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【マッカーサー―フィリピン統治から日本占領へ】レポート

【マッカーサー―フィリピン統治から日本占領へ】
増田 弘 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412101992X/

○この本を一言で表すと?

 マッカーサーの生い立ちから終生まで、特にフィリピン時代からをクローズアップした伝記の本

○面白かったこと・考えたこと

・太平洋戦争で陸軍と海軍がそれぞれ主張した通りに日本を攻めていて、その陸軍を率いていたのがマッカーサー、というざっくりとした知識とGHQのトップとして日本占領政策に関わっていた人という強い印象を持っていましたが、その経歴や経緯などを始めて詳しく知ることができました。
ところどころ極端なところがあるなと思いましたが、どういった人物で、どのような部下がいて、どのようなことを行っていったのかよく分かりました。

・日本側の視点から書かれた太平洋戦争の本を何冊か読みましたが、アメリカ側の視点から書かれた太平洋戦争の本は初めて読みました。
どの視点から見るかによって全然違うなと思いました。

・マッカーサーの人物像も、女性関係が激しく、下品で大雑把、というような典型的な軍人の印象を持っていましたが、その印象がかなり実際と異なっていたことに気付かされました。

第一章 フィリピンとの邂逅

・マッカーサーが60歳を過ぎてから太平洋戦争に突入していき、それまでは父親の後についてフィリピンに勤務したり、エリート街道を歩いていたり、フィリピンの軍事顧問としてアメリカ本国から煙たがられるような立場になってから、太平洋戦争をきっかけにまた脚光を浴び始めたというのは、なかなかドラマチックな人生だなと思いました。

第二章 バターンボーイズの誕生

・マッカーサーに「バターンボーイズ」と呼ばれる腹心がいたこと自体初めて知りましたが、それぞれが高い能力を持ってマッカーサーの幕僚として日本占領時まで活躍していたというのは初めて知りました。
それぞれの経歴がしっかり説明されていて興味深かったです。

第三章 日米開戦前夜からマニラ脱出まで

・アメリカ側が挑発することで日本を戦争に参加させたという印象が強かったですが、その時期についてはアメリカ側もそこまで予測できておらず、真珠湾攻撃はアメリカにとってもかなり驚かされた出来事で、その後のフィリピン攻撃も不意打ちに近く、アメリカ側ではかなり混乱していたことがよく分かりました。

・マッカーサーが事前に建てられた計画に反対して修正させ、その修正や不十分な実行により被害が大きくなったというのは非常時の意思決定の難しさとその影響の大きさを感じました。

第四章 マニラ陥落と第一次バターン攻防戦

・アメリカの戦争全体の戦略の中でフィリピンに支援を送ることが却下され、その中でマッカーサーとその幕僚が宣伝する中でアメリカ本国側もその支持に回らざるを得なかったというのは、全体戦略と個別戦略の実行の乖離や、その隙間に思わぬ行動や効果が生まれる事例だなと思いました。

・日本のアメリカに対する情報不足から一部の戦力のみでバターン半島を攻め、アメリカ側がかなり善戦して日本側に被害が与えたというのは、その後も現れる日本の情報軽視の姿勢の弊害だなと思いました。

第五章 コレヒドール島脱出計画

・米軍にマニラから連れ出されたフィリピン大統領のケソンの脱出、マッカーサー自身の脱出の話が決まった経緯、その承諾させられるプロセスなどはかなり入り組んでいて興味深かったです。
戦争の中で英雄として象徴的な存在となることでその英雄マッカーサーを脱出させることが全体戦略の中で優先順位が高くなったということは、純粋な兵数などの戦力以外のことが戦争遂行に関して必要だということを示しているなと思いました。
アメリカは敵だけでなく国内の世論を相手にして戦争するという話を聞いたことがありますが、まさにその要素が強く表れているなと思いました。

第六章 マッカーサー一行のコレヒドール島脱出

・マッカーサーがバターンボーイズも共に脱出させることにしたことはそれ以降の動きにかなり大きな影響を与えているなと思いました。

・潜水艦ではなくPTボートで脱出する計画を考え、遂行するプロセスは、自分が良いと思った計画を実行するその実行力が表れているなと思いました。

・不利な戦況の中でどのように脱出したか、複数のPTボートで脱出してはぐれて合流する流れが細かく書かれていて臨場感がありました。

第七章 第二次バターン攻防戦とバターン“死の行進”

・第一次バターンで善戦したアメリカ側で、司令官等が脱出した後、本気で攻めてくる日本軍に攻められるというのはかなり絶望的な状況だなと思いました。
その中で、アメリカ本国やマッカーサーが降伏を許さなかったというのは全体戦略と現地状況の優先順位の違いが大きく表れているなと思いました。

・降伏が許され、アメリカが総崩れになる前に降伏したこと、日本には降伏という選択肢自体がなく、その上まだ完全に負けていないのに降伏することが予測できず、受け入れの準備をする時間がなく、有名なデスマーチ「バターン死の行進」に繋がったということは、アメリカ軍だけでなく日本軍にとっても不幸なことだったのだろうなと思いました。
戦闘に勝つことだけが常に最優先されるわけでなく、どのように持っていくかの優先順位がより高くなることがある、その事例になっているなと思いました。

第八章 オーストラリアからフィリピンへ

・オーストラリアに脱出したマッカーサーが現地の軍がまだほとんど用意されていなかったことに憤ったことは、ただでさえ敗北して逃げ出した身としてはストレスが溜まっていたのだろうなと思いました。

・マッカーサーの幕僚が情報戦の大切さを理解していて日本軍の動きを収集していたことは、かなりの強みになっただろうなと思いました。
どの軍がどの地点に戦力を集中したかなどの情報は、一度動き出したらそう簡単には戻れない大軍同士の戦争ではかなり重要だと思います。

・海軍側の意見との対立、妥協せずに島を跳び石状に占領していってフィリピンに至る戦略を海軍側とは別口で実施したというのは、まだ勝敗が見えていない状態での戦力分散を認めさせたという意味ですごい意見の通し方だなと思いました。
フィリピンに至ることが戦略上かなり重要だということも分かりますが、それ以外の戦略上重要な地点との差異より、マッカーサー自身の意志がかなり反映されたように思いました。

第九章 フィリピンから日本へ

・フィリピンを占領してから、バターンボーイズ筆頭のサザーランドが女性関係でマッカーサーの怒りを受け、失脚していくことと、バターンボーイズ以外の元弁護士のホイットニーが台頭してくることなど、マッカーサーとバターンボーイズのそれまでの関係が変わっていくことが印象的でした。

・サザーランドの件だけでなく、日本到着時に芸者を用意されそうになってマッカーサーが嫌がるだろうから先に日本に到着した者が拒否したという話は何となく女好きの印象があったマッカーサーがそういった面では潔癖だったと知って意外でした。

・原爆についてかなり秘匿されていたことは知っていましたが、マッカーサーにまで秘密にされていたことは初めて知りました。

第一〇章 日本の非軍事化・民主化

・日本が降伏時にまだかなりの戦力を持っていたことは、それなりに残っていたのだろうとは考えていましたが、国内外で700万人以上、国内だけでも250万人以上の兵力を有していたというのは驚きでした。
天皇の扱いを変えて死刑の対象にしていたらゲリラ戦などが激しく行われていたことは間違いなかったのだろうなと思いました。

・バターンボーイズの衛生担当のサムスが日本人に栄養が足りないことを重視して、急いで食料の準備をしたことで、特に子供向けのスキンミルクの確保で1,800万人以上が救われたというのはかなり重要なことではなかったかと思いました。
サムスの活動とそれを承認したマッカーサーがいなければ準備不足で多くの人を死なせた「バターン死の行進」どころではないくらいに日本で人が死んでいたのかもしれないなと思いました。

第一一章 ワシントンの対日政策転換とマッカーサーの抵抗

・対日政策が占領当初から変わっていったことは知っていましたが、マッカーサーがその変更に対して抵抗し、かなり粘ったという経緯は興味深かったです。

・GHQ内でも対立があったということは知っていましたが、その状況が詳しく書かれていて当時の状況をよく知ることができました。

第一二章 朝鮮戦争とマッカーサー解任

・朝鮮戦争が始まり、さらに日本の状況が変わり、またマッカーサーもその読みの外し方やミスで解任され、その華やかな活動を終えることになることなど、展開が興味深かったです。
マッカーサーが中国共産軍の参戦を読んでいたら今の北朝鮮は存在していなかったのかなと思いました。

終章

・マッカーサーという人物について総括されていました。その偉大さの資質として「勇気」「決断」「忠誠」「威望」「知性」「統率」「信念」があり、またその人間性として「内向的で非社交的」「細やかな気配りをするなど神経質」「自己への批判・非難に対しては徹底的に反抗し、時に責任転嫁する」「独断専行」「突如豹変する」「自制的で禁欲的」「健康的で規則正しい生活を送った」と書かれていました。
一部は以前から持っていた印象と一致することもありましたが、考えたこともなかった人物像の面もあり、総じてすごい人物だったのだなと思いました。