• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質】レポート

【ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質】
ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478001251/

【ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質】
ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478008884/

○この本を一言で表すと?

 一般的に言われている「リスク管理」を否定した不確実性のエッセイ

○この本を読んで興味深かった点

・歴史、哲学、心理学、経済学、数学などのさまざまな分野に通じた著者がそれぞれの世界に踏み込んで持論を主張しているところはすごいなと思いました。

・例え話や実例を多用していて(それ自体が難しいケースもありますが)難しい話を理解しやすい形で書かれているなと思いました。

・全体を通して著者が主張する「黒い白鳥」のこととそれが受け入れられない理由がよく分かりました。

・「月並みの国」と「果ての国」の分類が分かりやすいなと思いました。

・ノーベル賞受賞者や著名な人のほとんどをボロクソに否定しているところはある意味爽快でした。

・「黒い白鳥」を見るのに不自由だと現れる5つの事象「追認の誤り」「講釈の誤り」「不確実性否認」「物言わぬ証拠の歪み」「オタクの不確実性」の話はどれもなるほどと思いました。

・裏付けばかり探してしまう「追認バイアス」による「追認の誤り」は、いつ、どの立場になってもついて回りそうです。意識してそうしているならまだマシですが、無意識に追認していれば自分でも気づかないのだろうなと思います。

・ものごとの原因の一部を説明する「講釈」でそれが全てだと納得してしまう「講釈の誤り」はかなりの影響力を持っていて、自分自身もいろいろな点で囚われているなと思いました。情報の次元を落としたがるという人間の性質によるものだということから、避けるにはいつもこの可能性を自覚していなければならないなと思います。システム1(情緒的思考)とシステム2(演繹的思考)で人はシステム2を使っているつもりでもシステム1を使っているという話も振り返ってみれば確かにそうかもしれないなと思いました。

・「不確実性否認」が、一度に報われるより少しずつ何度も報われる方が好ましいという人間の性質に基づいているという考え方はなるほどなと思いました。

・証拠がみつからないことと証拠がないことは別の話なのに、見つかった証拠だけで全てを判断してしまう「物言わぬ証拠の歪み」の影響力も大きいなと思いました。大成功したギャンブラーの背後に何千、何万人という敗北したギャンブラーがいること、勝った人だけが続けるからこその「ビギナーズ・ラック」、数字の文書しか見つからなかったから商業しかしていない民族とみなされたフェニキア人など、どれも判断する際にみつかったことや目立つことだけを取り上げて判断する誤りで、それをなかなか避けられないのだなと思いました。

・自分の狭い枠の中でしか考えられない「オタクの不確実性」は、専門化が進むにつれて顕在化しそうだなと思いました。日本人はこの誤りがよく出そうな民族かもしれないなと思いました。

・歴史学の否定の話は面白いなと思いました。現在から過去にさかのぼることがいかに困難かを「水たまりから元の氷の形(氷以外かもしれない)を予測する困難さ」で例示されていて、膨大な道筋がある中で一つの真実を見極めるのはほぼ不可能だということがよく分かりました。一つ新しい証拠が見つかるたびに歴史が「変わる」のも、歴史の本で述べていることが全て「仮説」だと考えると当たり前のことだなと思いました。

・第2部の予測に関する考え方は面白いなと思いました。未来予測の困難さを数値的に証明したり、論理的に証明したり(未来が予測できればそれに合わせて未来が変わる・・・という矛盾)、過去にされた未来予測の実績があまり表に出なかったりすることなどはなるほどなと思いました。

・第3部の理論的な話は難しくてついていけないところもありましたが、黒い白鳥について数字でも説明可能だというのは面白いなと思いました。聖書のマタイ伝で「富む者はさらに富み、貧しいものはさらに貧しくなる」と書かれていることから、格差の拡大が「マタイ効果」と呼ばれているのは初めて知りましたが面白いなと思いました。

・短い第4部で良い方向に働く黒い白鳥には積極的に働きかけ、悪い方向に働く黒い白鳥には保守的に守るという話は著者が投資家として成功している実践した話ということなので、今後判断基準に加えて考えていきたいと思います。

○つっこみどころ

・年代、専門、背景等がよく分からない人物が説明なく登場しているので、人物の注釈がほしかったです。

・各章の主題が本文中にさらっと書かれたり書かれていなかったりするので、何について語っているのかを何度も見失い、目次や総論の章を何度も見返すことになりました。各章の主題をわかりやすく明示してほしかったです。

・「天才バカボン」という言葉が何度も出てきましたが、これは翻訳者が勝手に使っているんでしょうか?(著者が知っていて使っていたら驚きです)