【恋するソマリア】レポート

【恋するソマリア】
高野 秀行 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4087457516/

○この本を一言で表すと?

 何度目かのソマリアでより深く現地に潜った訪問録の本
 

○よかったところ、気になったところ

・「謎の独立国家ソマリランド」の続編であるこの本が出版されていることを知って、出版されてからだいぶ経ってから読んでみました。
同じ舞台なので、前作の訪問時のことで前作では書ききれなかったことを補っているような内容かと思っていましたが、何度も訪問していて、前作のその後のことも書かれていてよかったです。

・前作はソマリアの3地域の概況や政治体制など様々なことが整理されている本でしたが、今作は時系列でより深くソマリアに潜っていった経緯が書かれていて、また違った印象を受ける本でした。

・前作から変わらない「超速」のソマリ人の様子が伝わってきて、前作の雰囲気も思い出せるようでした。

・最初の写真や途中のページの写真など、現地の様子がイメージとしてわかる写真が掲載されていてよかったです。
武器や戦車、攻撃を受けて炎上している車の写真もあって臨場感に溢れていました。

第一章 片思いのソマリランド

・前作でソマリアのテレビ局の日本支局長に任命された話がありましたが、そこからソマリアで中古車の広告を出すことに繋がり、スポンサーを確保したのはすごい行動力だと思いました。
実際に広告が現地の新聞に載ると、紙面が荒くて読めない程度だったり、予定より小さいスペースで載っていたり、トラブル続きで引き合いもなかったそうですが、実現までこぎつけたのはすごいなと思いました。

・ソマリ世界ではソマリ人ミュージシャンの音楽しか聞かない人が多いそうですが、その中でも有名なミュージシャンと行動できた話がありました。
このミュージシャンに依頼して作詞作曲してもらい、そのオリジナルの曲を歌うことで告白する、という手法が成り立っているのも面白いなと思いました。

第二章 里帰りのソマリア

・前作でもインパクトのあったモガディショの若き女性編集長ハムディの豪腕ぶりが健在で、一緒に行動するエピソードが多いからか、更にパワーアップしているようにも感じられました。

・前作でも付き合いのあったヒースが政府側の人間により暗殺され、その現場にいた同僚が明るい人間から刹那的で神経質な人間に変わってしまったことなど、前作で「リアル北斗の拳」と呼んでいたモガディショの環境がよくわかるような気がしました。

第三章 愛と憎しみのソマリランド

・久しぶりにホーン・ケーブルTVに訪問すると、オーナーが変わっていて、仕事中でもカートをムシャムシャ食べていた環境からカートに見向きもしない環境に変わっていて、場違いな空気を味わった著者の感想が述べられていて、トップが変わると組織の環境が変わるのはどこの国でも同じで、それが顕著だなと思いました。

・民族同士の問題解決で、親の仇の娘を嫁にもらった長老の話があり、恨み合う民族同士の問題を恒久的に解決するためにそうしたということが述べられていました。
法治国家ではない地域で死人まで出たトラブルを解決する方法として、すごい意思決定だなと思いました。

・ソマリアに何度も行っても、外食か宴会料理しか食べられず、ソマリア一般に食べられているものに一度も触れられていないことに気づいた著者が、料理の作り方を教えてもらおうとして、イスラム国家で女性に教えてもらうことの難しさを乗り越えてついに先生を見つけ、仲良くなって初めて過程に招き入れてもらった話がありました。
何度訪ねてもお客様で終わる環境に入り込む困難さと、ちょっとしたことからそれが実現できてしまうタイミングの妙味が面白いなと思いました。

第四章 恋するソマリア

・死人が出るような争いがあったばかりの民族同士の話し合いを取材することができ、そこに参加した知名度を高めたい知事が著者も含まれる記者団を前線地域まで無理やり連れ回した話がありました。
装甲車に乗ったり、アフリカ連合軍の兵士と写真を撮ったりして意外と楽しんだ著者が、テロ組織のアル・シャバーブに攻撃され、前を進んでいた車両が炎上するなどのアクシデントがありながらも何とか切り抜けて無事に帰れたそうです。

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