【聊斎志異】レポート

【聊斎志異〈上〉】
蒲 松齢 (著), 立間 祥介 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4003204018/

【聊斎志異〈下〉】
蒲 松齢 (著), 立間 祥介 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4003204026/

○この本を一言で表すと?

 中国版「日本昔話」の本

○この本を読んで考えたこと、印象に残った話

・本の名前を覚えるのに苦労しましたが、読み終える頃には間違わない程度に記憶に残るようになりました。

・全491篇中の92篇で全体の三分の一くらいの分量を選んで訳出したものらしいので、残りの399篇はかなり短いものばかりだったのかなと思いました。
どうせなら全部読んでみたい気がしますが、残りはあまり面白みがなかったりするかもしれないなと思いました。

・17~18世紀に中国で書かれた本ですが、日本昔話などにも出てきそうな話が結構あるなと思いました。
日本で江戸時代くらいの時代なので、こういった話が日本でも結構残っていた時代だと思いますが、原典は似たようなところから来ているのかなと思いました。
「八 道士と梨の木―種梨」などは道士が僧に代わっているだけの話が「日本霊異記」にも出ていたような気がします。
こちらは5~8世紀くらいの話を集めたものなので、それくらい昔から伝承として伝わってきたものなのか、どれくらい日本と中国で共通点があるのか興味深いなと思いました。

・仏教と道教が入り混じった考え方が前提の話が多いなと思いました。
日本だと仏教と神道が混じったような前提の話が多そうなので、こういった話も原典から現地向けにローカライズされていくのかなと思いました。
前世の因縁が絡む話が多かったですが、これも「日本霊異記」と似ているなと思いました。

・各話をグループ分けすると「前世の因縁で苦労または得する話」「豪胆な者が成果を得る話」「誠実な者が幸福になる話」「賤しい者が痛い目を見る話」「唐突に災禍に遭う話」などになるでしょうか。

・キョンシーの元ネタがこの本に出てくる幽鬼かなと思いました。
生きている者とあまり変わらない幽鬼が結構登場しますが、幽鬼の由来は仏教的なものではなさそうですし、日本昔話でも登場しないので道教が絡む存在なのかなと思いました。

・「侠女」「悍婦」「悍婦(二)」など、強い女性が結構登場するなと思いました。特に悍婦の二作ではなかなか迫力のある女性が登場しました。
中国を舞台にした歴史小説でも強い女性が登場したりしますが、物理的な戦闘力の強い女性が登場する話は西洋ではあまり出てこないような気がします。

・語り手や主人公のほとんどが科挙試験の受験者でしたが、著者の蒲松齢が受験者でそれなりに文才もあったのに試験に落ち続けたこと、登場人物の中にも才あって合格せず報われない者が結構いることなどから、6世紀末から続いた科挙試験も制度疲労を起こして実態に合わなくなっているのかもしれないなと思いました。
日本では科挙試験などにより民間に実務能力を持つものがいなかったことから宋の時代の政治を真似た建武の新政が持続できなかったり、民間から広く才能あるものを採用する制度として、易姓革命でトップが入れ替わっても政治を継続できるように中国の優位性に繋がっていそうなものですが、どの時代でも有効に働く手法とまではいかなかったのかな、と思いました。

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