人の死を望むインセンティブを与えるサービスは小説やマンガでみる金持ちの年寄りと結婚して遺産を狙う悪女と私の中ではイメージが被ります。

第5章  命名権

・命名権の売買についてはこれまでの章に比べるとまだマシな気がしますが、深刻でないだけに反対の議論がされにくいかもしれないなと思いました。
実況が強制的に宣伝文句を挿入させられる仕組みは観客からすると興を削ぎそうです。

○つっこみどころ

・全体的に、市場主義に対する反論が厚く、道徳を擁護する根拠が薄い気がします。
道徳については自明と言う感覚でしょうか?