【トレイルブレイザー: 企業が本気で社会を変える10の思考】レポート

【トレイルブレイザー: 企業が本気で社会を変える10の思考】
マーク ベニオフ (著), モニカ ラングレー (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492534288/

○この本を一言で表すと?

 企業という存在を社会に貢献する主体に位置づける考え方の本
 

○よかったところ、気になったところ

・子供時代から2019年までのセールスフォース・ドットコム創業者の歩みと考え方が書かれている本でした。
個人的には、創業者がオラクルでの勤務経験があるのにオラクルのRDBの考え方を踏襲しないセールスフォースを運営していることが気になっていましたが、特にトラブルもなく円満退職だったと書かれていました。

・著者の人生全般や価値観について広く触れられていましたが、著者の3冊目の本だそうで、前2冊はどのような内容なのか、どれくらい内容が重複しているか気になりました。

・フィランソロピーという用語が多用されていて新鮮に感じました。
20世紀後半くらいにメセナ(スポーツや芸術の支援)とセットで使われていて、CSR等の用語が出てきたらそちらに取って代わられてしまったイメージでした。
CSRが包括的な意味を持つので、フィランソロピーとして企業の社会公益的な活動だと特定する意味で具体的になるかもしれませんが。

PartⅠ バリューから価値が生まれる

・著者の最初のロールモデルとなる著者の祖父と父の話から、セールスフォース・ドットコムにも取り入れられている価値観の話、4つの価値「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」について触れられていました。

・著者のように時折4つの価値に従っているかを省みて、徹底していること、トップがその姿を見せ続けていることは、CSR経営等でも形骸化させずに継続していく手段としてよく言われているように思いますが、実践している企業は少なそうだなと思いました。

PartⅡ ビジネスは世界を変えるための最良のプラットフォームである

・企業として社会に関わること、その方法や実績について各章で述べられていました。

・セールスフォースで創業時から進めている、社会貢献に製品、資本、人の1%を投入する「1-1-1モデル」は興味深いなと思いました。
資本だけでなく人材も投入することで、またツールとしての製品も投入することで、投入した分野である程度の結果を出すところまで進みそうだと思いました。

・「初心」の章で、マインドフルネスを重視していること、V2MOM(ビジョン、バリュー、手法、障害物、評価基準)を活用しているところなどは、これらがどのようにセールスフォース・ドットコムの経営に繋がっていたのか、具体的に知りたいなと思いました。

・株主、顧客、従業員だけにとどまらないステークホルダー重視の姿勢と、社会の問題に対してアクティビストCEOとして立ち向かう姿勢は、企業が社会を変える偉大なプラットフォームだという本書の副題に沿っているように思えました。

○つっこみどころ

・本の内容をそのまま受け止めれば、セールスフォース・ドットコムが社会に貢献し、社会から選択される素晴らしい企業だと思えますが、実態とかなりのギャップがありそうにも思いました。
海外に最初に進出した先は日本だと書かれていましたが、日本の同社はサブスクリプションと標榜しつつも初期投資をかなり必要とし、この本に書かれているように「いつでもやめられるシステム」ではないですし、セールスフォースの担当者を何名か知っていますがこういった理念のもとに動いているようには思えませんでした。

・邦題の副題「企業が本気で社会を変える10の思考」が内容からすると微妙だなと思いました。11章あって、1章が過去の説明なのでこのタイトルにしたのでしょうか。
ただ、原題の「TRAILBLAZER(トレイルブレイザー)」も語感がいまいち流行りそうにない用語だなと思いました。
Google翻訳だと同義語で「pioneer」「innnovator」が出てきましたが、通常そちらを使うかなと。

・英語を併記している表題で「Shared Knowledge」「Corporate Culture」をどちらも「企業文化」としていて、意訳が結構多いのかなと思いました。
文章自体はそれほど違和感がなかったですが。

・何かが起きて、ポリシーに基づいて行動したことが書かれていましたが、その結果にほとんど触れられていなかったように思いました。
明確に良好な結果を出せているケースでは触れられていましたが、失敗例が一つも記されていないのが気になりました。

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