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【〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則】レポート

【〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則】
ケヴィン・ケリー (著), 服部 桂 (著, 翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4140817046/

○この本を一言で表すと?

 これまでに培われてきた技術がどのようになっていくかの「流れ」について述べた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・「WIRED」誌創刊編集長等の経験から様々な技術を横断的に理解している著者が、これまでの技術の経緯と現在に到達している技術、今後到達するであろう技術について平易な語り口調で書かれていて、著者の狙い通りに技術がどうなっていくかの「流れ」がわかりやすく見えるようでした。

・著者の友人関係などから往年の技術者等に聞いた話や体験した話などが散りばめられていて、説得力があるように思えました。

・「こうなる」という未来予測ではなく、こうなっていくであろうという「流れ」について書いたのはよかったなと思いました。
原題の「THE INEVITABLE(不可避)」というのも、「避けられない未来」よりは「避けられない流れ」の方が説得力を感じるなと思いました。

・全ての章ではないですが、章末で「将来的にはこういう生活になる」という未来像が描かれていて、各流れの行く先がどのようになっていくか分かりやすかったです。

1 BECOMING

・技術は全て「BICOMING(なっていく)」ものであり、どの時点の技術も常にその過程だということが述べられていました。
過去のどの時点をとってもその時点では気付けず、後になると当たり前なことの例として、インターネットの初期の時代などが挙げられていました。
当時のメディアや大企業の反応は今から考えるとおかしく思えますが、現在の自分たちの反応も、後の時代になればおかしく感じそうだと思いました。

2 COGNIFYING

・物事を「COGNIFYING(認知する)」という視点で、現在の技術とその未来について述べられていました。
様々な分野を機械が認知することで、認知した情報を処理して様々な反応を返していくことが出来るそうです。

・AI技術がこの点を昔から追及してきてブームとなり、挫折してきましたが、最近の成功の原因として「安価な並列計算」「ビッグデータ」「アルゴリズムの改良」の三要素が挙げられるそうです。
処理速度向上が容易にできるようになり、認知するための情報が十分にあり、ディープラーニングのような仕組みで学習効果を蓄積できるという要素が揃って初めてAI技術が前に進み始めたというのは、理論的な要素を満たしてもその理論を実現できる要素が揃わなければ進まない他の物事(起業のアイデア、発明など)とも重なるなと思いました。
この機械が認知できることにより、人間の仕事も大きく変わるようです。

・この章の最後で仕事の種類を「人間にもできるがロボットの方が上手にできる仕事」「人間にはできないがロボットができる仕事」「人間が想像もしなかった仕事」「まずは人間にしかできない仕事」の4種があり、人間が実際に携わる仕事が今後減っていくと考えられると、他の人工知能の本でも書かれていたことが「不可避」だと述べられていました。

3 FLOWING

・物質がサービス化され、サービスが無料でコピーされ、「FLOWING(流れていく)」ということについて述べられていました。
著者と同じWIREDのクイス・アンダーソンの著作「FREE」の内容と似ているなと思いましたが、「FREE」が出版されてから7年近く経っているからか、更に状況が進んでいる印象を受けました。

・無料より良いとして挙げられている「即時性」「パーソナライズ」「解釈」「信頼性」「アクセス可能性」「実体化」「支援者」「発見可能性」はまさに今フィンテック等のアメリカ発のサービスで思い当たるところが多いなと思いました(著者がそれらのアメリカ発サービスから性質を抽出しているので当然かもしれませんが)。

・「流れていく」過程の四段階「固定的/希少」「無料/どこにでもある」「流動的/共有される」「オープン/なっていく」は様々な製品・サービスの流れの共通点をうまく抽出できているように思いました。

4 SCREENING

・本を読むだけでなく、様々な物事・ニュース・情報を「SCREENING(画面で読む)」時代になっていくというのは、今より前の時代の未来予想図、映画・漫画・ゲーム・アニメ等でもでてきそうな分かりやすい未来像だなと思いました。
膨大な情報が蓄積され、それらにどこからでもアクセスできるようになり、その情報を画面に表示する、という流れがそれぞれ満たされるようになった今でもある程度実現できていることを考えると感慨深いものがあるなと感じました。

・AR(拡張現実)で情報を付加したり、リンクやタグをつけたりすることで関連づけたり、様々なことが当たり前になって共有されると更に情報が蓄積され、より充実した情報がスクリーニングされるようになる、という流れは進みだしたら止まらないだろうなと思いました。

5 ACCESSING

・所有することから「ACCESSING(アクセスする)」に移行していることについて述べられていました。
直接本題とは関係が薄いですが、非物質化の話で、小型化・性能向上を重ねることでより少ない物質でより優れたものに改善され続けてきた話は、なるほどと思いました。

・非物質化、リアルタイム化、分散化、プラットフォームの有効化、クラウド化などの各流れが所有権の購入からアクセス権の定額利用に移っていくのは、かなり強い「流れ」だと感じました。
特に書籍の電子化などで本もサービス化していることは、未だにこの分野では本の所有に固執している自分だからこそ強く感じています。

6 SHARING

・「SHARING(共有する)」ことについて著者の考えが述べられていました。
この本と同じくNHK出版から出版された「SHARE」が共有することが所有することよりもすばらしい概念であり、「共有すべき」という論調だったのに対して、この本の考えはもう少し地に足の着いた話になっていたと感じました。

・協力し合うこと、共有することに向けたインセンティブが用意された仕組みを用意することでGoogleやTwitterはビジネスとして大きく成長できたことなど、その協力がGoogleやTwitterのためのものではなく、自分のためのものでありながら結果的になっていて、なるほどと思いました。

・シェアの仕組みについて何となくボトムアップ的なものだという印象がありましたが、ボトムアップのシェアはすぐに崩壊し、ボトムアップとトップダウンの混合型で大多数のボトムアップと一部のトップダウンで構成された「ハイブマインド(集合精神)」が成功しやすいという説明は納得できるなと思いました。

・クリエーターのアイデアを集団で支持するクラウドファンディングもシェアとして含めているのは、かなりシェアの定義が広いなと思いましたが、そういう考え方もあるなと思いました。

7 FILTERING

・情報量が過多だからこそその取捨選択をサポートする「FILTERRING(フィルタリング)」が重要になっていくことについて述べられていました。
「選択の科学」などで選択肢が多過ぎるとストレスになることが書かれていましたが、そもそも情報が多過ぎると何に注意を向けてよいかわからず、よりひどい状況になりそうなことは容易に想像できるなと思いました。

・フィルタリングのリスクについて、そのフィルターは良いものも切り捨てる可能性があること、フィルターにより検討可能性や認知できる領域が狭まり続ける可能性があることが述べられていましたが、その通りだなと思いました。

・マスカスタマイズで個人向けに成分調整した薬を作成することなども挙げられていましたが、言われてみれば確かに取捨選択された、フィルタリングされた薬を作成するわけでなるほどと思いました。

・アテンション(注意)が今後より重要となり、フィルタリングの精度が向上すれば各個人の注意が向けられる可能性が上がるということ、それがビジネスに繋がる話も興味深かったです。

・フィルターが重ねられることで自身に個別化された情報により接することになり、よりパーソナライズされていくという結論もなるほどと思いました。

8 REMIXING

・「REMIXING(再構成する)」ことについて述べられていました。独自の「流れ」というより他の章の内容の応用編のような内容でした。
様々なサービスが流れて共有され、それに自由にアクセスして確認でき、自由に編集してそれをまた流す、ということが容易になっていく、というのは想像しやすいなと思いました。

9 INTERACTING

・利用者のアクションに対して機械が反応を返し、その反応に対して利用者がアクションを起こす、という「INTERACTING(相互作用する)」について述べられていました。
機械が認知できる人間の動きが拡大されていくことで機械の反応が多様化でき、また画像技術、3D技術の発展でより反応の情報量が増加していく流れが、「より多くの感覚」「親密さを増す」「没入感を増す」という要因で説明されていました。

・1980年代からVR技術の開発が続いていて、著者が1989年に体験したジャロン・ラニアーの装置で体験したことがかなり先進的な内容であり、それから25年ほどはVR技術がそれほど進歩していなかったというのも、必要な要素が揃っておらず、時代が追い付いてようやく揃ったのかなと思いました。

10 TRACKING

・情報や数値の「TRACKING(追跡する)」について述べられていました。
世の中の情報量は膨大なもので、それらの内極少量の情報を捉えることで生活している状態から、これまで補足し、蓄積することが困難だった情報を追跡できるようになっていくというのは、これまでの章の内容と技術の発展で可能になっていきそうだなと感じました。

・今でもある程度補足できるようになってきたライフログやIoTで認識・蓄積されるようになるモノの情報、人間の受容能力では捉えられないほどの外界の情報まで考えると果てのない話だと思いました。

11 QUESTIONING

・人々の関心が満たされるとさらなる疑問が生まれ、またそれに対する回答が得られるという流れで「QUESTIONING(質問していく)」について述べていました。
この章のタイトルを見て、機械・ITの話で「質問」という話になるのが不思議な気がしましたが、機械が質問するという話ではなく、質問への回答とよい質問をするためのサポートをするという話で、それなりに納得できました。

・また、人々の質問の答えがかなりの規模で用意された世界になっていて、今後それが進んでいくというのも、まだインターネットに触れていない時代から考えると今もそうなってきているなと感慨深いものがありました。
そういった仕組みが犯罪等のマイナスに方向に利用される可能性に触れながらも、そういったことも包含して、技術の流れが進んでいくという大きな流れで著者が把握しているのが印象的でした。

12 BEGINNING

・技術の終わりなどはなく、いつでも「BEGINNING(始まっていく)」であるという結論が書かれていました。

○つっこみどころ

・12の法則、最初と最後は前書きと後書きみたいな内容なので10の法則で、後半になるにつれ内容が重なるところが増えていて、他の章を組み合わせただけの章もあり、もう少し数を減らしてコンパクトにまとめられたのではと思いました。

・平易な語り口調で書かれていることの欠点かもしれませんが、どこまでが既にある技術か、既に端緒についている技術か、著者の想像か等がよく分からない箇所がいくつもありました。

・全体的に著者は不可避なものが良いものとして捉えているようですが、時間をかけて知ることで身になる、苦労して学ぶことで身になる、といったこともあるような気がして、全肯定はできないなと思いました。
例えば、速読等で凡そ本の内容を理解できたとしても、一字一句読み込むことで得られるものとはやはり違うように思います。
そういった面も含めて、変化が不可避なのかもしれませんが。