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【インド財閥のすべて】レポート

【インド財閥のすべて】
須貝信一 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4582856047/

○この本を一言で表すと?

 インド財閥の成り立ちから現代に至るまで解説した本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・インド財閥の成り立ちから、イギリスの植民地支配への対応、戦後の対応など、時代を超えてどのように存在してきたかが書かれていて分かりやすく、面白かったです。

・3大財閥の家系図が挿入されていて、誰が引き継いで続いてきたのかなどが分かりやすくてよかったです。

第一章 財閥の起源と発展

・東インド会社による植民地化により、最初に植民地となったベンガル地域の中心地カルカッタと、植民地となる前から東インド会社の商館がおかれていたボンベイで急激に商業が栄えたこと、カルカッタではイギリスが支配的でインド商人が従属的、ボンベイでは対等という対比などは興味深かったです。

・財閥化した「パルシー(ゾロアスター教徒の商人コミュニティ)」「グジャラーティ(グジャラート出身者の商人コミュニティ)」「マルワリ(ラジャスタン出身者の商人コミュニティ)」がそれぞれインドの西の方が出身ながら、パルシーとグジャラーティがボンベイ、マルワリがカルカッタと場所を変えて基盤を築いていたのも興味深いなと思いました。

・イギリスのインド征服完了後、東インド会社の規模が縮小され、インド商人と元東インド会社社員との取引に移行し、経営代理会社をイギリス人が設立し、現地事業会社を運営し、その経営代理会社がインド資本に変わっていったという流れも興味深いなと思いました。

・財閥がインド独立運動を支援したのは分かりますが、社会主義の導入も支援していたというのは不思議な気がしました。結果的に国家政策に食い込むことで社会主義化の恩恵をタタ・ビルラの両財閥が受けていたというのは見事な立ち回りだなと思いました。
社会主義化が進んで財閥規制が進められたり、経済開放路線になったりと国の路線変更に左右されながら、それに乗り切った大手財閥の運営手腕はすごいなと思いました。

第二章 君臨する最大の財閥、タタ財閥

・自動車産業、鉄鋼産業、IT産業の3産業を軸に様々な事業に進出しているタタ財閥の歴史についてまとめられていました。
パルシーとして阿片と綿花の商人から始めて、大商人の基で働き、その大商人が失脚した後をうまくまとめ、綿工業に進出したというのはどの国でもありそうな立志伝だと思いました。
タタが日本郵船と共闘して植民地支配者のイギリスに対抗して海運事業を始めていたというのは初めて知りました。
その後ホテル業、不動産業、鉄鋼業に進出し、第二次世界大戦のイギリスの戦中需要に対応して躍進し、社会主義化した戦後インドにいくつか事業を国有化されながらも社会主義が行き過ぎないようにコントロールして対応し、2008年のリーマンショックで打撃を受けながらも「金利10パーセントの定期預金募集」を打ち出して資金を集めて乗り切ったという現代までの流れはすごいなと思いました。

・後継者問題でタタ一族のノエルが継ぐ可能性もあるが、五代目会長のラタン・タタは一族にこだわっていないと書かれていました。
ノエルの妻がミストリ家の者で、ミストリ家はタタグループ中核会社の2割弱の株式を有していると書かれていましたが、この本が書かれた当時の著者の読み通り、ミストリ家のサイラス・パーロンジ・ミストリが六代目会長になっていました。

第三章 復権を狙う、ビルラ財閥

・非鉄産業、セメント産業、化学産業の3産業を軸にしているビルラ財閥についてまとめられていました。
ヒンダルコ・インダストリーズがアルミで最大手、銅で二位の企業で名前は聞いたことがありましたが、ビルラ財閥のグループ会社というのは初めて知りました。
マルワリとして後発ながらカルカッタ中心に阿片商人として資本を築き、ジュート(黄麻)産業へ進出して第一次世界大戦の軍需で大稼ぎし、インド商工会議所を解説してインド経済界を代表する存在になり、世界恐慌でイギリス資本が弱ったことに乗じて事業拡大し、政府により鉄鋼業進出を阻止されて非鉄産業に進出し、成功していったというのは時代の流れにもうまく乗ったのだなと思いました。

・マハトマ・ガンディーが暗殺されたのがビルラ邸だったこと、GDビルラはマハトマ・ガンディーの側近として独立運動に参加していたこと、インディラ・ガンディーの財閥規制と拠点としていた西ベンガル州で共産主義の攻撃の的になったことなど、GDビルラの時代に苦難があったことが書かれていました。

・GDビルラの後にGDビルラに期待されていたアディティヤが癌で早くに亡くなったこと、アディティヤの息子クマールがビルラ財閥を継いで、父アディティヤの名前から「アディティヤ・ビクラム・ビルラ・グループ」と名付けて刷新し、会長就任時の売上高15億ドルから15年で300億ドルまで成長させたこと、アディティヤ・ビルラ以外は没落していったことなど、大財閥でもいろいろ波があるなと思いました。

第四章 急成長を続ける、リライアンス財閥

・石油化学産業を中心に発展した現在でまだ二代目の新興財閥リライアンス財閥についてまとめられていました。
創業者のディルバイはインド独立時に高校生で、中東で働いている兄の斡旋でフランスの商社に就職し、石油製品の部門の事務と営業を経てインドに戻ったこと、インドに戻って貿易商社を開始したこと、顧客の要望に何でも応える商社として事業拡大したこと、化学繊維に目をつけて繊維商社へ転換し、工場を設立して自社生産するようになったこと、さらに化学産業に拡大していったことが書かれていました。

・創業者のディルバイが脳卒中で2002年に死亡した後、遺書が残されていなかったために二人の息子が争い、その争いに首相を含めた政府運営者が会合するほどの騒ぎになり、母親の仲裁で事業を分けたことも印象的でした。
現在では兄のムケシュが弟のアニルを大きく上回り、事業を侵食しているようです。

第五章 群雄割拠の中堅財閥

・中堅の財閥についてそれぞれ中核事業を中心にまとめられていました。
ほとんど知らない名前でしたが、自動車産業で有名なマヒンドラ財閥や名前がわかりやすくて憶えていた二輪車事業のヒーロー財閥についても触れられていました。

○つっこみどころ

・本の帯でラバイル財閥を「ライバル」と間違えていました。読み終えた後で目に留まってヒーロー財閥があるので出版社が間違えたのかなと笑いました。