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【プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか】レポート

【プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか】
アレックス・モザド (著), ニコラス・L・ジョンソン (著), 藤原朝子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4862762492/

○この本を一言で表すと?

プラットフォームの要素や効果、成功例・失敗例などが盛り込まれた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・プラットフォームについての基本的な考え方、プラットフォーム・ビジネスを構成する要素、各要素についての事例、プラットフォーム・ビジネスに関する注意点・失敗例など、様々なことが詳しく書かれていて勉強になりました。

・著者2名はプラットフォーム・ビジネスのコンサルタントという経歴だそうですが、プラットフォーム・ビジネス以外のビジネスや経済学など様々な知見を交えて書かれていて、見識の深さがすごいなと思いました。

・ポーターのバリューチェーンに基づく企業を直線的な企業として、旧い時代の考え方であると何度も断じているのが、新鮮味があって面白いなと思いました。

・所々に挿入されているプラットフォーム・ビジネスの構成図や事例の図など、シンプルながらはっきり理解できるような図があってよかったです。

・この本の翻訳者の名前を初めて目にしましたが、スムーズに読める適切な翻訳で驚きました。

プロローグ 燃えるプラットフォーム

・ノキアやブラックベリーというハードとソフトウェアそれぞれを充実させてそれぞれ携帯電話世界一、スマートフォン世界一になった企業が、アップルやグーグルのようにエコシステムを構築できず、沈んでいったことが書かれていました。

・著者の経営するアプリコがブラックベリーのソフトを開発する会社だったところから、プラットフォーム・ビジネスのコンサルティングにシフトして成功を収めたこと、これからプラットフォーム・ビジネスについて説明していくことが書かれていました。

第1章 プラットフォームが世界を食い尽くす

・インターネット・バブルの時代に、プラットフォームを構築できず、ネットワークの経済性を活かせると思い込んで上場までした企業が採算を取れずに廃業した話が、ペット・ドットコムを事例として詳しく説明されていました。
インターネット等の新たなツールを活用したとしても、基本のビジネスモデルが変わっていなければ、既存のビジネスモデルとそれほど差異がでないそうです。

・これまでのビジネスモデル、バリューチェーンやサプライチェーン等に基づいたビジネスより、プラットフォームをベースに基づいたビジネスの方が優位性を有すること、そのプラットフォームの定義についてもまとめられていました。

・プラットフォームを取り巻く生産者であるプロデューサーと消費者との3者の関係を表した図が、シンプルながら以降でも事例を紹介する時に登場していて、基本になっている考え方で実際にプラットフォーム・ビジネスの仕組みを表現できているなと思いました。

・プラットフォーム・ビジネスは4つのコア取引「創造する」「結びつける」「消費する」「対価を支払う」を成立させるため、4つのコア機能「オーディエンス構築」「マッチメーキング」「中核的ツールとサービスの提供」「ルールと基準の設定」を備えることが重要だそうです。

・プラットフォームには1対1ベースの交換型プラットフォームと1対多ベースのメーカー型プラットフォームの大きく2種類に区分され、9つのタイプ「サービスマーケットプレイス」「プロダクトマーケットプレイス」「決済プラットフォーム」「投資プラットフォーム」「ソーシャルネットワーキングプラットフォーム」「コミュニケーションプラットフォーム」「ソーシャルゲームプラットフォーム」「コンテンツプラットフォーム」「開発プラットフォーム」があるそうです。細かく分かれていますが、それぞれが図で説明されていて、内容を忘れた時はその図のページに戻ることですぐに思い出すことができました。
これらの種類やタイプがビジネスモデルと一致しているかどうか、プラットフォームをどう設計するかが重要であるというのは、本当にその通りだなと思いました。

第2章 ハイエク対コンピューター

・テクノロジーの変化はツールの変化ではなく、環境そのものを変えるものだ、ということが産業革命を例に書かれていました。
革命的な技術が生まれてもそれが大多数に浸透するにはかなりの時間がかかっていたこと、現代のテクノロジーの進歩も、例えばインターネットもファクス程度の発明でしかない、などと言われていたこと、ドットコムバブルで一時的に成り上がった企業は、バリューチェーンなどはそのままでテクノロジーをツールとして使っていただけだったために失速したこと、旧来は取引コストが大きいことから価格をシグナルとして市場経済が成り立っていたが、現在のテクノロジー革命はコネクテッド革命であり、コンピューターの処理能力・通信費の下落・コネクティビティーとセンサーの普及・データ分析技術の発展などから、社会主義的な経済に似たような、分散化された大規模な経済の隅々で起きているようなことを中央集権化された組織で管理できるようになったこと、それでいて社会主義とはことなる交流に基づく経済に発展し、経済インフラが確立されていない国ほどプラットフォームが威力を発揮することなどが書かれていました。

第3章 限界費用ゼロの会社

・「歯科医院管理ソフト物語」の寓話で、ただのソフトウェアであれば、それだけならコモディティーにすぎないというのは確かにその通りだと思いました。
そして少なくとも日本ではその意識がなさそうだなと思いました。

・参入障壁が低いソフトウェアを始め、ハードにおいても、コミュニティーを構築できればネットワーク効果を享受することができ、参入障壁を構築できるというのもその通りだなと思いました。

・投資家がプラットフォーム企業を好む傾向があり、その理由として短期的にも長期的にも財務状況がよく、その財務状況がよい原因が、プラットフォーム・ビジネスモデルの費用構造にあり、限界費用がゼロに近いことが挙げられていました。
バリューチェーンに基づいた企業が規模拡大するには人員確保を含めたかなりの投資が必要になることに対し、プラットフォームに基づいた企業は規模拡大に必要な投資が小さく、容易であることも書かれていました。
「大勢が作り、大勢が売る」構造であることから、必要な規模(クリティカルマス)を超えると一気に拡大するようです。
規模が拡大すればするほど平均費用が下がり、利益率が上がるので、より成長するという流れに乗るそうです。

・ビジネスモデルが持続可能であるためには大きな市場が必要であり、正しい市場を選ばなければプラットフォーム・ビジネスはうまくいかないという注意点が書かれていて、その通りだなと思いました。

第4章 現代の独占

・アリババがイーベイの参入やタオバオとの競争を、イーベイについてはサービスで、タオバオについてはネットワークを遮断することで勝ち抜いたという話は、プラットフォーム・ビジネス同士の競争はかなり厳しいものになるのだなと思えました。
ある程度市場規模のある同業種であれば1、2のプラットフォームが独占的な地位を占めること、勝者が全てを手に入れるという仕組みだからこその競争の激しさなのかと思いました。

・昔から経済学で議論される独占とは異なり、この現代の独占は市場を拡張し、独占後もより競争的になることが示唆されていました。

第5章 ビリオンダラー企業をデザインする

・既存のバリューチェーンに基づいたビジネスとは異なる、4つのコア取引と4つのコア機能によるプラットフォームの価値エコシステムについて改めて説明されていました。

・ここでは4つのコア取引「創造する」「結びつける」「消費する」「対価を支払う」の内容と、それぞれが切り離して最適化できるようなものではなく、この4つは全て有効に機能させないとプラットフォームが崩壊することが書かれていました。

・交換型とメーカー型の2種類のプラットフォームでこのコア取引の内容に違いがあり、交換型では1対1がベースのため、両当事者の承諾が必要であること、メーカー型では1対多のため、フォロー型のシングルオプトイン方式になることが説明されていました。
このコア取引の設計はかなり重要で、如何に参加者のハードルを下げるか、シンプルにするかが重要になり、何もかもを盛り込むのではなく、そぎ落とすことが重要だということが、ティンダーやフェイスブックの事例で説明されていました。

・プラットフォーム企業自身が生産者・消費者としてではなく、生産者と消費者のコア取引を促進させることが重要だということが明確に書かれていて、プラットフォーム・ビジネスを構築する上では最重要視しないといけないことなのだろうなと思いました。

第6章 見える手

・「見えない手」ではなく「見える手」である、プラットフォーム・ビジネスの4つのコア機能について事例とともに詳しく説明されていました。

・消費者とプロデューサーをクリティカルマス以上に獲得して、流動的なマーケットプレースを構築する「オーディエンス構築」、正しい消費者と正しいプロデューサーを結びつけて取引と交流を円滑化させる「マッチメーキング」、取引の障壁を除いてコア取引を支援する「中核的なツールとサービスの提供」、奨励される行動や禁止される行動を規定する「ルールと基準の設定」の4つのコア機能は確かにどれも重要だと思えました。

・グレーな手段を使ってでも「オーディエンス構築」を行ったウーバー、エアビーアンドビー、ペイパルや、ルール変更することでサードパーティを排除したツイッターなど、かなり強引とも思える手段でこの4つのコア機能を確保している企業が多いことが印象的でした。

・プラットフォーム自体が流動的であり、状況に応じて柔軟に4つのコア機能を変更していること、そうでなければ独占的地位を築いても維持できないことは、確かにそうだろうと思いました。

第7章 ネットワークに仕事を任せよう

・ネットワークが成長することが全てよいケースというわけではないこと、成長に管理が追い付かなければ崩壊することなどが事例とともに紹介されていました。

・ネットワーク効果は「メトカーフの法則」で、参加者が多いほど便益が増えるもの、と単純に考えられていて、自分自身も全てではないが大体そうだろうと考えていましたが、逆ネットワーク効果といえる現象があり得ることが事例とともに書かれていて、そうではないと納得できました。

・フレンドスターやマイスペースなどのフェイスブック以前に流行したSNSが、4つのコア機能を確保できずにユーザー離れを起こすことになったこと、2010年にアンチフェイスブックアプリとまで騒がれたチャットルーレットが変態ユーザーの温床になってあっという間に失墜したことなど、どの事例もインパクトがありました。

・フェイスブックがまずハーバード大学の大学生限定で始め、アイビーリーグ所属大学に拡大し、大学全体から一般開放・・・という流れは知っていましたが、ネットワークを管理するための視点では見ていなかったので新鮮に感じました。

・プラットフォーム・ビジネスでは必ずしも先発優位というわけではないという話も新鮮味があるなと思いました。

・ネットワークのローカル性という考え方は、ビジネスと言う視点、リアルを結び付ける上では重要な考え方だと思いました。
ビジネスモデルによっては、特にモノがある場合では、どれだけプロデューサー・消費者を集めても、ローカル性を意識していなければほとんどマッチングできないなと思いました。

・「ネットワーク効果のはしご」の5段階「コネクション」「コミュニケーション」「キュレーション」「コラボレーション」「コミュニティー」の考えは、確かにネットワークの価値を高めるために必要な段階だなと思いました。

第8章 なぜプラットフォームは失敗するのか、どうすれば失敗を避けられるのか

・「よいツールができた」ということがビジネスの成功に直結するわけではないことが、4100万ドルを調達してサービス開始後すぐに失墜したプラットフォーム「Color」の事例を通して説明されていました。
ネットワークに参加価値がなければそのネットワーク自体の価値もない、という当たり前ながら厳しい話の意味がよく理解できました。

・参加価値を高める7つの方法として「①大規模な初期投資で安全を確保」「②業界既存者と協力」「③プロデューサーの仕事をする」「④既存のネットワークを利用」「⑤価値の高いユーザーを捕まえる」「⑥プロデューサーと消費者の両方の役割を果たせるユーザーグループをみつける」「⑦シングルユーザー・ユーティリティー(それ自体ツールとして有用なもの)を提供」が挙げられていました。
実行が難しいものもありますが、②③④などはスモールスタートの場合にはよさそうに思いました。

結論 次のビッグチャンスを見つける方法

・プラットフォーム企業の周辺でもビジネスチャンスがあること、但し、中心にあるプラットフォーム企業の動き次第で壊滅的な打撃を受ける可能性があることが、ツイッターアプリ企業やジンガなどの事例で語られていました。

・プラットフォーム・ビジネスの最大のリスクとして法的なリスクが挙げられていました。
国によっても違いますが、それまでにないビジネスモデル、マッチングを実現するビジネスモデルが法規制に抵触する事例は特にアメリカでは多かったそうです。

・プラットフォーム・ビジネスの機会を見つける方法として「取引コストを減らす・ボトルネックを取り除ける技術を探す」「複雑または見過ごされているネットワークを探す」「大規模で分断された未活用の資源を探す」の3つが挙げられていました。
業界としては医療、IoT、金融の3業界が今後変革の大きな業界で、プラットフォームが構築される可能性が高いそうです。

○つっこみどころ

・著者の経営するアプリコ社のアピールが所々挟まれていて、アプリコ社の宣伝も兼ねている本なのかなと思いました。
アプリコ社が提供するプラットフォームを簡単に試作できるツールなどには興味はありますが。

・原題は「MODERN MONOPOLIES」で第4章のタイトル「現代の独占」と同じでしたが、第4章はそれほどページ数がなく、それほどインパクトがあったようには思えませんでした。
全体として「現代の独占」がテーマになっているとも考えられますが、翻訳本では珍しく、邦題の方が内容にふさわしいと思えました。