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【世界の教科書でよむ〈宗教〉】レポート

【世界の教科書でよむ〈宗教〉】
藤原 聖子 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/448068865X/

○この本を一言で表すと?

 世界の教科書から見た世界観・宗教観をさらっと紹介した本

○面白かったこと・考えたこと

・各国の宗教そのものに対する考え方、教育方針などが見えてよかったです。いろいろな国の例が載っていたので比較対象になって、政策的な方向性がよりわかりやすかったです。
ところどころ日本の教育への批判が書かれていましたが、結構妥当だと思える意見が多かったです。

第1章 アメリカ―イスラムを敵視しているのか?

・アメリカではクリスマスの時期にクレジットカードで借金までして準備をすると聞いたことがありますが、それでも公立の学校ではクリスマスパーティー等には慎重だというのは日本での感覚からすると不思議な気がしましたが、日本ではそれだけ「軽く」取り扱っているということかと思いました。

・アメリカでは9.11以降は偏見をなくすためにイスラム教についてより深く、特に誤解されやすそうな「ジハード」の定義(元は努力を意味する言葉)などについて説明しているのはバランスが取れているなと思いました。

第2章 イギリス―となりの○○教徒と学び合う

・かつて帝国主義でかつての植民地からの移住者等が今も多く住んでいることからお互いの理解が必要で、そのためにいろいろな宗教の文化に触れることができる授業を用意し、そのための教科書もできているというのはすごいなと思いました。

第3章 フランス―スカーフ禁止の国の宗教の考え方は?

・フランスは政教分離を徹底するために宗教を示すものを排除していることは知っていましたが、宗教教育としてキリスト教以外の宗教についても詳しく教えているのは初めて知りました。

第4章 ドイツ―ホロコーストへの反省の上に

・一度ユダヤ人を弾圧した歴史を持つことから他宗教、特にユダヤ教に対する理解、キリスト教徒の相違点ではなく共通点に目を向けた教育をしているのはなるほどと思いました。
ヒトラーを崇拝する人の出現など、その方向のネオナチ等をイメージした設問を設けているのはうまく工夫しているなと思いました。

・オカルトについての知識も宗教の授業の一部として伝えるのは、そういった中で極端な方向に走ることを防ぐ基礎知識をつけさせるのに適していると思いました。
一部の人は逆に少し知ることでハマっていくかもしれませんが。

第5章 トルコ―イスラムは特別かワン・オブ・ゼムか?

・政教分離の国家でありながらイスラム教国であるという矛盾した面を持つトルコで宗教と道徳の授業としてイスラム教の教義を軸にして他の宗教も紹介し、理解を深めるような教科書が作られているのは納得感がありました。

第6章 タイ―日本の仏教をどう見ているのか?

・国民のほとんどが仏教徒であるタイでは仏教を軸に道徳が語られ、文明の基としての位置づけでもあるというのは、文化レベルは全然違うものの、日本の奈良時代などに似ているなと思いました。

・瞑想法や僧に対する礼儀などを授業で学ぶというのもタイで生きていく上で必要な知識として学ぶべきことなのだろうなと思いました。

第7章 インドネシア―ソフト・イスラムとクルアーンの関係

・イスラムが国教でありながらイスラム教徒以外の国民も多いインドネシアで、イスラムの教義より言行録や行動規範について学ぶことを先に持ってきて、教義は中等教育以降で深く学ぶというのは面白いなと思いました。

・日本とは対極にあるような体制なのに、20年ほど前に受けた道徳の授業の教科書と同じような「こういうときは、こうしよう」という内容になっていて面白いなと思いました。

第8章 フィリピン―宗教のサラダボウルはどうできたのか?

・多宗教国家のフィリピンではフィリピンという国家に対するナショナリズムを上位に持ってきてセクトと言われるような宗教を含めて他宗教を尊重し、融和しようという内容の教科書になっているのは実際にそういう国家であるというより、そういう国家を目指すという方向性のようなものを感じました。

第9章 3分の1がクリスチャン。そのライバルは?

・韓国の宗教教育で、土着の宗教も含めて韓国国内で出会いそうな宗教を予め紹介しておくというコンセプトになっているのは面白いなと思いました。
他に紹介された教科書の中で最も道徳面と直結した形になっているようにも思いました。
整形について考える設問があるのも韓国らしい気がします。

・宗教からくる悪しき(と思える)習慣や考え方をピックアップして批判しているのは一番宗教と距離を置いて客観的に見た考え方だと思いました。

おわりに

・日本では宗教には触れない方向の教育になっているというのはその通りだと思います。
ニュースなどでそれまであまり知らなかった宗教の話題が出るとニュースを鵜呑みにしてしまうのもそういった素養の問題であるように思います。
知ったうえで距離を置くことと、知らないから距離を置いていることは全然違うなと思いました。
他国の人と関わりを持つことが増えている現代ではある程度知っておくことも重要ではないかと思います。