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【企業家たちの幕末維新】レポート

【企業家たちの幕末維新】
宮本又郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4840149240/

○この本を一言で表すと?

 幕末・明治の東西の企業家たちの活動が分類別に書かれた本

○面白かったこと・考えたこと

・幕末・明治における商人がどのようにして成り上がって生き抜いたのかが書かれていて、歴史の教科書や歴史小説ではあまり触れられない側面を知ることができました。

第1章 激動の日々のなかで

・幕末から明治初期の50年間でいろいろな企業家が勃興・没落していったことがデータで示されていて、傾向によって分類されているのは面白いなと思いました。

第2章 江戸の遺産と明治の挑戦

・江戸時代を「近世」として前近代の位置づけに置くのではなく、近代初期とすることが主流になっていること、江戸時代に起こった人口減少が貧困によるものではなく、都市化による疫病の伝染と少子化が原因であることなどは昔歴史の授業で聞いたこととかなり違うなと思いました。

・前に江戸から明治になるにあたって断絶があり、江戸時代に築いたものが受け継がれなかったという話を聞いて違和感があったことがありましたが、庶民の識字率が向上していたこと、寺子屋が幕末には全国に11,000校あったことなど、庶民にも知識が蓄積され、新しいことへの受け皿があったことが書かれていて腑に落ちました。

・幕末の開国以降に起きた環境変化とその混乱などを商業の視点から書かれていて、国家の独立という視点から見る場合とまた違った視点でその大変さが伝わってきました。

第3章 老舗を生き残らせた者たち

・江戸時代の老舗・豪商が変化についていくことができずに潰れていく中で、外部の者を活用して生き残った三井、住友の話は光っているなと思いました。
著者が生き残った老舗の共通点として①事業の再編、②組織と人材の刷新、③家政の改革を挙げていますが、老舗が受け継ぎ、老舗を繁栄させてきた金科玉条である家政のあり方を改革するのは特に外部の者しかできなかったのかなと思いました。

第4章 明治のベンチャー企業家列伝

・三菱の岩崎弥太郎は司馬遼太郎の小説などでよく出てくるので知っていましたが、それ以外の三菱を「組織の三菱」に変えた荘田平五郎、安田財閥で金融を担当した安田善次郎と事業を担当した浅野総一郎、早い時期から海外進出していた現代に残る建設会社やホテル会社を立ち上げた大倉財閥の大倉喜八郎、分かれた側が日産に発展した藤田組の藤田伝三郎、大阪の渋沢と呼ばれて渋沢栄一と同じような多事業展開を関西で行っていた松本重太郎、ベンチャー・キャピタリストに徹して小林一三(阪急電鉄)や豊田佐吉(豊田織機)や森永太一郎(森永製菓)などの創業を助けた岩下清周など、ほとんど知らなかった当時の企業家の活躍を知ることができてよかったです。

・何となく悪徳のイメージがある「政商」について、国家が商業中心に転換していく過程で官と民を繋ぐ役目、所得の再分配を担当する役目として政府と繋がりのある「政商」を時代が必要としていたというのはなるほどと思いました。

第5章 技術者出身の企業家たち

・イギリスで紡績業のあり方を全般的に学び、生産工程から物流などについても学んで紡績業の理論と実際を学んだ山辺丈夫が、大阪の紡績業を革新し、現代の東洋紡に繋がる会社にしたにも関わらず大阪の気風で技術者は使用人扱いとして不遇の立場に置かれながらもついに実質的な経営者になっていったのは渋沢栄一の支援があったとはいえすごいなと思いました。

・現代のユニチカに繋がる会社を任された菊池恭三が技術者として複数の会社を競合しないように気を配りながら経営し、統合した後で銀行家としても活躍していたというのはすごい話だなと思いました。

第6章 社会的企業家たちのミッション

・下着などを取り扱っているグンゼが元は「郡是」だったこと、その語源は「郡の急務とすべき事業」という意味だったこと、元は波多野鶴吉が地元の何鹿郡の養蚕業者を助けるために活動していたことが発端になっていることなど、公共の利益を求めた上で立ち上がった事業だということを初めて知り、すごいなと思いました。

第7章 近代をつくった財界リーダー

・渋沢栄一のことは「論語と算盤」などで知っていましたが、財界リーダーとして卑しいとされていた商業を国家の大事という位置づけに啓発していったこと、自身ですべて出資するのではなく、出資者を募って利害関係者を増やすことで多くの事業を立ち上げていったという現代的な企業家でもあったことなどが書かれていて、日本を大きく変えた人物だったのだなと思いました。

・大阪商工会議所の初代会頭として名前は知っていた五代友厚が、元は薩摩藩で島津斉彬のブレーンだったこと、長崎海軍伝習所で坂本龍馬や勝海舟や木戸孝義などと交流があったこと、出世より大阪を選び、江戸時代の興隆から一転没落に向かっていた大阪を発展させることに尽くした人物だったことなど、この人物がいなければ今の大阪はどうなっていたのかと思えるほどの人だったと知って驚きました。

・渋沢栄一も五代友厚もビジネスマンとしてだけではなく、社会のため・国家のためにという意識で動く非営利的な、現代で言うなら非合理的とも言える面を持っていて日本を変えていった人物として、「この人がいなければ今の日本がなかった」と言えるのかなと感動しました。

○つっこみどころ

・ところどころにあるテキトーな漫画風の人物画はなぜ写真にしなかったのか疑問に思いました。