• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【物語イギリスの歴史】レポート

【物語イギリスの歴史(上) – 古代ブリテン島からエリザベス1世まで】
君塚 直隆 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121023188/

【物語イギリスの歴史(下) – 清教徒・名誉革命からエリザベス2世まで】
君塚 直隆 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121023196/

○この本を一言で表すと?

 イギリスの歴史を「王権と議会」というテーマを軸にして書かれた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・「王権と議会」というテーマを軸に、このテーマにかかわるトピックを交えて書かれていて、今までイギリスについて触れた本を読んでも整理できていなかったことがいろいろ繋がったように思いました。

・イギリス王家の「○○王朝」が何度も変わっているのは知っていましたが、どういう血統でどこからどこまでがそうなのかなど、あまり把握できていなかったので、それらが整理されていて勉強になりました。
中国の易姓革命のように完全に無関係ではなく、同じ血統から生まれた王朝が多く、意外に思いました。

・イギリスが強国ではない時期が多く、また王権が強くない時期もあったことが、議会の強化に繋がり、国家全体を巻き込んだ政策が取れるようになったこと、「参加できなければ責任を負わない」の原則が不完全でも昔から守られていたことや、世界の中でも強国となっていったことなど、様々な因果関係が絡み合って現在にまで至っていて興味深いなと思いました。

・章の始めや途中にある家系図で王や諸侯等の血縁関係を把握できたのがよかったです。
読んでいる途中で何度も家系図を見返すことになりましたが、どのように王位を継承していったのかを都度把握しながら読めました。

第1章 古代のブリテン島

・ケルト人の住んでいたブリテン島をローマが攻め入ったこと、ローマに反旗を翻したこと、アングロ・サクソン系の民族が領地を確保していったことなどの歴史の流れが書かれていました。

・複数の国家が形成され、統一王となったウェセックス王家が成立し、デーン人の襲来を経てデーン人のカヌートが王になり、わずか7年でウェセックス王家に戻り、ノルマンディー公のギョームがウィリアム1世となるノルマン・コンクエストが起きたこと、王が変わっても賢人会議がその引き継ぎの役目を担い、後の議会に繋がる動きがあったことなどが書かれていました。

第2章 ノルマン王朝のイングランド

・ノルマン王朝ではあくまでノルマンディー公領が主でイングランドは副、という位置づけだったこと、その地政学上の位置からフランスと対立関係にあったこと、王位継承でもめて内乱が18年に亘ったことなどが書かれていました。

・当時の行政上の事務作業は聖職者によって担われていたこと、行政・財政・司法のあり方がこの時代に定められていったことなども書かれていました。

第3章 アンジュー帝国の光と影

・アンジュー伯の血統から始まるプランタジネット王朝になり、ヘンリ2世がイングランドでの地位を築くと同時に、その資金調達のための課税の問題が大きくなり、ジョン王に対して諸侯が祖法の遵守を要求したことから内戦が始まり、劣勢を悟ったジョン王との間でマグナ・カルタが承認され、以降も適用されるようになっていった流れが書かれていました。

・ジョン王を継いだヘンリ3世の時代に以降800年続くイギリスの議会政治の礎が築かれるようになったそうです。
王権が諸侯等に対して弱くなると、合意に基づく政治を迫られるという構造は、どの時代でもどの地域でも見られて興味深いなと思いました。

第4章 イングランド議会政治の確立

・「悪しき取り巻きたち」が王の周りにいると、諸侯との対立が起き、内乱に繋がる、という構造が時代を超えて現れるのは興味深いなと思いました。
日本や中国などでも歴史上何度も現れる構造で、側近政治自体はうまく回ることもあり、政治体制の良し悪しより、それを担うものの差とも思えました。

・ジョン王には「悪しき取り巻きたち」がいて、エドワード1世にはおらず、エドワード2世にはいて、エドワード3世にはいない、と交互に繰り返すのは分かりやすいなと思いました。

・エドワード2世の妻が愛人と図って追い落とし、息子のエドワード3世が王位に就き、母と愛人を追い出す、という流れはドラマみたいだなと思いました。

・諸公だけでなく騎士や市民も政治参加するようになり、貴族院と庶民院が成立したのが十四世紀初頭というのは、当時の日本等の他の地域の状況から見てもかなり早いなと思いました。

第5章 百年戦争からバラ戦争へ

・エドワード3世の跡を継いだ孫のリチャード2世が若くして王位に就き、財産を取り上げた従兄弟のダービー伯の反乱で捉えられて幽閉され、ダービー伯がヘンリ4世として即位し、その息子のヘンリ5世はフランスへ侵攻して屈服させ、フランス王シャルル6世の娘と結婚してヘンリ6世がフランス王を兼ねるようになり、ジャンヌ・ダルクの活躍でフランスが盛り返す流れから、今度はイングランドでヘンリ6世のランカスター家とヨーク家の間でバラ戦争が起こり、ヨーク家が勝利し、その後ヨーク家も滅亡し、フランス王シャルル6世の流れを汲むテューダー王朝になるなど、イギリス・フランス間での動きがすごいなと思いました。

第6章 テューダー王朝と近代の夜明け

・テューダー王朝の始まりのヘンリ7世の時代にはイギリスは弱小国になっていたこと、息子のヘンリ8世のスペイン王家との婚姻等の政策でようやく諸国から認められるようになったこと、ヘンリ8世がイギリス国教会を創立し、離婚と結婚を繰り返したこと、その娘のメアリ1世がカトリックを復帰させようとして異端処罰を繰り返し、メアリ1世の夫のフェリーペがスペイン王人たことで負け戦に巻き込まれたこと、メアリ1世の死後にエリザベス1世が跡を継ぎ、カトリックと決裂し、スペインの無敵艦隊を撃破するなど、近代へ向かう流れが書かれていました。

第7章 清教徒・名誉革命の時代

・世継ぎのいないエリザベス女王の跡をヘンリ7世の玄孫にあたるスコットランド国王ジェームズ6世がジェームズ1世としてイングランド国王を兼ねるようになり、王権神授説を提唱しつつも王権と議会の双方を重視し、その息子のチャールズ1世はスコットランドへの戦争で支持を受けられなくなり、清教徒革命で処刑されるまでになったというのはなかなかの急展開だなと思いました。

・護国卿としてクロムウェルが軍事独裁を始めて、クロムウェル死亡後はその息子が護国卿を継いだもののすぐに辞任し、チャールズ1世の息子のチャールズ2世が王位に復活し、チャールズ2世はカトリックに改宗していたもののそれを死の床で初めて告げるほどに隠し、弟のジェームズ2世が跡を継ぎ、名誉革命でオランダ総督だったウィリアム3世とメアリ2世が王位に就き権利章典が定められ、イングランドとスコットランドが合邦したのちにスチュアート王朝が終わるまでの流れが書かれていました。

第8章 ハノーヴァー王朝下の議院内閣制確立

・ドイツのハノーファー選帝侯のゲオルグが、ジョージ1世としてイギリス国王になり、大蔵卿ウォルポールが実務を担い、「首相」が国政を担うようになり、植民地アメリカの独立があり、産業革命・大航海時代で製造業と海運業の国になったことに併せて議会改革があり、貴族院から庶民院に政治の主体が移って強国となっていく土台ができる流れが書かれていました。

第9章 イギリス帝国の黄金時代

・選挙法の改正や大衆政治などの深化の一方で、帝国主義の成功者としてのイギリスが、長期間王位に就いたヴィクトリア女王のもとで行われたことが書かれていました。
ヴィクトリア女王が王位に就いた18歳の絵と80歳の写真が掲載されていて興味深いなと思いました。

第10章 第一次世界大戦

・総力戦となる第一次世界大戦にイギリスも参戦することになり、国民が戦力としての責務を果たす代わりに選挙権の拡大で選挙民が増大し、労働党政権が成立し、戦後には世界恐慌もあって挙国一致政権で対応し、帝国内でのブロック経済を確保する英連邦諸国を形成するまでの流れが書かれていました。

第11章 第二次世界大戦と帝国の溶解

・ジョージ5世が1936年に亡くなり、跡を継いだエドワード8世が「王冠を賭けた恋」で王位より恋人のウォリス・シンプソンをとって退位していたころ、ヨーロッパでは全体主義により独裁者が台頭し、チェンバレン首相の宥和政策を逆手に取られてドイツがさらに侵略を進め、チャーチルが国家を率いて対応するも、アメリカやソ連に対して下に見られ、ヤルタ会談には参加したもののソ連が対日参戦するヤルタ秘密協定からも外されるようになって終戦を迎え、社会福祉国家となり、植民地の解体が進められ、ジョージ6世が亡くなり、エリザベス2世が跡を継ぐところまで書かれていました。

第12章 エリザベス2世の時代

・イギリスの国際的影響力が落ちていく中で、国民投票でEC残留を決めるなど政府や議会が国家的問題に全責任を負えなくなり、小さな政府を提唱するサッチャー政権からブレア政権による国政改革で地方分権化が進められ、議会を重んじるブレアはイラク戦争への参戦問題で責任を問われ、議会の力が問われる時期に来ているとして、締められていました。