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【文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因】レポート

【文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因】
ニーアル・ファーガソン (著), 仙名紀 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4326248408/

○この本を一言で表すと?

 「西洋」対「その他」の比較史の本

○考えたこと

・1500年以降は西洋の文明が他の文明を圧倒したという「西洋至上主義ではないか?」と批判されそうなテーマで、客観的にそれを説明しようという姿勢や、ジャレド・ダイヤモンド氏の「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」などに触れつつも、同じ時代を扱っていながら別の要因をもって西洋文明の優位性を説明しようという姿勢はなかなかすごいなと思いました。

・著者のニーアル・ファーガソン氏はナシム・タレブ氏の「ブラック・スワン」において名指しで批判されながらも、「ブラック・スワン」の推薦文を書いていました(過去のできごとから未来を予測する、というところで「講釈の誤り」があること)。
今回の「文明」では「ブラック・スワン」の内容を意識しているなと思える記述がいくつかあり(認知バイアスの話、歴史学者が説明する「歴史」はあくまで不十分な証拠に基づく意見であり真実そのものではないこと、べき乗則、など)、お互いの著作から学び合っているのかなと思いました。

第1章 競争

・1500年以降の西洋では強国対強国の競争で切磋琢磨することで成長し、そうでなかった中国との差が生まれたという話は納得できるなと思いました。
日本も幕藩体制になってからは末期になるまで競争があまりなかったように思いますが、戦国時代ではまさに競争関係にあり、鉄砲の技術が一時期西洋を超えるレベルまで磨き上げられたり新しい戦略や戦術が生み出されたりしていたのもこの競争という要因が働いていたのかもしれないなと思いました。

第2章 科学

・科学に対する態度の違いで西洋とトルコとの差が大きく開いたというのはまさにそうなのだろうなと思いました。
大砲などの製造技術だけでなく、それを扱う砲術などの進歩など、技術差についてのエピソードがいくつも書かれていて面白かったです。

・元々は中国やイスラム圏から西洋が技術を学ぶ立場であったのが、逆転して圧倒的な優位を築いたということは、不動の地位などあり得ないということ、今後また逆転があるのかどうかということなどに繋がるのかなと思いました。

第3章 所有権

・イギリスが北米の植民地において所有権についてはっきり定めていたこと、スペインが南米の植民地において中央集権体制で所有権を広くは認めていなかったことでその差が大きく結果として残ったという話は、それぞれの事例を個別に知っていても比較したことがなかったので面白いなと思いました。

第4章 医学

・医学の進歩で征服された植民地も平均寿命が大幅に伸びたこと、人種の優生学により植民地の現地民が劣等種としての扱いを受けたことなど、医学の分野での功罪が書かれていて考えさせられました。

第5章 消費

・西洋のスーツ、ジーンズ、コーラなど、商品に対する欲求が社会主義国家の打破に繋がったという話は面白いなと思いました。

・「西洋の優位性を導入するために何を導入してよいかが分からないから全て真似る」という姿勢は優位性の実態そのものから理解できなかった当時の人の立場からすればそれしか方法がなかったのだろうなと思いました。

第6章 労働

・プロテスタントの信仰が労働倫理に結びついているというマックス・ヴェーバーの著作の内容を西洋の優位性と考えているのは面白いなと思いました。中国のキリスト教徒が最大1億人以上いるかもしれないという話や、暗黙的に中華人民共和国になってからもキリスト教が認められていた話は初めて知りました。

結論―ライバル同士

・1500年以降の500年間での西洋の優位が、その要因の逆転により中国などの優位につながるかもしれないという、過去の分析から未来の予測に繋げている話は面白いなと思いました。

○つっこみどころ

・副題が「西洋が覇権を取れた6つの真因」と載せていますが内容とあまり整合していないように思いました。
「はじめに」でも「結論」でも6つの要因について触れてはいますが、各章の内容が各要因について触れていると思って読むと、それを主題として書いていないようにも思えて混乱しました。
特に「第4章 医学」では医学のことにほとんどページが割かれておらず、何が言いたいのかを掴みにくかったです。

・なぜ「競争」「科学」「所有権」「医学」「消費」「労働」の6つが西洋文明の優位性の要因であるのかがほとんど説明されておらず、またそれ以外の要因をなぜ優位性の要因から外しているのかについては全く触れられておらず、これをもって西洋文明の優位性というのは無理があるのではないかと思いました。
6つ例示列挙したというのであればまだわかりますが。
それに6つの要因についても挙げられた事例以外に適用できるのかどうかがわかりませんでした(例えば、「第3章 所有権」で所有権が北米と南米の差を分けたことはわかりますが、西洋の優位性と言う意味での他の事例がほとんど書かれていませんでした)。

・著者が本当にそう書いているのか、翻訳のミスなのか分かりませんが、「事実と違うのでは?」と思える記述が散見されました。(例えばP.417で「交流電流の王様であるトマス・エジソン」と書かれていますが、エジソンは直流電流にこだわって交流電流のネガティブ・キャンペーンを張っていたはず)