【戦後史の正体】レポート

【戦後史の正体】
孫崎 享 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4422300512/

○この本を一言で表すと?

 米国との関係から描いた戦後史の本

○興味深かった点

・「高校生にも読める」戦後史の本を目指しただけあって平易な文章で書かれていますが、読むまで知らなかった内容が多くて学ぶ点が多かったです。

・よく政治関係で出てくる検察特捜部が昔から米国の影響を受けて行動しているという話は意外でした。

第一章 「終戦」から占領へ

・戦争が終わったのは1945年8月15日だとなんとなく受け入れていましたが、その日はポツダム宣言を受け入れることを決めて玉音放送が流れた日で、実際に戦争が終わったのは降伏調印式の9月2日なのだということを初めて知りました。

・GHQ占領時の良い面についてはいろいろ聞いたことがありますが、寄付金等の日本への流入金以上にGHQに対しての流出金の方が大きかったこと、日本の経済を破壊し、日本の元植民地以下の生活水準にしようと考えていたことは初めて知りました。

第二章 冷戦の始まり

・冷戦が始まってから米国が日本をソ連、中国に対する防波堤にしようと考えたことは知っていましたが、その前の占領政策についてよく知らなかったので、そこからの転換ぶりがすごいなと思いました。

第三章 講和条約と日米安保条約

・日米安保条約の中身を見たのは初めてですが、行政協定に内容を委任する内容になっていることを初めて知りました。

・言論統制を日本の大学教授が実施していたという話は聞いたことがありましたが、やはり検閲官だった事実はほとんどの人が明らかにしていないのだなと思いました。

・北方領土問題についての経緯をほとんど知りませんでしたが、歯舞島と色丹島が北海道の一部で、国後島と択捉島が千島列島の一部という区切りは初めて知りました。
そこを曖昧にさせて国境紛争の種を残した(中国、朝鮮とも同様)というのは連携を取らせない目的を果たすにはうまい手だなと思いました。

・原発が日本で設置される経緯も初めて知りましたが、漁船が被曝したことの世論を交わすことが理由と言うのは初めて知りました。

第四章 保守合同と安保改定

・安保闘争に参加していた学生は安保条約の中身を読んだこともなかったという話はよく聞きますが、安保闘争を財界が支援して、マスコミの動きとともに岸政権の打倒のために動いたという説は初めて知りました。

第五章 自民党と経済成長の時代

・ニクソン大統領が日本と中国の交渉を危惧して電撃的に中国を訪問したということは知っていましたが、日本が先に経済的な関係を結んだこと、それに対して金兌換性の廃止や実施しなかったものの10%課徴税を検討していたという経緯は初めて知りました。

・プラザ合意で一挙に円高になっていったことは知っていましたが、当時はそこまで円高になるとは考えられていなかったことや、安定していた日本の銀行が世界でトップ6を占めていた1990年から一気に低下していきバブル崩壊にも繋がったという話は初めて知りました。
一国の経済をコントロールする手段はいろんなところにあるのだなと思いました。

第六章 冷戦終結と米国の変容、第七章 9・11とイラク戦争後の世界

・冷戦終結後は日本が最大の仮想敵国となり、CIAが経済的なスパイとなって工作し始めたことや、最近の民主党政権にも圧力をかけていたことを初めて知りました。

○つっこみどころ

・全体的に偏りのある文章だなと思いました。
米国追従路線を一方的に批判していますが、その路線に反抗すればいいというものではなく、その時その時の状況に応じて正しい状況もあったのではと思いました。
また米国自体の振る舞いにも自国利益優先であることを批判していますが、米国側の立場から見れば外交的にコントロールすべきところをそうしているだけのようにも思えます。
元外交官であれば、著者自身の基準によるものごとの善悪ではなく、日本の国益をベースに考えるべきではないかと思いました。(他の著作を読んでないので、この本ではわかりやすく書くためにそうしているのかもしれないですが。)

・ところどころ、米国に反抗した人がその後すぐに死亡したというエピソードを入れて、「それも米国の陰謀?」と思わせるような書き方(しかし明記はいていない)をしているところが笑えました。

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