【新宗教 儲けのカラクリ】レポート

【新宗教 儲けのカラクリ】
島田 裕巳 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4800207436/

○この本を一言で表すと?

 新宗教団体の財務構造を分析した本

○よかった点、考えた点

・宗教法人に関する法律の意味や宗教団体の収入と支出、資産の構造などが客観的に書かれていて、今まで自分がこんなものかなと考えていた印象がかなり変わりました。
収入や資産の大きさが信者の人数で考えると妥当だったり、今までは単純な金額の大きさでしか考えていなかったなと省みることができました。

はじめに

・「幸福の科学」がなぜ選挙に挑戦できたのか、一候補者あたり2,500万円かかる選挙費用を337名分、総額84億2,500万円を捻出できた、その収益構造として、教祖の著作による利益が10億円、会員が20万人として一人あたり1万円の献金と祈願を支出すれば40億円と低めに見積もってもかなりの収入基盤を抱えていることが分析されていました。
宗教と経済との関係というあまり研究が進んでいない分野を明らかにしようという著者の考えは面白いなと思います。

第1章 新宗教に集まる莫大な金

・「真如苑」という宗教団体が約15億円の仏像をオークションで落札したこと、その「真如苑」が日産自動車の工場跡地を739億円で購入したこと、しかも購入した土地の使い道を考えておらず、とりあえず落札した仏像の置き場所にしたことなど、スケールの大きい話だなと思いました。

・1965年、創価学会がまだ日蓮正宗とともにあった時、日蓮正宗の総本山に正本堂という建物を建立するために寄付を募り、4日間で目標50億円のところ355億円(今の貨幣価値なら1,000億円ほど)を集めたというのもすごい話だなと思いました。他の宗教団体の建物なども、どれも巨額の資金が必要なものばかりで、自分の身の周りの経済とは桁が違うなと改めて思いました。

第2章 なぜ宗教法人は課税されないのか

・この章のタイトル通り、「宗教法人が課税されないのはズルイ」と思っていましたが、宗教法人の収入の道が限られていること、宗教法人の金は信徒のために使われること、という建前を考えると、信徒が宗教法人に投資しているという構造になっていて、収入・支出関係ではなく、資産・費用の関係なのだなと納得できました。

・宗教法人となっているからこそ宗教団体の資産が相続税等から守り、持続性を保証されていること、収益事業と定められている事業が何であるかということ、ペットの葬儀は収益事業扱いとされていることなど、いろいろな事情を知ることができてよかったです。

第3章 創価学会のビジネスモデル

・創価学会は金がかかる宗教のイメージでしたが、会費が定められておらず、金がかからない宗教と言われていたこと、そのために地方から都市にやってきた中下層の庶民を信徒として獲得できたことを初めて知りました。

・創価学会を本尊の購入と聖教新聞や池田大作の著作などの購入で成り立つ商材ビジネス型の宗教という位置づけとしているのはなるほどと思いました。

・定期的な収入を得るための手段として名誉職としての財務部員制度を設け、「財務」という寄付ができる者がバッジをつけられることを許されるという羨望される立場を作ったというのはうまいやり方だなと思いました。今は誰でも財務ができ、収入がさらに安定しているようです。

・創価学会は金が集まっているだけに幹部が私腹を肥やしているイメージがありましたが、むしろ幹部が団体の余剰金を使えない仕組みができていて幹部に金銭面の利点はなく、そのために大きくなった宗教団体にありがちな分裂を避けることができていたというのはすごい話だなと思いました。

第4章 多様な新宗教のビジネスモデル

・創価学会のような商材ビジネス型だけでなく、献金型、スーパー・コンビニ型、家元制度型という類型を設けているのは面白いなと思いました。
献金型はそのままでわかりやすいですが、スーパー・コンビニ型の阿含宗は一つひとつは安価な商品や祈祷を細かく提供する薄利多売型、家元制度型の真如苑は修行を重ねた信徒が信徒を教える立場に回ることができる形態で、仏教やキリスト教などの昔からあった宗教団体とは異なる収益モデルを構築しているというのは面白いなと思いました。

第5章 なぜ新宗教に金が集まるのか

・新宗教が金を集める方法として、金を寄付することに意味を持たせること、集めた金で象徴的な建物を建てるなどして寄付した成果を見せること、それによってモチベーションが上がってさらに寄付、という好循環のモデルがあるというのは分かりやすいなと思いました。

・テレビショッピングと同じように期限を切って寄付をさせる機会を作ること、その常套手段としてリスクがあるもののこの世の終わりを期限にすることなど、消費者心理をうまく使っているなと思いました。

・宗教団体を支える信仰活動自体が信徒のモチベーションを支えるという仕組み(勧誘成功で宗教団体が大きくなり、よりその宗教団体の正当性を感じる)も、一旦構築できれば好循環が回りそうだなと思いました。

第6章 新宗教ビジネスの抱える問題

・通常の事業体と異なり、金が余ることが問題になるというのは面白いなと思いました。用途が制限されない自由に使える金の魅力に堕落させられるというのはあり得る話でしょうし、それだけに幹部が自由に使えないようにしている創価学会のシステムが際立っているなと思いました。

・信仰を失えば失った金は搾取されたものと認識し、それを公言されることで他の信徒にも悪影響があるという悪循環に陥るというのは宗教団体がどこでも抱えるリスクだろうなと思いました。

・信仰一世(自分の意志で信徒になった者)と信仰二世(親が信徒で生まれつき信徒である者)のコミットメントのギャップが存在することはそうだろうなと思いますが、いくつかの宗教団体でそのギャップの仕組みを構築しているのは面白いなと思いました。
天理教では3ヶ月の修養科という修業期間を設け、一燈園では六万行願という見知らぬ家の門を叩き、その家の便所掃除をさせてもらうという修業をさせているそうです。

・今の「おひとりさま」傾向により、先祖崇拝を核においている新宗教は危機を迎えているそうです。また献金型のビジネスモデルも限界を迎えているとか。

第7章 新宗教ビジネスは実際のビジネスに使えるか?

・新宗教の手法は営業に活きるそうです。意味づけや説教などを使って相手の意思をコントロールするというのは、確かにそういうものかもしれないなと思いました。

・家元制度型のビジネスモデルがそのままマルチ商法に繋がっているというのは、よくみかけるマルチ商法の勧誘風景などを見ていると確かに宗教みたいだなと思います。

・企業のコンプライアンス面の参考として、宗教団体の上層部に余剰金を使わせないような監視制度、一定の用途禁止などは確かに企業にとっても有効だろうなと思いました。

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