• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【小倉昌男 経営学】レポート

【小倉昌男 経営学】
小倉 昌男 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4822241564/

○この本を一言で表すと?

 「宅急便」を始めた経営者の経営哲学と経営録の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・この本を読んだことがある人たちから「この本はいい!」と聞いていたので、期待しながら読み始めましたが、その期待よりも良い本だと思いました。
小倉昌男氏がどういう状況でどういった意思決定をしていったか、その状況と当時の考えなどが書かれていて、示唆に富んでいる本だと思いました。

第1部 牛丼とマンハッタン―宅急便前史

・小倉昌男氏の父親がヤマト運輸を創設してから小倉氏が受け継いでいくまでの話が書かれていました。
父親が成功し、またその成功に縛られたために遠距離便への参入が遅くなって経営が傾いたこと、立て直した小倉昌男氏自身も大荷物を優先する方向に注力し、実は利益が上がる小ロットの荷物を無視していたおかげでまた危機に至ったことなど、失敗したことについてもその要因を含めて詳しく書かれていて興味深いなと思いました。

・何でも運ぶという路線から吉野家の牛丼を参考にサービスを絞って提供する路線に一気に切り替えていったことは、この本で自身の失敗について堂々と書いているように、失敗を認めて切り替えることのできる小倉昌男氏だからこそできたことかなと思いました。

・運送業界という業界に縛られず、様々な講演等に参加して学び、それを活かしていったという柔軟で自分を成長させるやりかたも見習いたいなと思いました。

第2部 サービスは市場を創造する―宅急便の経営学

・当時では利益が上がるとは到底考えられなかった個人宅配事業に参入するに当たり、小倉昌男氏以外の役員全員が反対したというのはその役員たちの気持ちも分かるような気がします。
海外では既に存在するビジネスで、ビジネスモデルがすでに明確であるというメリットと、郵便局の独占事業である分野で法制度上も参入障壁が考えられるというデメリットとでは、よほど自信がない限りは参入を危険視して避けるだろうなと思いました。

・サービスレベルを向上させる上で、そのための仕組み(二便制、トレーラー採用)を導入していくこともすごいと思いますが、経営戦略の実行に向けて人を動かすという意味での政策も凄いなと思いました。
「安全第一、営業第二」と「○○第一」だけを決めるだけでなく「○○第二」を決めることでただのスローガンではないようにするという工場でのアイデアを活かして、「サービスが先、利益は後」と打ち出し、実際にその通りにサービス拡充を先行して投資を行っていったことは経営戦略の立案と実行がともに備わっている良い例だと思いました。

・現場に権限を与え、分業ではなく一通りやらせるというのは、工場の多能工化をヒントにしたのかもしれないですが、サービス業としての個人運送の業態にマッチしてそれ自体も成果を上げたのだろうなと思いました。

・サービス向上と効率向上のためにウォークスルー車の開発や自動仕分け機の導入などを実施し、また新サービスの開発も積極的に行ったというのは、一つの成功に留まらずに様々な手を打っていてすごいなと思いました。

・クール宅急便のサービスを初めて聞いた時は「そんなサービスがあるんだ」と聞き流していましたが、その実現のために電気式の冷蔵庫を諦めて保冷剤をしようするという方式を採ったことは初めて知りました。

・行政が障害になっても納得がいかないときは徹底的に戦っていくところは、現在よりも当時の方が珍しく、抵抗が大きかったでしょうし、規制産業である中で戦っていったというのはすごい勇気だなと思いました。

第3部 私の経営哲学

・経営リーダー10の条件は短いながらもよくまとまっているなと思いました。「論理的思考」「(長期的に考える)戦略的思考」のようなスキル面と「明るい性格」「高い倫理観」のような人格面と「マスコミとの良い関係」「身銭を切ること」のような処世術面などが含まれていてなかなか示唆に富んでいるなと思います。

○つっこみどころ

・第2部で労働組合の協力が喜んで得られたような記述でしたが、ネットで検索すると、実際にはワーキンググループなどは形だけで、交渉の末、妥協したということでした。

・第3部で人事考課はどうせ評価者が評価を下すことは難しいのだから、同僚や部下によって「人柄」で評価してはどうかと書かれていましたが、理屈として「人柄が良い者は良い仕事をする」ということで間違ってはいないのかもしれませんが、実践すると通常の人事考課よりも「甘い人に高評価」「お互いに評価を下げないためになあなあで相互評価」「周りの関心を買うこと第一」になって破綻しそうだなと思いました。