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【タイビジネスと日本企業】レポート

【タイビジネスと日本企業】
藤岡資正 チャイポン・ポンパニッチ 関智宏 (編集)
https://www.amazon.co.jp/dp/4496049058/

○この本を一言で表すと?

 日本人とタイ人が協力した調査研究の結果について書かれた本

○この本を読んで面白かった点

・タイの国家経済社会開発庁(NESDB)の長官が推薦の言葉を載せていたりしてタイ側の期待を負った本なのだなと思いました。

第一章 タイ経済の概要

・生産拠点としては「産業クラスターの形成」「FDIによる技術移転」「労働供給の増大」が発展に寄与していること、消費地としては「国の平均値ではなく都市圏を分析単位とすること」「フローのみではなくストック(保有資産形成)にも着目すること」「シャドウエコノミー(正式に記録されない経済活動)を考慮すること」の三つの視点を持ってみる必要があること、AEC(ASEAN経済共同体)とGMS(大メコン圏)開発の戦略的統括拠点としての位置付けもあることなど、タイの経済的な立意位置の概要が整理されていてよかったです。

・将来の懸念材料として「人口構造の変化」「労働賃金上昇によるインフレ圧力」「政情不安」「原材料価格の上昇とバーツ高による輸出競争力の低下」「中間管理職の確保」が挙げられていますが、今後さらに重くなっていく要素を抱えていてなかなか大変そうだと思いました。

第二章 タイの基幹産業

・マイケル・ポーター教授の「ダイヤモンド・モデル」の4条件「要素」「関連・支援産業」「需要」「戦略・競合」にそって、タイの自動車産業と電子機器・電化製品産業について分析されていて、自動車産業では政策的な強みや需要における強みがあるものの要素において労働力の確保の点で労働者、中間管理職、研究者のどれにおいても不安要因を抱えていること、電子機器・電化製品産業では、要素は労働者の確保が難しくなっていること、関連・支援産業ではサプライチェーンの上流工程が確保できていないこと、需要では市場の価格感応度が高いこと、戦略・競合では労働集約的であることと中国企業の参入が脅威であること、と4条件全てにおいて弱みを抱えていることが図で理解できて分かりやすかったです。

第三章 タイの市場

・調査の方法について、タイにおいては固定資産を検討するだけで潜在顧客の規模が7倍になった例があることなど、フローとストックの両面から検討することが必要であると書かれていました。

第四章 日系企業の経営課題

・在タイ日系企業とタイローカル企業へのアンケート調査からタイでは即戦力を求める傾向があることが導き出されたと書かれていました。

第五章 異文化マネジメント

・異文化マネジメントとして、日本人とタイ人の慣習の違い、受け止め方の違いに気を付け、課題の見える化がより必要になることなどが書かれていました。

第六章 日系企業の現地リーダー人材の採用と育成

・リーダー人材の採用と育成に関するアンケート結果がまとめられていました。
日系企業は社内昇進で、タイローカル企業は外部からの採用で賄う傾向が示されていました。

第七章 日系サービス産業の進出

・日本的サービスをタイに移転する場合には文化の違いを検討して根本的なところから導入する必要を航空サービスを例として書かれていました。

第八章 日系中小企業の進出

・中小企業のタイ進出において、新規顧客の開拓と規模拡大の面が見込めること、そのメリットはデメリットの裏返しでもあることが書かれていました。

○つっこみどころ

・正直なところ、一般論過ぎてタイに限定した話ではない話が多くて得るところが少ない本でした。
推薦文の「タイビジネスに対する理解を深めるための必読書」などは過大評価に過ぎると思いました。
第一章と第二章はよかったですが、第三章~第八章は正直必要なかったと思えるレベルで、ボリュームの水増しとしか思えませんでした。