【《日本の思想》講義――ネット時代に、丸山眞男を熟読する】レポート

【《日本の思想》講義――ネット時代に、丸山眞男を熟読する】
仲正 昌樹 (著)
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○この本を一言で表すと?

 「日本の思想」の逐次解説現代版

○考えたこと

・「日本の思想」全体を万遍なく解説するのではなく、「Ⅰ 日本の思想」の説明に3分の2を当て、残りで「Ⅲ 思想のあり方について」と「Ⅳ 「である」ことと「する」こと」を解説していて「Ⅱ 近代日本の思想と文学」にはほとんど触れていませんでした。
今に生きる考え方を抽出して解説するにはなかなかいい配分だなと思いました。
個人的には「Ⅱ 近代日本の思想と文学」が一番理解しづらかったので解説してほしかったところですが。

・「日本の思想」に登場する人物だけでなく、類似した考え方も併せて解説されていてより分かり易く幅をもって学べて良かったです。

・ちょこちょこ出てくる自称ネット思想家やテレビによく出てくるコメンテーターに対する批判が的を得ていて同意できました。

・「サンデル」ブームで出てきた「にわか哲学ファン」の解釈(精神史的な教養がなく、話がうまいサンデル先生のワンポイント含蓄くらいにしか思えない)や、現代の哲学者のタコツボ化状況について触れられていて面白かったです。
もともと哲学は総合的なもので科学も哲学の一部であったこと(ガリレオは自然哲学者、カントは天体物理学の論文も書いている)と、日本の哲学は優秀な者(先見の明がある者)ほどごく一部を専門的に掘り下げる場合が多いことから、哲学を総合的な学問とすることが構造的に難しいことなどに触れていました。

・「国体」の無限責任と京大入試カンニング問題に対する論説(カンニング犯を被害者扱い、大学の無限責任)を重ねていて分かり易いなと思いました。

・「Ⅲ 思想のあり方について」のイメージに関する話と関連して、現代日本のネット社会を「ネ申」信仰として、自分と同じ意見だけを抽出して「やはり、私は正しい!」と自身をマインドコントロールし、また分かり易く偏った意見を書いてウケを狙う方向性について触れていて面白かったです。

・「Ⅲ 思想のあり方について」でマルクスが「自分はマルクス主義者ではない」と言ったイメージと実物の差異について、現代日本の「キャラ立ち」を対応させているのが面白かったです。
周りが評価する「本当の自分」に乗っかる形で「キャラ」を作るというのは、「キャラ」に縛られていないと「私らしさ」を発揮することができないという、多かれ少なかれ誰にも該当しそうな状況と連動して、なかなか逃れがたいものかなと思いました。

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