【大いなる眠り】レポート

【大いなる眠り】
レイモンド チャンドラー (著), 村上 春樹 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4150704643/

○この本を一言で表すと?

 戦前のアメリカを舞台にしたハードボイルド小説

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・自己啓発書でチャンドラーの小説から引用されていた「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」という言葉がずっと頭に残っていて、いつかチャンドラーの小説を読んでみたいなと思っていました。
この本はチャンドラーの初の長編で、引用の言葉が載っている本ではなかったですが、ところどころのフレーズが同じようなテイストで面白かったです。

・戦前アメリカの法制度とその裏のやりとりの雰囲気が伝わってくるようで面白かったです。
公権力と裏の権力の比率はある程度大げさに書かれているかもしれませんが、当時読んだ人が納得できる程度にはあっているのかなと思いました。

・特別体術に優れているとか銃の名手とかいうわけではなく、度胸と機転でその場その場をしのいでいくのがハードボイルド・テイストなのかなと思いました。
探偵としての倫理を守る、どこか一本芯の通ったようなスタイルが渋いなと感じました。

・登場人物の中では、ちびの情報屋のハリー・ジョーンズが最も男気のある人物であるように思いました。

・様々な伏線が貼られていてどう回収するのかと気にしながら読んでいましたが、タイトル通り「大いなる眠り(BIG SLEEP)」が根底にある話だったという結末は良かったなと思いました。
最初から重要そうな人物が重要でないという的を外された感もある意味爽快でした。

○つっこみどころ

・今まで避けてきた村上春樹氏の翻訳版しか売っていなかったので、初めて村上春樹氏の文章に触れることになるなと思って読み始めましたが、翻訳ツールでも使ったかのような直訳で、後書きでは「原文を活かすためにあえてそうした」と書いていてひどい話だなと思いました。
ネットで検索すると「村上春樹氏が新たに翻訳したおかげで時代に合ったチャンドラーが読めた」みたいな感想が複数出てきますが、到底同意できないなと思いました。
できれば前の翻訳者のバージョンで読みたかったです。

・読み終えた時、登場人物の人間関係やできごとを振り返っていたら、スターンウッド家のオーエン・テイラーが死亡した事件の結末には触れられないまま終わってしまって、パラパラと読み返しても見当たらず、翻訳者の後書きで「チャンドラーの小説は伏線を回収しないことがある」とあり、その具体例としてオーエン・テイラーの話が出ていたので自分の読み飛ばしではないことがわかってほっとしました。
なんとなく、もやっとしましたが、そういうものだと自分を納得させました。

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