【プレイバック】
レイモンド・チャンドラー (著), 清水 俊二 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4150704538/
○この本を一言で表すと?
ハードボイルド・テイストが少し崩れた探偵小説
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・村上春樹氏の翻訳ではない旧翻訳の本を入手できて読みましたが、比較するとかなりなめらかで雰囲気が出ていてやはりこちらの方がいいなと思いました。
・登場時の人物像と話が進んで行くについて変わっていく重要人物と、最初から変わらない本筋に関係のない人物の対比が面白いなと思いました。
・さびしい人間として出てくる混血で麻薬中毒のセフェリノ・チャングが物語の本筋にわずかに関わるだけながら、本筋に関係なく自殺したシーンが妙に印象的でした。当時の落ちぶれた人物、這い上がれない人物を象徴しているのかなと思いました。
・最後に、前作の「ロング・グッドバイ」で別れた女性とのやり取りが出てきますが、そのやり取りがチャンドラー最後の小説の最後の下りだというのが意味深だなと思いました。
チャンドラーとしては人気の主人公となったフィリップ・マーロウに過去をやり直させるような意図があったのかもしれないなと思いました。
○つっこみどころ
・「大いなる眠り」の後で読みましたが、別人物かと思えるほど女性にだらしなく、依頼人も抱くという主人公にブレを感じました。
・昔自己啓発書で読んで気になっていた「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」が少し異なる翻訳で「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」と出てきますが、出てくる文脈が、依頼人の女性と一夜を共にした後で女性から皮肉気に「なぜそんなにしっかりしているのにやさしくなれるの?」と聞かれた時の返答という想定外にナンパな下りで驚きました。
先にこの本を読んでいたら特に頭に残らない言葉だったかもしれません。