【新種の発見 見つけ、名づけ、系統づける動物分類学】レポート

【新種の発見 見つけ、名づけ、系統づける動物分類学】
岡西 政典 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412102589X/

○この本を一言で表すと?

 分類学がどのようなものか、実践例や苦労話、その未来を含めて解説した本

○よかったところ、気になったところ

・分類学とは何か、その研究内容はどのようなものか、どのような苦労があるか等が事例とともに解説されていました。

第一章 学名はころころ変わる?―生物の名前を安定させる学問、分類学

・分類学とは、生物を形態等で区別し、分類し、命名する学問。

・分類の階級、門・綱・目・科・属・種のそれぞれに当てはめ、命名する。

・地域ごとの生物相の解明も分類学の役目。完全に解明されることはめったになく、また生物相が解明されずに環境が破壊されることもある。

第二章 地球の果まで生物を追い求める―陸か、海か

・陸と海では圧倒的に海の方が種の数が多い。約35の動物門のうち、純陸産の2門以外の門の動物を海で観察できる。

・左右相称性(人間は相称軸が一本だが複数ある動物もいるし、相称性がない動物もいる)、前口動物か後口動物か(口が先にできるか肛門が先にできるか)などで大きく分類される。

・採集方法は対象によって多様にある。
トラップによる採集や見つけ採り、微生物の採集、網を使った採集など。
近年はスキューバダイビングによる採集が活発。

・マナーは重要。
採集の許可を得ることは当然の話で、近隣地域の人への配慮も必要。

第三章 分類学の花形、新種の発見

・身近な海底洞窟が近年の注目スポット。その環境に特化した新種がよく発見される。

・明治時代は分類学が花形だった時代だった。東京大学三崎臨海実験所は様々な新種の発見を続けて世界的に有名だった。

第四章 命名―学問の世界への位置付け

・新種の発見自体はそれほど難しいことではない。
分類学上の命名はまだまだ全生物の一部しかできていないため。

・既に名付けられている種でないこと、各階級のどこに分類するかなど、リンネの命名以降(1758年以降)の文献全てが調査対象になる。(実際は一部の調査資料等で省略できるが、それでもかなり膨大な調査が必要。)

・身近な動物でも実は命名されていないことがある。
2017年にサザエが「Turbo sazae」と命名されたことがあった。過去にサザエと命名されていたのは実はナンカイサザエという別の種で、だれもがサザエを命名済みだと考えていた。
この「サザエが命名されていない」ということの証拠の裏付けがこれまた膨大な作業になった。

第五章 これからの分類学

・分類学は情報化の恩恵を多く受ける分野。
文献の検索、標本のデータ化など、新種発見から命名までの長いプロセスの大部分を情報化でフォローできる可能性がある。

・分類学は、他の生物学よりも対象が幅広い(全生物が対象)。
形態学、分子生物学、バイオミメティクスなど、様々な分野と連携し、中心になれる学問でもある。

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