【タテ社会の人間関係】レポート

【タテ社会の人間関係】
中根 千枝 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4061155059/

○序章

・この本のコンセプトはそれまでの日本人論の西洋的アプローチによる捉え方や特色論的捉え方を脱し、社会人類学的アプローチで人間関係の基本的なあり方を捉えること。

○「場」による集団の特性

・「資格」と「場」の定義
 資格・・・先天的・後天的や個人的・社会的に限らず様々な属性をこの本では「資格」のカテゴリーに含める。
 場・・・一定の地域、所属機関のように、一定の枠によって一定の個人が集団を構成している場合を指す。
 ※「ゲマルシャフト(本質的な属性による社会)」「ゲゼルシャフト(利益により結びつく社会)」というような定義とは異なる

・日本は資格より場によって社会を構成している。

・場の特徴は「成員が全面的に参加する(枠の中だけが生活の全部に)」「一体感と(場以外に対する)孤立感を促進する」「ウチとヨソで社会が分かれる」「枠社会では社交性を育てる場所がない」「集団は直接的な人間関係を構成し、関係の強さは接触の長さ、激しさに比例する」「去るものは場から除外されていく」「単一社会を築く(所属集団が一つになる)」

○「タテ」組織による序列の発達

・「タテ」組織と「ヨコ」組織の定義
 「タテ」組織・・・「親・子」などの序列による組織。属性よりも序列優先。
 「ヨコ」組織・・・属性等の同質性による組織。

・「タテ」社会では序列が能力よりも優先される。前提として「能力平等観」。生年・入社年・学歴が評価の大部分を占める。

・能力差は仕事の量等で調整され、同序列内の評価に使われるに留まる。

・意見の発表でさえ序列が付きまとい、討論ができない。外国と異なり、日本では同僚同士の連帯意識が極めて低調で、「タテ」の上司・部下の連帯(大学であれば教授・助教授・・・)がきわめて強い。

○「タテ」組織による全体像の構成

・競争者は「対立」ではなく「並立」

・極端な人間平等主義により能力差を認めず、努力の量が違いを作っていると結論付ける。

・卒業する学校がその人間を再定義していることが階層間のモビリティ(上下の移動)が可能になっている。

・並立競争が基本であるため、同僚・同業種との競争が過酷になりがち。(企業ではワン・セット構成で競争)

○集団の構造的特色

・「タテ」集団は底辺のない三角関係。「ヨコ」集団は成員が互いに繋がる関係。

・「タテ」集団への入団条件は緩く、解放されている。新しい成員は三角構造の下部に位置づけられる。

・「ヨコ」集団への入団条件は厳しく、閉鎖されている。集団傘下のルールが定められていて、ルールに当てはまらなければ参加できない。

・「タテ」集団のリーダーは一人に限られ、三角構造の上を下の者が代替することは困難。乗っ取るか分裂するパターンが多い。下部の三角関係が並列の関係にある三角関係と対立し、派閥を作りやすい。並列する三角関係同士の調整は非常に困難で上部に互いの上部に位置するものの介入が必要になることが多い。

○リーダーと集団の関係

・「タテ」集団のリーダーは直属幹部成員の調整役的立場になる。リーダーの権力は直属の幹部との力関係によって決まり、リーダー個人よりも内外の条件に支えられている。西欧的リーダーシップでは上と下の約束による接点が設定されるが、日本では接点が設定されず、上が強ければ権威主義、下が強ければ日本的民主主義になる。

・リーダーの条件は能力よりも序列が最上位であること。リーダーシップは人間的な直接接触によって可能になる。

○人と人との関係

・日本は元々西欧的な「契約精神」がなかったことが西欧との違いに繋がる。西欧のリーダーは契約に基づく目的の達成が絶対だが、日本のリーダーは和の維持を重要視する。

・西欧では歴史的に二君に遣えることは当然として起こりえたが、日本ではほぼあり得ず、タブーとされていた。

・日本では論理などよりも直接的な関係や感情による相対性原理が強く作用する。

・日本では論理よりも感情が優先し、批評家ですらまともに批評できず、仮にまともに批評すれば「人格批判」としてとらえられていた。当然、真の対話や議論などは成立しえなかった。

・日本の感情優先の会話は無防備な会話に繋がり、日本人のストレス軽減につながっていたのかもしれない。

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