【あんぽん 孫正義伝】レポート

【あんぽん 孫正義伝】
佐野 眞一 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4093882312/

○この本をひと言でまとめると?

 「孫正義伝」というより「孫家三代伝」といった内容の孫正義氏のルーツを探った本

○興味深かった点、考えた点

・孫正義氏よりも父親の安本三憲氏や父方の祖母の李元照氏の生き様が凄いなと思いました。
日本で在日韓国人の人たちが生きていくことの苦労、それ以上に辛かった韓国の生活などが生々しく書かれていて、そこから這い上がってきた人たちの凄みを感じました。

・表紙の次にある「孫家の家系図」でガンホー・オンラインの創業者が孫正義氏の弟の孫泰蔵氏だというのは初めて知りました。
何かしらの支援があったにしても、もの凄い家系だなと思いました。

第一章 孫家三代海峡物語

・在日韓国人の強かな生活ぶり(密造酒を豚の臭さで誤魔化す、など)やパチンコや消費者金融で何とか成り上がっていった人たち、一度韓国に戻り、よりひどい生活になって再度密航で日本に来たり、生きていくだけで大変という状況がとても伝わってきました。

第二章 久留米から米西海岸への「青春疾走」

・孫正義氏の小学校六年生の時に作った詩はすごく大人びた情感を帯びたものだなと思いました。

・森田塾という進学塾に入るためにコネを活用した話、高校一年生で進学塾を立ち上げようとした話、教師の道をあきらめてアメリカの大学へ行った話、アメリカで自動翻訳機を開発して事業化した話、本来の苗字である「孫」で帰化しようとして奥さんの改姓を経て前例を作った話など、若い頃から機転を利かせた、言い換えれば機転が必要だった人生というのがどんな状況でもへこたれない人間を作り上げたのかなと思いました。

第三章 在日アンダーグラウンド

・孫正義氏の祖父がグータラで、祖母が事業を切り盛りしたり子供を育てたりという環境、その中で育った父親の三憲氏の試し飲みによる密造酒販売、コーヒー無料を思いついた小学校三、四年生ほどの孫正義氏の話など、三代続いての苦労と才覚はすごいなと思いました。
兄弟で相争う文字通りの骨肉の争いも、その苦労に加担していそうだなと思いました。

第四章 ソフトバンクの書かれざる一章

・孫正義氏が病気で入院して代わりに社長になった大森氏が会社を乗っ取ろうとした、というエピソードは前に何かで読みましたが、どういった背景でその大森氏が社長になり、そして解任されたのかがよくわかりました。
著者が大森氏に解任後にインタビューした上で「元エリートサラリーマンらしく、・・・当たり前すぎて面白くも何ともなかった。」とぶった切っているのには笑いました。

・家族に会社を継がせるつもりがない孫正義氏の孫家の家族仲の悪さとソフトバンクのCMとの対比は面白いぐらいに両極端で際立っているなと思いました。

第五章 「脱原発」のルーツを追って

・孫正義氏の震災時の寄付について情報が錯そうしていて、私は「100億円寄付する」という話は自然エネルギーの財団の設立に充てていたものだと思っていましたが、10億円を別途にそちらに充てていて、100億円は本当に寄付だったことに驚きました。

・孫正義氏の母方の叔父が探鉱事故で亡くなっていたこと、その探鉱事故の対処と原発事故の対処の共通点など、なかなか考えさせられるテーマだなと思いました。

第六章 地の底が育てた李家の「血と骨」

・孫正義氏の父親と母親の不仲、母方の家系の苦労(叔父が探鉱事故で亡くなって祖母が酒を飲むようになって病死)など、かなりの苦労の積み重ねの上に今の孫正義氏がいるというのは、成功した人もいろいろ大変な因果関係を背負っているのだなと思いました。

第七章 この男から目が離せない

・三憲氏と著者のかなり奔放なやりとりが面白かったです。

○つっこみどころ

・孫正義氏自身より孫正義氏以外の孫家の人たちの話がほとんどで、タイトルから孫正義氏自身の来歴を追った本だと思って購入した人は騙されたと思うかもしれないなと思いました。

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