【オーディション社会 韓国】レポート

【オーディション社会 韓国】
佐藤 大介 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4106104733/

○この本を一言で表すと?

  スペックで狭き門を競い合う熾烈な韓国社会について述べた本

○面白かったこと・考えたこと

・韓国の一面としての「高い競争率」と「敗者復活困難」を描き出した本だと思いました。

第1章 オーディションに夢をのせて

・国民の4%が参加するオーディション番組が存在するということに驚きました。
一般に「公正さ」が求められること、オーディションのような「誰でも参加できる公正な競争」の存在によって競争社会を認めさせる功罪があることなどはなるほどと思いました。
少ないチャンスを求めて「ボーカル教室」が乱立するという現象は日本でもありがちだなと思いました。

第2章 生の競争は「教育」から始まる

・家計に占める私教育費の割合が5割に達する家庭も多いようで大変そうだなと思いました。
教育次第で生まれに関係なく出世できるというのは日本でも同じですが、結局その教育にお金をかけることができるかどうかで「教育格差」が生まれるのは皮肉だなと思いました。

・母と子を海外に送り出して仕送りをするキロギアッパ(雁の父)は大変そうだなと思いました。

・P.61の「韓国科学英才学校」の時間割(10時間目まである授業と自習時間で1日が終わる)はすごいなと思いました。
これだけ子供の教育にお金と時間がかかるのであれば日本より出生率が低いのも納得です(2009年の特殊出生率1.15。日本は1.37)。

第3章 就職も恋もスペック次第

・お見合い番組でも最初経歴を隠していたら顔がいい人物に人が集まっても経歴を公表すると集まる人物がガラリと変わるそうです。
それでも顔もスペックの一つで整形手術で美人になろうとする人が多く、男性でも整形手術を受ける人が多いそうです。

・学校の成績はもちろんスペックの一つとして重要で、留学経験や英語力も重要、ボランティア経験も重要とかなり大変なようです。
ボランティア経験を保証するビジネスなどもあるそうで、何にしてもお金がかかるとか。

第4章 「正社員」と「非正規」の深い溝

・「正社員」と「非正規」の格差が大きく、同じ作業をしていても「非正規」の賃金は「正社員」の6割だそうです。

・韓国の失業率は3%とされていますが、失業者は「調査直前の1週間に仕事をしていない」「積極的に求職活動をしている」「仕事があるなら働く意思がある」の条件を全て満たす15歳以上という人だけを指すそうです。
仕事に就くために勉強をしている人は「失業者」ではなく「就職準備者」とされるそうで、病気等で「休養中」の人も除外されるとか。

・雇用保険加入者で見ると韓国の雇用率は2010年で63.3%と70%台の日本を下回っているそうです。
またリストラも増加し、離職者が100万人以上になる年があり、労働争議やデモも増加しているそうです。

第5章 大企業は弱者を救わない

・国全体では経済成長しているものの、ごく一部の大企業だけがその恩恵を受けていて、中小企業は資源高騰などの損失を背負わされながら好況感はないそうです。
2010年に「同伴成長政策」で中小企業に対する扱いを是正する方策を採っていますが、あまり結果は出ていないそうです。

・「定年45歳」と呼ばれるほど上に上がればより競争がきつくなるそうです。

第6章 お住まいはどちら?

・住んでいる場所がその人のスペックの一部であるため、いい場所は人気がありどんどん価格が高騰するそうです。
そのために韓国では年に持ち家の人も含めた人口の19%が引っ越ししているそうです。

第7章 家庭崩壊と自殺大国

・韓国はOECD加盟国自殺率1位になったそうです。

・敗者復活の内競争社会になり、かなりストレスの大きい社会になり、また儒教の国で高齢者を敬うはずが、高齢者の暮らしに関する指標がワースト1になるほど悪化しているそうです。

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