【タンパク質の一生―生命活動の舞台裏】レポート

【タンパク質の一生―生命活動の舞台裏】
永田 和宏 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/400431139X/

○この本を一言で表すと?

 タンパク質のライフサイクルの各プロセスについて説明した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・タンパク質に焦点をあてて、その概要と誕生から死に至るまでのプロセスなどをわかりやすく解説した本だなと思いました。

・図が少なめだと思いましたが、それぞれの図がかなりわかりやすく、理解の進む図だと思いました。

第一章 タンパク質の住む世界

・様々なタンパク質をつくりだす細胞について、その各機能が説明されていました。

第二章 誕生

・細胞の中で、DNAの情報からどのようにタンパク質がつくられるかが説明されていました。
リボソームでのタンパク質生成の説明などは図と文章でかなり理解しやすくてよかったです。

・実験技術が向上して試験管内で情報の転写や翻訳を調べることができるようになったことが書かれてあり、著者の言うように技術の進歩が更なる技術の進歩を進めるのだなと思いました。

第三章 成長

・つくられたタンパク質がフォールディングによって折り畳まれ、タンパク質としての形質を得るプロセスについて説明されていました。
著者の専門である分子シャペロンについてだからか、詳しめに説明されていたように思いました。

・分子シャペロンの構造と、どのように折りたたむかの仕組みは合理的で興味深いなと思いました。

・ストレスに耐えるためのタンパク質があり、30分間血管を止めたマウスと5分間止めた後で30分間血管を止めたマウスでは前者のみが死亡し、後者ではストレス耐性のタンパク質が生成されたために生き残ったという話は、生々しい実験ではありますが、生存のための機能のすごさが伝わってきたような気がしました。

第四章 輸送

・生成されたタンパク質がどのように輸送されていくかの仕組みについて説明されていました。
適切にかなりのスピードで輸送するための仕組みがすごいなと思いました。

・インスリンとコラーゲンを採りあげてそれぞれについて詳しく説明されていましたが、生成するトリガーを受けて生成し、適切な場所に送り込むためのプロセスが書かれていました。

第五章 輪廻転生

・タンパク質の材料を外部から摂取してタンパク質を作り上げるだけでなく、既にあるタンパク質をリサイクル仕組みがあり、後者の役割がかなり大きいことが書かれていました。

・分解されること自体が機能になっている時間遺伝子の話は興味深いなと思いました。

・タンパク質分解の仕組みにはユビキチン・プロテアソーム系分解とオートファジー系分解の2種類があり、前者では選択的に分解し、後者ではまとめて分解する、というように役割が分かれているそうです。

第六章 タンパク質の品質管理

・タンパク質の品質管理体制についてまとめられていました。
タンパク質の生成をストップする、分子シャペロンで修正する、廃棄対象として分解する、細胞自体を死に至らせる、という4段階で管理しており、これらはそれぞれ複数段階のシグナル伝達を受けて実行される仕組みで、その段階の浅さ・深さから時間差で機能するというのはよくできた仕組みだなと思いました。
こういった機能の一部が狂うだけで、血友病、BSE等の命にかかわる病気になるというのは複数段階の一部が狂っただけでも病気になるという意味で繊細であり、基本的にはそうはならないように作られているという意味では強固な仕組みだなとも思いました。

○つっこみどころ

・一般的な新書である岩波新書の本なので仕方ないかもしれませんが、図が少なめで一部しか説明で図が使われていなかったのが残念でした。

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