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【戦略的思考とは何か】レポート

【戦略的思考とは何か】
岡崎 久彦 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/412100700X/

○この本を一言で表すと?

 外交的観点から見た日本の軍事面の分析と善後策についての本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・幕末から戦後までの外交面を中心として書かれた「○○とその時代」シリーズの著者が書いている本ということで購入しましたが、同じ外交を軸とした観点で軍事面について書かれていてなかなか説得力があるなと思いました。

・1983年に書かれた内容で、結果から見ればソ連を過大評価しているようにも思えますが、当時の著者が触れることができた情報からするとこういった姿が捉えられるのだなと思いました。
当時と状況が変わっていることで結論が変わりそうな内容もありましたが、現代でもそのまま考え方が通じそうなところもありました。
改めて現代の非対称戦争中心の状況は20年前には考えるきっかけもないほど遠い状況だったのだなと思いました。

・考えるべきはパワー・バランス、イデオロギーや主義主張などは考慮しなくていいという結論が後半の章で何度も出てきますが、シンプルながら説得力があるなと思いました。
そのパワー・バランスの把握と、そのパワー・バランスに基づく軍事力の確保という実行面はかなり大変そうだとも思いましたが。

第一章 伝統的均衡

・日本と韓国という地理的環境以外にほとんど違いのない民族・国家の比較、中国が飛び抜けて強大で安定していて対外的に野心を持たない傾向など、アジアの状況の分析が短い文章ながらも的確に書かれていてなるほどと思いました。

第二章 日清戦争と軍事バランス

・日清戦争において、その直前まで軍事的なバランスで日本が清に負けていて、清が軍事に注力していない間に徹底的に注力したところで軍事力が並び、そのタイミングで戦争を起こしたということは、戦う前に勝負はほとんど決まっているという孫子などの戦略論を地で行く話だなと思いました。

第三章 北からの脅威

・ロシアが一度掴んだものは離さないというのはイメージ通りである気がしますが、タタールの軛などそうなる経緯があり、またそうしてきた経緯があるというのは興味深いなと思いました。

・日本にとっての北方の意味とロシアにとっての意味が大いに異なり、ロシアにとっての航路確保の重要性とかなり比重が重たいのは日本にとっては分かりにくいのかもしれないなと思いました。
この意識の差を理解し、また周りに理解させるのはかなり大変そうだと思いました。

第四章 アングロ・サクソンとスラヴの選択

・アジアにおけるバランスはアングロ・サクソンとロシアの二強、というのはシンプルな結論で、また明治時代でもこの本が書かれた当時でも現代でも愛国的な日本人には受け入れづらい結論だろうなと思いました。

・明治の日本や中国が力の実体を持っていないというのは極論過ぎるような気がしますが、結果的には決定力を持っていなかったというのは理解できる気もします。

第五章 日露戦争からの四十年

・日露戦争で「勝ち過ぎた」ことにより、その後の戦略が誤ったということと、甲陽軍鑑の「勝敗は六分か七分勝てばよい。八分の勝利は既に危険であり、九分十分の勝利は大敗を招く下地になる」ということを重ね合わせているのはうまいなと思いました。
また、その勝利に至る道を作ってきた明治第一世代からその下地を受け継いだ明治第二世代の感覚の違い、アメリカの台頭の過小評価など、様々な条件が見事に揃って大敗にまで繋がるというのは、皮肉なほど整然としているなと思いました。

第六章 デモクラシーで戦えるか

・民主主義というものが、割と戦争にも強い制度であるというのは興味深い考え方だなと思いました。

・国民が「怒ってできる戦争」なら継続して戦えるという、評判で戦う仕組みというのは、独裁国家よりも戦争を始めることは難しそうですが、戦争を遂行する上ではうまくやれる仕組みかもしれないなと思いました。
同時に、継続するために評判を維持し続ける必要がある意味では政府としてはかなり労力も必要だと思いました。

第七章 戦後世界の基本構造

・戦後から冷戦終了前までの基本構造が二極で考えられ、何度も言われてきた「多極」ということがほとんど当てはまらなかったというのは、確かにそうかなと思いました。

・アングロ・サクソン側とソ連側が二極となって、その二極のどちら側に付くか、どちら側の敵になるのか、または中立でいるのかという動きで戦後が語れるのも確かにそうかなと思いました。

・中国がソ連と仲違いして中ソ国境に兵力がある程度割かれることになったのはかなり大きい要因で、日本にも大きく影響を与えていたのだなと思いました。

第八章 核の戦略

・核戦争が破滅的だからこそ、拮抗すると戦争に踏み切らないだろうという考えで「相互確証破壊理論(MAD)」ということが真剣に考えられていたことは、「核による平和」という言葉にも表れていてかなりの影響力を持っているなと思いました。
その拮抗すること自体を目的として、アメリカがソ連に核保有状況を正確に開示したりなど、通常の敵対状況では考えにくい状況になっていたのは興味深いなと思いました。

第九章 新しい戦争

・決定的な共倒れを避け、妥協による終結が戦後に起こる戦争では考えられるというのは、戦後以降は現代においてもまだ対称戦争・総力戦が起こっていないので実証はされていませんが、確かにその可能性が一番高いようには思いました。
その前提の上で、日本が主体とならない戦争が起こった場合に日本を戦争に巻き込むことが不利益になるように戦力を備えておくべきというのは、その具体策が難しそうではありますが、それなりに説得力があるなと思いました。

第十章 情報重視戦略

・孫子の「百金を惜しんで敵の情を知らざるものは、不仁の至りなり」ということと、アメリカが元々は島国的孤立主義から急速に情報重視に転換して成功を収めたこと、日本では全くその逆を行っていたことはかなり的確に当たっているなと思いました。

・日本のお役所言葉としての「お経」と、その「お経」を大前提にしてしまっての失敗は、戦中だけでなく、現代においても大いにある話だなと思いました。

第十一章 日本の同盟戦略

・シンプルに、日本の同盟戦略はアングロ・サクソンと組むこと一択、と言っているのは、これまでの歴史の流れから考えるとこの本が書かれた時点ではその通りだなと思いました。
現代においてもかなり説得力がある意見だと思いますが、今後もその通りになっていくかは中国がキーとなって変わっていきそうな気もします。

第十二章 綜合的防衛戦略

・日本が攻められる場合を想定した時に、備蓄面にも弱点があるというのは、今でもそうだろうなと思いました。

・スイスやフランスのような「民間防衛」の必要性、もしもの時のプランの必要性などは、国家として準備しておくべきなのかもしれないなと思いました。