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【入門 公共政策学 – 社会問題を解決する「新しい知」】レポート

【入門 公共政策学 – 社会問題を解決する「新しい知」】
秋吉 貴雄 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121024397/

○この本を一言で表すと?

 「公共政策学」についてその成り立ちから構成まで事例に触れながら述べた本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・耳慣れない「公共政策学」について、他の学問と何が違うのか、どのような構成なのかが丁寧に説明されていてよかったです。

・構成要素の説明の章の冒頭で、それ以前に紹介した構成要素の最初から振り返るような説明書きがあって全体の中のどの部分をこれから説明しようとしているかがわかりやすかったです。
また、ところどころで「ここまでをまとめておこう」とそれまでの内容が簡潔にまとめられていたのもわかりやすかったです。

・政治家、政党などによる「政治」については「公共政策学」に関連する要素であるものの、最低限しか触れないようにされているようでしたが、それも主題をはっきりさせて、「政策」そのものに焦点を当てる上でよかったのかなと思いました。

第1章 なぜ公共政策学か

・政策の「目的」と「目標」の違い、複雑性や要素の多さによる対象としての難しさ、「自動化の選好」の挫折などが分かりやすく説明されていました。

・「公共政策学」の四つの特性で、「問題志向」「コンテクスト志向」「多元性志向」「規範性志向」が挙げられていましたが、「規範性志向」以外は経営学等の他の分野でも珍しくないですが、「規範性志向」はこれも経営倫理などの分野でみられるものの、それとは別の「公共政策学」特有の視点かなと思いました。

・「inの知識」と「ofの知識」の切り分けで、前者だけでも学問として成り立ちそうですが、後者を加えることで確かに実践に繋がりそうだなと思いました。

第2章 問題―いかに発見され、定義されるのか

・問題の発見と定義の話は、「公共政策学」に限らず様々な分野でありそうですが、問題が発見される4つの要因「重大事件の発生」「社会指標の変化」「専門家による分析」「裁判での判決」は「公共政策学」特有で興味深かったです。
問題の定義については手法自体が他の分野でも利用される手法そのままで、政策決定においてもこれらの手法が使われるのだなと思いました。

第3章 設計―解決案を考える

・設計においても特に目新しい手法等はなかったように思えましたが、政策手段の区分として「直接供給・直接規制」「誘引」「情報提供」があるという説明は分かりやすいなと思いました。

第4章 決定―官僚と政治家の動き

・全体として政府側・官公庁側の動きがメインで書かれている中で、政策の決定プロセスに政治家の動きが関わってくるからか、この章では政治家側の説明が厚くなっているなと思いました。
逆に考えると、政治家が関わるのは政策を決定する部分がメインで、それ以外は政府側・官公庁側でなされるのかなと考えました。

・官僚の立ち位置、専門家や諮問機関、民間への聴取などの立ち位置が分かりやすく説明されていました。
一般用医薬品インターネット販売規制政策を例として、官公庁同士の対立や民間企業・政治家等との意思調整など、本当にケースバイケースで大変なプロセスがあるのだなと思いました。

第5章 実施―霞が関の意図と現場の動き

・決められたことが実施まで落とし込まれることがどれだけ大変かが生活保護政策を例として書かれていました。
省庁から指針や通達が出され、都道府県・市区町村や実務担当者まで、政策の対象にまで届けることがいかに難しいかが伝わってきました。

対象と直接接する第一線級職員について詳しく説明されているのが印象的でした。
既に受け持っている業務に追加で決定された政策を実現させるための業務が下りてくることなど、民間企業よりも大変なのかもしれないなと感じました。

第6章 評価―効果の測定と活用

・政策のロジックを「投入→活動→産出→中間成果→最終成果」として、各段階を評価することが説明されていました。

・営利企業であれば利益という分かりやすく客観的な数字がありますが、公共政策の評価は、他の要素による影響の排除、直接的に効果を表す数字が見つからないこともあるなど、難しいのだろうなと思いました。

第7章 公共政策をどのように改善するか

・公共政策の改善箇所、手法について概説されていました。
政治に直接関わらない人の誰しもが感じる「閉じた世界での政策決定」を開かれたものにすることが大事というのは、確かにそうだろうなと思えました。
また、「現場知」と一般市民が有する「常識知」のギャップという視点はなるほどと思いました。

・政策決定の改善で述べられている四つの戦略「基本戦略」「フレーミングの戦略」「政策学習の戦略」「言説の戦略」の「言説戦略」も「現場知」と「常識知」のギャップを埋める方策として印象的でした。

○つっこみどころ

・政府の政策について、モニタリングが弱いという印象を持っていたので、「公共政策学」で「評価」について触れられているのであればどのようなものかなと期待して読みましたが、その内容が期待よりかなり薄く、やはりモニタリングについてはあまり詰められていないのだなとがっかりしました。