• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【消費するアジア – 新興国市場の可能性と不安】レポート

【消費するアジア – 新興国市場の可能性と不安】
大泉 啓一郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121021118/

○この本を一言で表すと?

 アジアの発展可能性だけでなく不安要因にも目を向けて書かれた「メガリージョン」単位で考えた本

○この本を読んで面白かった点

・アジアを国家単位だけでなく都市単位、メガリージョン単位でも検討し、その発展と今後の不安要因までをいろいろな要素を関連づけて検討してあり、何が今後の課題化までがしっかり書かれてあってよかったです。

第1章 消費市場の拡大と高まる期待

・アジアに関するニーズの推移(生産拠点から消費市場へ)、消費者を富裕層、中間層、貧困層と切り分けてみた各市場へのアプローチ、国全体ではなく都市と農村に切り分けて考えるアプローチなど、この本全体の概要に触れていました。

第2章 メガ都市の台頭

・アジアの都市化とその原因である都市経済のロックイン効果、都市への人口流入による環境悪化等の過剰都市問題とメガ都市への脱却、メガ都市の周辺を志向する企業の登場、メガ都市の消費市場化という流れがタイのバンコクとその周辺を例に書かれていました。

・ASEAN各国では中国脅威論が考えられていたところ、実際には輸送技術・通信技術の向上により、生産がフラグメンテーション化してサプライチェーンが複数国を跨ぐようになり、むしろ中国がASEANの発展に貢献するようになったという話はなかなか面白いなと思いました。

第3章 浮上する新しい経済単位

・国家全体を経済単位として考えるのは規模が大きすぎ、特に中国は省別にしても規模が大きいため、さらに細かい単位に分割し、かつ関連する地域をまとめて「メガリージョン」という経済単位で考えるというのは理にかなっているなと思いました。

・中国の北京や天津を含む渤海湾経済圏、上海を中心とした長江デルタ経済圏、広東省をベースにした珠江デルタ経済圏の3地域が他の地域と比べて1人当たりGDPが大きく異なることは分かりやすい事例だなと思いました。

・上海が封鎖された状態から地位を回復して上海の周辺地域が発展して現在の長江デルタ経済圏に至るという例が挙げられていましたが、地域の発展とさらにグローバルシティとしての発展というステージに至るという流れは国際間競争という大きな舞台に至る道だなと思いました。

第4章 成長力は農村まで届くか

・世界がフラット化するという説は有名ですが、一方でスパイキー化する(ある年に集中し、格差が広がる)という説もあるそうで、個人的にはこちらの方が納得しやすいなと思いました。

・多産少死から少産少死に向かう中で人口ボーナスとその後の人口オーナスがあるという話は有名ですが、さらに人口移動で労働人口(15~64歳の者)が都市に向かうために都市と農村の格差を広げるという話は、そのまま進めば格差が縮小するどころか拡大する一方で、何か対策を採らないと国家の成長力は農村までは届かないということになりかねないなと思いました。

・都市と農村の分断への対策として、インフラの整備で都市へのアクセスを容易にすること、マイクロファイナンスが考えられるそうですが、前者はその適切性が問題で、例えば他の本でも書かれていた大メコン圏の東西回廊はほとんど使われておらず自動車が1時間に1台すれ違うかどうかという利用状況でメンテナンスもされていない状態だったり、後者は本来の目的である事業者への支援の資金が電化製品の購入に当てられて負債を抱えるだけに終わったりと、あまり芳しくないようです。

第5章 アジア新興国の政治不安

・「中所得国のワナ」と言われるそれまでの成長路線に固執し、産業構造の転換に失敗して成長率を低下させるという不安がアジアに共通して存在するようです。タイとマレーシアはその存在を前から意識して対策を採ろうとしているようですが、マレーシアのナジブ首相がある程度成功したことに対してタイではタックシン首相が失脚して先行きが不安な状態だそうです。

・どの国にも共通して地方・農村地域の住民が政治的意識を高め、「物言わぬマジョリティ」から「物言うマジョリティ」に変化しつつあり、特にタイではその影響が大きく、政情不安に繋がっているそうです。日本企業のタイの治安・社会情勢への意識が2005年のほとんど不安を感じていない状態から2010年のほとんどが不安を感じている状態にまで変化しているグラフが印象的でした。

・政治活動もそれらを通して不満を解消する政治の消費として捉えれば、政治不安の原因でもあり結果でもあるという悪循環にもなりそうだと思いました。

・福祉国家として社会保障制度を築くのか、国家競争力を築くのかが対立する関係にあり、経済成長と社会安定も対立する関係にあり、なかなか両立させることが困難な状況だと思えます。日本がアジア諸国との持続的関係と発展を見込むなら、この問題の解決への協力も視野に入れた方がよさそうです。

第6章 アジアの持続的市場拡大の条件

・消費市場拡大の対価として資源獲得競争が激化しているということ、また環境負荷の増大で成長の限界に近づく傾向にあることは、今後ますます激化する方向にありそうだと思いました。

・日本は少子高齢化や都市化等の課題先進国として、その解決策をソフトパワーとしてアジア全体に影響を与える可能性があるそうで、難しそうですがその解決策を発信できるようになればまた変わった形のリーダーシップをアジアで発揮できるのかもしれないなと思いました。