【なぜ韓国企業は世界で勝てるのか】レポート

【なぜ韓国企業は世界で勝てるのか】
金 美徳 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569802141/

○この本を一言で表すと?

 日本生まれの韓国人が書いた韓国財閥解説本

○この本を読んで面白かった点

・サムスン財閥、現代財閥、SK財閥、LG財閥の韓国4大財閥について詳しく知ることができて良かったです。

プロローグ

・韓国のマーケティング志向と日本のモノ作り志向を、トリプルアクセルを諦めてカナダに移住し、審査員の好みや審査癖を研究して演目を練ったキム・ヨナと、最後までトリプルアクセルにこだわった浅田真央に例えているのは面白いなと思いました。

・韓国がFTA戦略を通じて、東南アジアでのタイと同じように東アジアのハブ国になろうとしているのはなかなかいい位置づけだなと思いました。
北東アジア経済圏という考え方で地域間の経済を考えるというアプローチは面白いなと思いました。
その北東アジア構想に鳥取県が絡んでいて、知事や県庁がいろいろやっていたことは初めて知りました。

第一章

・サムスンの二代目経営者である李健煕が発信する経営哲学を10回変えている、というのは面白いなと思いました。
順調な時期でも先を見て「今は本当の危機だ」と投げかけるやり方はすごいリーダーシップだと思います。サムスンの産業不均衡(生産分野の偏り、ハード面に対してソフト面で弱い、など)はなるほどなと思いました。

・韓国の「デザイン経営」は日本の弱いところでもあり、見習うところが大きそうです。

・韓国は部品の輸入などで、対日貿易赤字が2010年で361億ドルとすごいことになっているそうです。

第二章

・現代財閥が兄弟間のトラブルで分裂していることは初めて知りました。

・現代自動車の各国に対する徹底したマーケティングはすごいなと思いました(ターバンを使う人用に車高が高いモデルを用意、クラクションをよく鳴らす人用に複数のボタン、など)。
また、BRICs各国に積極的に攻勢をかけるなどの攻めの姿勢はすごいなと思いました。

・ロシア、北朝鮮、韓国間のエネルギー構想は面白いなと思いました。

第三章

・SKグループのことをほとんど知りませんでしたが、アメリカ・日本・中国・インド・東南アジア・中東に戦略拠点を張り巡らせていてすごい規模のグローバル企業だなと思いました。
SKグループは中南米も攻めていて、ブラジルだけでなくペルー・チリ・アルゼンチン・ボリビア・エクアドルなど、資源開発や販売拠点としても展開しているようです。

・SKグループがトルコの海底トンネル開通の受注を受けたという記載がありましたが、これは日本の大成建設が既に完工した案件で、この本の誤りだなと思いました。

第四章

・LG財閥がGS財閥・LS財閥と分裂したことを初めて知りました。
分裂後のLG財閥が韓国第四位の規模を保ち、GS財閥も韓国第八位の規模というのはすごいなと思いました。

・LGが輸出用製品の開発で、インドではテレビを大音量が出せるようにしたり、多言語対応にしたり、クリケットゲームの機能をつけたりして、携帯電話の呼び出し音を騒音でも聞こえるように高くしたり、洗濯機のデザインでは花模様や21色のバリエーションをつくったり、電子レンジでは下一ケタに1を加え数字が吉祥数になるという慣習に合わせて101種類のレシピをつけるなどの工夫はすごいなと思いました。

・LGでは自分たちが韓国の企業だということをアピールせずに米国企業や日本企業だと思われているケースもあり、他の財閥に比べても「名を捨てて実を取る」ところがあるそうです。

・サムスンとLGが競合するケースが多かったところ、最近では提携して共同作戦をとることもあるそうです。

第五章

・これまで財閥企業のメリットが多く語られていましたが、財閥企業のデメリットについても語られていました。(世襲経営によるコーポレートガバナンスの不透明さ、労使紛争問題、部品素材の輸入依存)

第六章

・韓国の地政学上の利点、海外コリアンネットワーク、北朝鮮情報などを日本や日本企業はもっと活かすべきという著者の主張はなるほどと思いました。
東日本大震災で韓国が「防災上のリスク再認識」「部品調達リスク」「エネルギー政策見直し」などの影響を受けているそうです。

エピローグ

・結論として、韓国から学べる点は官民連携による海外市場開拓、新興国市場での現地化戦略、選択と集中による果敢な投資、デザイン経営、大胆な広告手法とアフターサービス、韓流マーケティングだそうです。
韓国から学べない点は、世襲経営、労使紛争問題、まだ未熟なグローバルマネジメントだそうです。

○つっこみどころ

・何度も韓国FTA戦略についてメリットが書かれていますが、FTA戦略のデメリットに関する記述がほとんど書かれておらず、少し一面的だなと思いました。

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