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【戦後世界経済史―自由と平等の視点から】レポート

【戦後世界経済史―自由と平等の視点から】
猪木 武徳 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121020006/

○この本を一言で表すと?

 戦後の世界各地域の経済について触れた経済史の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・題名通りに「戦後」の「世界」各地域の「経済」に触れた本でした。概要から詳細まで程よいバランスで書かれていてよかったです。

第一章 あらまし

・最初に五つの視点として「市場化の動きと公共部門の拡大」「グローバリゼーション」「所得分配の不平等」「グローバル・ガヴァナンス」「市場の設計と信頼」が挙げられていて、それぞれ難解であるもののそれぞれ興味深い視点だなと思いました。

・戦後を「不足と過剰の六〇年」として、その振幅の大きさを様々な分野で書かれていました。「飽食と飢餓」「技術力と豊かさ」「公共精神の過剰から不足」「アジアの興隆」「人口・エネルギー・技術の変化」「資源と食糧」など様々な点で戦後の移り変わりが激しかったことがざっと書かれていました。

第二章 復興と冷戦

・戦後のヨーロッパ復興の大きな要因としてマーシャル・プランが挙げられることが多いですが、その反論として数値としてはそれほどの影響がなかったことが挙げられていて新鮮に感じました。

・ソ連における科学面での成功と農業面での失敗、ドイツの通貨改革の成功など、戦後すぐにあったトピックだけでも興味深いなと思いました。

第三章 混合経済の成長過程

・戦後の日本がそれ以前には考えられなかったほどの経済成長を見せてアメリカの競争相手になるほどになり、また貧困層の実態とその生活向上がテーマとなって様々な政策が考えられるようになるなど、軍事競争からある程度離れると違った土俵での勝負になったり、それまで目を向けられなかった場所にようやく目を向けられるようになるのだなと思いました。

・イギリス・フランス・イタリア・スウェーデンなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ違った政策で国家運営していたこと、戦後すぐに欧州共同体の方向に向かっていったことなども興味深かったです。

第四章 発展と停滞

・戦後の東アジア諸国の発展についてざっと触れられていました。それぞれ異なった路線で成長していったこと、不思議な共通点として社会主義計画経済要素が認められなかった国は西欧の植民地になっていなかった国だということなど、なかなか興味深い話だなと思いました。

・社会主義国家の苦闘が各国ごとに概観されていて興味深かったです。
計画経済の欠点として、その計画を立案できる層と運用する層で断絶があったことが挙げられていてなるほどと思いました。

・ラテンアメリカの中心国では、輸入代替工業化政策で関税を高くし国営で工業を運営していくなかで零細産業はインフォーマル・セクターに任され、そのために労使関係等が成熟しなかったというのは興味深い見方だなと思いました。

・戦後のアフリカがどのように脱植民地化していったかが書かれていましたが、同じ植民地でも西欧化が勧められた国と収奪だけされた国でその度合いが大きく異なるというのはよく分かる気がします。

第五章 転換

・基軸通貨であるドルが不安定になることで世界の各地域に様々な影響があったことが概観されていました。
アメリカ一国の通貨を基軸通貨にしていることでアメリカ経済に世界が連動してしまうことの危うさを感じました。

・石油危機から始まる世界経済の不安定化、そこから連鎖する第一次産業重視の国家の経済破綻、アジアの興隆と一部の破綻、ワシントン・コンセンサス推進による民主化など、様々なことが連鎖しているなと思いました。

第六章 破綻

・IMFのアメリカを中心とした先進国よりの政策への批判、社会主義経済の破綻、地域経済統合とグローバリズムの動き、バブル崩壊など、戦後それなりに動いていたものが壊れて現在も停滞していることや新たな仕組みに繋がっていることが、戦後経済史の不連続性と連続性の両方を表しているようで興味深かったです。