• 様々な本、様々な資格の話が盛りだくさん(の予定)

【平成の政治】レポート

【平成の政治】
御厨 貴 (著), 芹川 洋一 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532176492/

○この本を一言で表すと?

 政治学者・政治記者の2名が外国人研究者、国政経験者、地方自治体トップの3名をゲストとした県談集の本

○面白かったこと・考えたこと

・東大名誉教授、日経新聞の論説委員(元政治記者)の2名が、40年以上日本政治を研究している外国人研究者、政策研究の教授から内閣府に出向して内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)にまでなった学者、大学教授から県知事になった政治家の3名を指名して、各分野1名ずつゲストとして3名で語り合っている県談集でした。
重鎮な方々がざっくばらんにジョークまで交えて、昔の自分の発言・意見が誤っていたことを認めたりしているのが面白かったです。

第Ⅰ部 政治改革の功罪

・平成30年間の政治の動き、政権の動きが概観され、目立ったトピックに一通り触れられていました。

・平成になる前の総理経験者はみな勉強家だったこと、平成以降は勉強家に見せかける者はいても勉強家がいなかった話、東大名誉教授が小選挙区制度を当時推していて、日本に小選挙区制度は合っていなかったと認める話(中選挙区制だと分野ごとに分かれて専門の議員がいたが、小選挙区制だと選挙区で当選するのが1名なので全分野フォローしないといけなくなり、専門が薄くなる)、族議員がいなくなって若手議員を教育するシステムが消えた話、橋本首相を当時過小評価していて振り返ると日本に大きな影響を与えていたと認める話、民主党の政治主導の失敗、小沢一郎の影響と責任の話、意外だった管首相時代の東電に乗り込んだことを評価する話(この動きで東電従業員が逃げられなくなり、影響が関東全域に広がらなくて済んだそうです)、民主党が言うだけ言ってすっきりするだけでまとめない学級会民主主義であるとする話、小沢一郎が創造的破壊ではなく破壊的破壊を繰り返した話、海外から見ると平成の日本は経済大国から経済がダメになった国という見方になった話、海外では小泉首相、安倍首相がそれぞれ別の意味で印象が大きいという話、官邸をチェックする仕組みがなく、既得権益を崩せない日本の政治の話などが語られていました。

第Ⅱ部 党主導から官邸主導へ

・政策研究が専門で政策決定に携わった元政治家をゲストに、平成の政策決定過程の動きについて語られていました。

・平成前半は政治家だけでなく官僚のスキャンダルも明るみに出る官僚受難の時代だった話、政策決定では首相より大蔵省の方が強かった時代が続いて小泉首相の代から政策決定プロセスが本格的に変わって首相主導が始まった話、「一任」という議論がまとまらないときに反対者が席を立ってその内にまとめる仕組み、足して2で割る徹底、「その上で」の後の政策は実現しない官庁文学などの話、今の内閣人事局で官僚人事を決定するようになって、公安情報を知り尽くした警察官僚出身の内閣人事局長が官僚の人事制度を握っていて、チェックが効いていない話、小泉首相から経済政策のタブーが急に一切なくなった話、小選挙区制度が始まって政治家が自分のキャリアパスが決められず自分で決めるしかなくなった話、官僚が忖度するのは当たり前で、外の目がほとんど効かないためにデータ改ざんなどが行われている話、官僚になりたい人が減り、官僚の歪んだプライドが仕事に基づいていない話、内閣府や内閣官房に「官邸官僚」が集まり、実務を知らない人たちが政策決定に絡む体制になってしまっている話、やらなければならないことは多いが、選挙が多過ぎて痛みを伴う改革ができない話、政策課題にはパッケージで対応する必要があり、「業法」で対応できる時代は過ぎ去っていて、政策決定プロセスを見直す時期に来ている話などが語られていました。

第Ⅲ部 政治学と地方の視点から

・政治学を勉強して活用したから無党派で出馬して熊本県知事選に勝てた、というのははっきりしているなと思いました。

・選挙者は政策などの全ての情報を知っているわけではなく、とっかかりとなる「キュー」を基に判断する、というのは結構当たっているような気もしました。

・国会議員より県会議員等の地方議員の方が力を持っている、というのは興味深いなと思いました。地方創生の話で、くまモンが知的財産として県の重要な資産になっているという話は面白いなと思いました。

・熊本地震からの復旧の話で、役所がやりやすいように「負担ゼロ」ではなく「負担最小化」を官房長官に伝えて話を通りやすくしたこと、対策委員会をすぐに組織して創造的復興を目指したこと、政府は「焼け太りは認められない」と原状復旧以上の復興を認めない傾向があることなど、利害関係者の考え方・イデオロギーなどを把握して動けるのは政治家として重要な資質なのかなと思いました。

終章 平成から考える、その先の日本

・Yahoo!ニュースなどでは失言が多いことでよく出てくる自民党の二階幹事長が有用な人物として挙げられているのはすごく意外に思いました。

・シルバーデモクラシー、老人が政治を決める民主主義、というのは日本をかなり的確に表現しているなと思いました。憲法改正に反対するシルバー新党というジョークはかなり面白かったです。

○つっこみどころ

・2名のホストが1名のゲストを読んで語り合う、という形式だからか、ゲストを全肯定することが前提になっていて、もう一歩踏み込んでゲストの研究、政策の誤りや失敗について踏み込んでいたら面白かったのになと思いました。