• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【銃・病原菌・鉄】レポート

【銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎】
ジャレド・ダイアモンド (著), 倉骨彰 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4794218788/

【銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎】
ジャレド・ダイアモンド (著), 倉骨彰 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4794218796/

○この本をひと言でまとめると。

 人類の歴史と地理的要因を重ねて歴史上の繁栄の方向性を検討した本

○よかった点・考えた点

・全体を通して、考古学的な発見に対して意味づけをすることで13,000年に何があったのかを意味づけていく手法はすごいなと思いました。

第1部 勝者と敗者をめぐる謎

第2章 平和の民と戦う民の分かれ道

・人種的な起源は同じでも環境的要因で全く異なる文化を身に付け、一方がもう一方を淘汰する話から民族的優劣ではなく環境が問題であるという話に結びつけているのは面白いなと思いました。

第3章 スペイン人とインカ帝国の激突

・スペインが中南米を少人数で征服したことは知っていましたが、なぜそれが為し得たのか(鉄や馬による装備、家畜由来の病原菌とそれに対する耐性、相手に対する情報の有無)が分かってよかったです。

第2部 食料生産にまつわる謎

第4章 食料生産と征服戦争

・大陸が横方向に伸びていることが農作物の展開に有利という考え方は面白いと思いました。

第5章 持てるものと持たざるものの歴史

・農作物の起源を年代の測定法や野生物と農作物との違いの推定などから分析していて科学的に正確性を目指して検証を続けているのはすごいなと思いました。

・食料の生産を独自に始めた地域に中南米が該当していますが、「該当する地域=文明的に優位」と単純に考えることはできないのかなと思いました。

第6章 農耕を始めた人と始めなかった人

・農耕生活は急に始まったのではなく、狩猟採集生活から長い年月をかけて徐々に試して定着させていること、人口増加が生産増加を上回っている時期は農耕生活の人間の方が狩猟生活の人間より体が小さいことなど、なるほどと思いました。

第7章 毒のないアーモンドのつくり方

・自然淘汰ではなく人為的な選択淘汰によって人間にとってより良い農作物が選ばれていったというのは面白いなと思いました。

・毒のないアーモンドと違ってオークの実の苦さは複数遺伝子からなっていることもあって農作物化されなかった話など、人為的淘汰に乗らなかった話もあってよかったです。

第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか

・栽培化とその発展を決めるものは「入手可能な動植物の差」と「狩猟採取生活から農耕生活に移行するインセンティブ」という納得できる話が証拠と共に示されていました。

第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか

・家畜にできる要因は単純だが家畜にできない理由は複雑・・・ということで6つの家畜にできない条件(餌、成長速度、繁殖、気性、パニック度、序列性)が示されていて面白かったです。

第10章 大地の広がる方向と住民の運命

・大陸が東西に伸びていれば緯度が同じであり、動植物の生育条件も似ていること、南北に伸びていれば緯度が異なりある地域で生育に適した動植物が不適になりやすいことという地理的な条件と、それによる農作物の伝播の速度が異なることが書いてあって面白かったです。日本もどちらかといえば南北に伸びていて、東北地方で米を作るためにだいぶ工夫が必要だったと聞いたことがあるので納得できました。

第3部 銃・病原菌・鉄の謎

第11章 家畜がくれた死の贈り物

・病原菌の側から見た都合のいい生息条件と、狩猟採集生活より農耕生活の方が病原菌の伝染に都合がいいことなどが理由づけられていて興味深かったです。
西洋人に征服された地域で現地人が激減したのは西洋人の残虐性が主要因だと思っていましたが、それとは比べものにならないくらい病原菌の影響が大きかったというのはすごいなと思います。

第12章 文字をつくった人と借りた人

・文字の「実体の模倣」や「アイデアの模倣」による伝播、「表意文字」「表音文字」「表節文字」などの種類や伝達性の話はなかなか面白いなと思いました。
どちらかといえば廃れる傾向にある「表意文字」と主流の「表音文字」を並行して使う日本語は結構珍しい形態なのだなと思いました。

第13章 発明は必要の母である

・「必要は発明の母」ではなく「発明は必要の母」という考え方は「逆もまた真なり」で面白いなと思いました。
既存のニーズから発明を生むか、潜在的なニーズを発明で掘り起こすか、という話は企業経営においても該当する話だと思います。(後者はアップルのスティーブ・ジョブズが該当)

第14章 平等な社会から集権的な社会へ

・「小規模血縁集団⇒部族社会⇒首長社会⇒国家」の流れは集団力学的な話も入っていてかなり納得できました。

・人が関係者全員の顔を知っている社会が数百人までで学校を例えに出しているのも分かりやすかったです。

・規範やしがらみがない小規模組織で殺し合いの連鎖が生まれるなどの話は生々しいなと思いました。

第4部 世界に横たわる謎

第15章 オーストラリアとニューギニアのミステリー

・ニューギニアとオーストラリアというイメージ的に近い地域がいかにかけ離れているか、という話がいろいろな側面から書かれていて面白かったです。
インドネシアからの移動、ニューギニアの高地による侵略困難性、オーストラリアの原生作物の不足、などから発展が阻害され、ヨーロッパ人から見た時の入植しやすさに違いが出て今に至っているというのはなかなか面白いです。

第16章 中国はいかにして中国になったのか

・中国語は大小さまざまに分化していて隣村でも会話できないことがあるという話を聞いたことがありますが、系統としてはほぼ統一されているというのは世界全体からすると特異な状況なのだなと思いました。

第17章 太平洋に広がっていった人びと

・台湾の原住民の話は明治時代に日本から「台湾出兵」したときの話を思い出しました(台湾の蛮族に日本人が殺されたことを理由に出兵)。

・海をカヌーで渡って広がっていったオーストロネシア人の行動力は凄いなと思います。
カヌーの両脇に浮き木をつける工夫は確かにかなり転覆しにくくなるだろうなと思いました。

第18章 旧世界と新世界の遭遇

・旧世界(征服者側)と新世界(被征服者側)でなぜ逆にならなかったのかを、表18-1に書かれている「植物の栽培化」「動物の家畜化」「土器」「村落」「首長社会」「金属器の普及」「国家」「文字」の開始時期によって説明しているのはなかなか分かりやすく納得できるなと思いました。

第19章 アフリカはいかにして黒人の世界になったか

・元から「アフリカ人=黒人」というわけではなかったこと、その分析手法として言語に残されている特定の語彙に注視していることには感心させられました。
アフリカで紀元前1000年頃に鉄加工技術が備わっていたのにその後発展しなかったのはやはりアフリカ大陸が南北に伸びていることが理由かなと思いました。

・マダガスカル島に3世紀から8世紀の間にインドネシアからオーストロネシア人が入植したのはすごいなと思いました。

エピローグ 科学としての人類史

・結論として「栽培化や家畜化可能な野生種の有無」「大陸の形状による伝播速度」「大陸間の伝播速度」「大陸の大きさと総人口」が現代に至る状況を生んでいると書かれていました。
地政学をさらに拡大したような結論で面白いなと思いました。

・ヨーロッパが覇権を握り中国が覇権を握れなかったのは前者が統一されず、後者が統一されていたためという結論はなかなか面白かったです。
外部に敵がいて国家間の競争原理が働かないと成長速度が落ちるのかなと思いました。

・文化の特異性、特定の個人による影響について留保しているのはなかなか全体を見据えた考え方だなと思いました。
歴史を科学的に分析するという考え方はこの本を通してなかなか素晴らしいものだなと思いました。