【現代台湾を知るための60章】
亜洲奈 みづほ (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4750335282/
○この本を一言で表すと?
現代の台湾についてバランスよく知ることができる本
○この本を読んで面白かった点・考えた点
・一人の著者が自身の感じていることや考えていることも交えて書いていましたが、事件や経済の状況等については客観的に書かれ、文化等については主観的に書かれていて適切に書き分けられているなと思いました。
書かれている分野のバランスもよかったです。
Ⅰ 国際関係
・中国と台湾の関係の盲点として「台湾が中華人民共和国に一度も支配されたことがない」というのは言われてみれば確かにそうだなと思いました。
国際関係として同じ中国という視点と異なる国家という視点を考えてみる上で面白いなと思いました。
・中国と台湾の間で経済的な交流が続いているというのは当然のことだと思いましたが、それぞれの来歴や主張を考えてみると不思議な気もしてきました。
名目と実利を使い分けている漢民族同士と考えると面白いなと思いました。
Ⅱ 政治
・国家の成立経緯から国民党として中国も支配地域という考え方と台湾独自で国家としてやっていくという考え方が対立しているというのは複雑だなと思いました。
・1980年代まで世界最長の戒厳令が敷かれていた台湾が現在では完全に自由の国と評価されるまでにした李登輝やその後の陳水扁等の動きも凄いなと思いました。
国民党の一党独裁から穏便に民主進歩党に政権交代し、また国民党政権に戻ったという流れは日本の動きとかなり似ているなと思いました。
Ⅲ 経済
・台湾がOEMを受託することをずっとやってきて最近になって企業名が表に出始めたことは知っていましたが、ある程度国策的な動きでもあったというのはすごいなと思いました。
・ノートパソコンやネットブックで台湾のエイサーやアスースが有名なことは知っていましたが、ハードだけでなくソフトにも進出し、かなりの基盤を築き上げていること、ハードを生産することは他国に任せてオペレーションセンターとなっていることなど、時代の流れの中でうまく舵を切っているように思います。
・中国とのECFA(経済協力枠組み協議)や他国とのECFAなど、立場的にFTA・EPAが締結できない中でうまく遣り繰りしているところはずっと同じ環境で苦労しているが故の強かさかなと思いました。
Ⅳ 社会
・台湾と少数民族のイメージが現代ではあまり結びついていませんでしたが、少数民族の権利も尊重され、教育面や文化面でも多様性が保たれていることは初めて知りました。
・亜熱帯・島国・工業国等の様々な組み合わせで独自性があるこの地域で環境問題も含めてうまく対応できている印象を受けました。
・日本を追い越して日本以上の高齢化社会になっていく見込みであるというのは、今後どう対応していくのかは日本の参考にもなりそうだと思いました。
Ⅴ 文化
・東南アジア等の国家と異なり、台湾では自分たちの独自の文化の産物をうまく世界に発信して認められている印象を持ちました。
宗教や民間信仰との付き合い方が日本と似ているなと思いました。
Ⅵ 芸術
・芸術面でも分野としては日本と似ていながら独自の芸術を生み出していて興味深かったです。
○つっこみどころ
・イベントや事件の起きた年がほとんど書かれておらず、その割に「その三年後」などの年を意識した記述もあり、時系列で理解したい人にとっては不親切な書かれ方がされているなと思いました。