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【サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃】レポート

【サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃】
ヴァイバー・クリガン=リード (著), 水谷 淳 (翻訳), 鍛原 多惠子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4864106622/

○この本を一言で表すと?

 人類の身体構造の変化の歴史と神経学や骨の構造などからわかる現在の状況からその不適合さを指摘した本

○面白かったこと・考えたこと

・邦題が「サピエンス全史」に似ていて表紙の装丁も続編のように少し似ているところがあり、しかし出版社が異なるので、若干怪しい本だなと思いつつ、テーマが面白そうなので購入した本でしたが、最初から最後までかなり面白かったです。
人類の身体の構造や骨の様子などから当時の生活を描き、農業革命や産業革命、現代生活でそれぞれどのように変わっていったか、現代の人間の構造なども研究対象として比較されていて、歴史だけでなく医学的な内容まで触れられている本でした。

・第Ⅱ部から第Ⅳ部までのまとめで、現代の人類が不適合に対してどう対応するか、身近なレベルでできることが書かれていました。
不適合であること、その結果起きることは自身でも思い当たることが多く、いろいろ勉強になりました。

<第Ⅰ部 紀元前八〇〇万年~紀元前三万年>

第1章 ヒトは「移動」で進化した

・言語能力が複雑な構造で構成されているために、適切な時期に学ばなければ習得困難であること、二足歩行で手が自由になったことはもちろんのこと、足の構造も大きく変化したこと、4,5万年前の大寒冷期に一度1万人程度まで人口が減少したこと、靴の原型が50万年前くらいにでき、後期旧石器時代に頑丈な履物が現れ、足の形が変形していること、移動することが当たり前のように行われていたことなどが述べられていました。

第2章 「人新世」以前の身体

・二足歩行には尻の殿筋が重要だったそうです。ウォルフの法則「骨を使わなければ骨密度が減る」と、同じ様に軟組織について述べたデイヴィスの法則が出てきました。
この本全体を通してこの2つの法則がよく出てきたので重要な考え方のようです。

・同じホモ・サピエンスでも初期から現代にかけて骨密度がどんどん減っているようで、それが生活習慣に関わっていることが述べられていました。

<第Ⅱ部 紀元前三万年~西暦一七〇〇年>

・農業が人類の顎、歯の使い方を大きく変え、家畜経由の感染症が大きく影響を与えるようになり、古代ギリシャの奴隷制により働かないで生きることができる者が運動を必要としたり、長寿の島サルデーニャ島では家と職場が離れていて毎日10キロ歩いていたり、現代の生活に至る食生活や習慣が人体に大きく影響を与えていることが書かれていました。

第3章 人類は「定住」に適応していない?

・現代の人類の顎や歯は、同じホモ・サピエンスでも狩猟がメインだった人類の時代と比べると顎の大きさが大きく異なっているそうです。

・どのように顎を使用していたかによって顎の成長が変わることは他の動物でも加工食品と生肉をそれぞれ与えられ続けたケースで有意に異なっていたことから、遺伝ではなく環境でこのようになっていることがわかっているそうです。

・農業が始まり、定住生活となってからは炭水化物の摂取割合が大幅に増加し、口内の細菌も変化していき、顎と歯の不整合などもあって、狩猟生活ではほとんどなかった虫歯や不正咬合などが大幅に増加したそうです。

・食事をすると口内環境が酸性に傾き、菌の活動が活発になるそうですが、三食の食事、おやつなどで食間の時間が短縮されると口内が菌に攻撃される時間が大幅に伸び、現代の人類は口内環境に関するヘルスケアに多大なコストを支払うことになったそうです。

第4章 家畜は何を運んできたのか?

・定住生活で家畜を飼うようになってから、様々な疾患にかかる割合が増大し、マラリアや結核など、潜在的に保有していても発現しなかった疾患が死因になることが増えたようです。

第5章 古代ギリシャ・ローマ人の警告

・有名な長寿の島サルデーニャ島では、健康で長寿な人が多いそうですが、とにかく毎日長距離を歩く人が多いそうです。
食事も穀物中心ではないそうです。

・古代ギリシャで都市国家が発展した時代、金持ちが働かなくてよくなり、労働とは別に運動をする習慣が生まれたそうです。

<第Ⅲ部 西暦一七〇〇年~西暦一九一〇年>

・椅子に座ること、同じ姿勢を取り続けることが、産業革命以降多くなり、腰に与える影響が大きくなったそうです。
学校教育で椅子に座らせることが基本となり、習慣として根付いていったそうです。

・ロンドンでは森林が11世紀半ばころが伐採が進み、木材の確保が難しくなって石炭に頼るようになり、大気汚染が進んで呼吸器系の疾患が大幅に増加したそうです。

・産業革命の社会では体つきを見ればその人の属する身分がわかるほどに差が出ていたそうです。

第6章 腰が痛い!

・座ることが腰痛につながることは間違いなくても、ずっと立っていればいいのかといえばそうではなく、産業革命の時代には同じ姿勢を長時間強制された人たちが脊椎に関する様々な症状を訴えるようになったそうです。

・労働時間がかつてないほど伸び続け、誤った人間工学による改善が行われたことも身体に悪影響を与えていたそうです。

・近視も近代的な病気の一つだそうで、産業革命以前はほとんどこの症状が見られず、運動不足・長時間労働等が原因と見られているそうです。

第7章 大気汚染

・イギリスで木材が不足するようになり、瀝青炭を始めとする石炭が使用されると大気汚染が深刻化していき、特に産業革命以降は呼吸器系の疾患にかかる人が増大していったそうです。

・19世紀になってから花粉症になる人も増大し、人間の免疫メカニズムが適合できなくなっていったことが影響しているそうです。

<第Ⅳ部 西暦一九一〇年~現在>

・デスクワークが当たり前になって、椅子に座り続ける習慣ができてから、腰痛を始めとする現代の病が広く蔓延し、それ以外の様々な疾患にかかりやすくなったそうです。

・靴を履くようになってから、靴に足が合わせられるようになり、足の本来の可動が妨げられ、これも様々な疾患の原因になっているそうです。

・貧困度と寿命の短さの相関関係が示され、野菜からミネラルが減少し、カロリー摂取に対してカロリー消費が追い付いていないことから肥満や2型糖尿病が人類の典型的な病になっていることは、人類と現代の食事のアンマッチの結果でもあるそうです。

第8章 身体は現代の食生活に追いついていない

・現代の人類の90%以上は簡単に食糧を手に入れることができ、カロリーを消費する機会が減少していて、腸内の微生物叢の環境も変化していること、死因のほとんどが肥満や摂取カロリーが多過ぎることが原因の多くを占めるようになっていること、野菜も生産量は上がっているが土地から吸収するミネラルは限られているためにカロリー当たりのミネラルが減少を続けていることなど、食生活の習慣だけでなく環境そのものも変わっているようです。

<第Ⅴ部 未来>

第9章 超人類への扉を開ける「手」

・スマホ時代にRSI(反復運動過多損傷)が大幅に増加していること、人間の手は原始的で何かに特化していないことが特徴だが、今後手を使わないことが増えていく中でどうなっていくのか、という今後の方向性について述べられていました。

エピローグ

・現代の平均的な生活を送るアベレージ・ジョーを想定し、その将来は、壮年期には何かの病気にかかり、腰痛は確実、心臓血管疾患で早死にする可能性が高いことを示し、現代の健康な人間でも慢性的な炎症反応が持続していることを挙げ、現代の人類が現代生活に不適合であること、そこから脱することを考えることができることを述べていました。

○つっこみどころ

・ところどころイギリスジョークらしきものが出てきますが、おもしろそうなのにはっきりとは理解できず悔しい思いをしました。
専門用語に注釈を入れるならここにも注釈がほしかったです。

・1万人から73億人への増加を73万「パーセント」急増した、と表記していたり、若干あやしい翻訳がみられました。