【市民政府論】
ジョン ロック (著), 角田 安正 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334752349/
○この本を一言で表すと?
自由主義者で民主主義者のジョン・ロックの意見がまとめられた本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・中学校の社会では「市民政府二論」と出ていた気がして、本を購入してから疑問に思っていましたが、訳者あとがきで、二篇あって第一篇はロバート・フィルマーの「父権論」に対する反論に終始しているので第二篇のみを訳出したと書かれていて納得できました。
ルソーの社会契約論では序盤はグロティウスへの反論に終始していましたが、当時のこういう系統の本の定石かなと思いました。
・これからどんな内容について述べるのか、ということを第1章で書いているのは、ルソーの社会契約論でもそうでしたが、当時の様式かなと思いました。
どういうつもりで書いているのかを念頭に置いて読んだ方が意味を読み取りやすいということかもしれませんが。
・巻末の翻訳者の解説がかなり分かりやすくてよかったです。
「市民政府二論」の後にモンテスキューの「法の精神」などが続き、リバタリアニズムにも繋がっているというのは、自由についての定義にかなりの文章を割いていることから納得できるような気がしました。
・自身の生命・自由・財産を守る権利、という人権を誰もが有していることを、清教徒革命と名誉革命の間の時期に書いていたというのはすごい話だなと思いました。
ロックは自由主義の創始者と言われているそうですが、以降の様々な人の考えの土台になっていたのかと思うと、一人の人物が世に与えた影響に驚かされるなと思いました。
・ルソーの社会契約論で述べられている社会契約に相当する考え自体は既にロックがこの本で書いていたのだなと思いました。
自然状態にある人が、そのデメリットを避けたいがために国家を設立し、権利を譲渡する下りはほぼ変わっていないように思えました。
立法権と執行権を分けて考え、立法権が人民にあるという考えも同じだなと思いました。
・子供の時期を自由であるデメリットから親に守られることと自由を一部制限されることが、その子供にとって重要であり、また子供が親の支配から離れるのは子供の能力・意志による、ということでそれ以外の意思能力を喪失している人とともに挙げていて、かつ必要がなければ「父権論」のように親子間の支配が絶対とはしない考えは柔軟で、ある程度納得できる考え方だなと思いました。
・国家同士の戦争などによって隷属状態等になることも、戦争中であることも、まとめて「戦争状態」として、いつでも自由を求めて戦うこと、少なくとも闘う可能性があることが述べられていて、まとめかたが面白いなと思いました。
○つっこみどころ
・「人民」と「臣民」という言葉が使い分けられていましたが、君主の統治下にないケースでも「臣民」という言葉を使っているケースが何度かありました。
「人民(People)」「臣民(Subject)」で原文がそうなっているのか(著者の誤りなのか)、翻訳者の誤りなのか知りたいなと思いました。
・所々で、当然の如く共通認識としてある「自然法」を根拠にしたところがあり、ジョン・ロックの考えを証明する上で、あまり根拠になっていないような気もしました。
・国家間の戦争を起こす側、攻める側に立った考え方に触れられていないなと思いました。
戦争を推奨するわけではないですが、攻められて抵抗するケースしか考えられていないのは片手落ちのように思えました。
ルソーの社会契約論も同様だったので、前提となる当然の理屈があるのかもしれませんが。