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【ルワンダ中央銀行総裁日記】レポート

【ルワンダ中央銀行総裁日記】
服部 正也 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121902904/

○この本を一言で表すと?

 気骨ある日本人が知識と経験を活かして国家の土台を造り上げた話の本

○この本を読んで興味深かった点・考えたこと

・戦後すぐに日本銀行で働き始めた著者が、その経験と東南アジアでの勤務経験を基に、アフリカの中でも最貧国と言われていたルワンダを興隆させていく話でした。
派手なパフォーマンスや賭けではなく、現状の問題点を把握し、何が使えるのかを把握し、着実に必要な手を打っていくことで、国民の生活が変わっていく様子が感動的でした。
派手さはないのに痛快な小説を読んでいるような気分で読み進めることができたように思います。

・様々な国の様々な人物が描かれていますが、先入観ではなく、自分の目で見て判断する著者の態度が一貫していてすごいなと思いました。
かなり複雑な状況で、ある程度は前情報を信じて動く方が楽に違いないと思いますが、その楽な手段を選ばないのは意志が強いなと思いました。
最初は敵対的な人物も、正面からやり合った後で和解してその後も仲が続いたというケースがいくつも見られましたが、立場の違いで敵対的にならざるを得ないことを理解していても、状況が変わったからといって心を許すというのは難しそうに思いますが、それができるのは人ができているなと思いました。

・著者の日記という主観的な内容なので、大げさな表現等があると割り引いても、数字で出ている実績や達成した事柄などから、実際にかなりのことをやり遂げていると判断できるなと思いました。

Ⅰ 国際通貨基金からの誘い

・ルワンダの中央銀行のトップにと依頼が来て受け、前情報がほとんどない状態で現地に赴き、最初からトラブルが続いた状態でもめげずに着実に自分の居場所を作っていく様子が書かれていました。
帳簿を新しく来た中央銀行総裁しかつけられない銀行というところからのスタートは、すごい話だなと思いました。

・コーヒーしか外貨を得る手段がなく、海まで1,600km以上の距離があり、他の産業はほとんどない、というかなり詰んだ状態という国内の状況でのスタートも、かなりのハードモードだなと思いました。

・職場周辺の人たちがみな信用しづらい人で構成されているのはなかなか大変だったろうなと思いました。
その中で国のトップのカイバンダ大統領が清廉な人物で、著者から具体的に経済政策の説明を受け、表面的ではなく国民のための経済政策を採用するとしたのはすごい光明だったろうなと思いました。

Ⅱ ヨーロッパと隣国と

・隣のルワンダと同じ元ベルギーの植民地だったブルンディに出張し、援助を受けて明らかにルワンダと異なる建物、職員が揃っているブルンディの中央銀行は、ルワンダとギャップがあり過ぎてすごいなと思いました。
それを、分不相応なコストを追わなかったことで、むしろルワンダにとっては良かったと思える著者の芯の通りっぷりが、これまたすごいなと思いました。

・外国人職員を強化し、現地職員の教育をしっかり進めること、甘やかさない方針を採用したことで、勤務習慣が根付いていった様子は、立ち上げたばかりの中小企業などでも同じような感じだろうかと思いました。

・家族が来たことでようやく安心できる場所ができたという著者の一心地ついた様子が書かれていて、著者が生身の人間で、気持ちが滅入ったりしながらもスタートを切って着実に改革を進めていたことをより理解できるように思いました。

Ⅲ 経済の応急処置

・二重の為替制度により、外国人を始めとした一部の人たちのみが莫大な為替差益の特権を得られる状態から、正常に戻すまで、既得権益を得ている者たちの抵抗をなんとか切り抜けている様子が書かれていました。

・ルワンダ唯一の商業銀行がベルギーに本店があり、ルワンダには意思決定できる支店も置かれていない状態だったこと、独占状態で国家の利益に反する行動をするインセンティブがあったことなどを、国債を保有させること、貸出規制をすることなどで商業銀行が事業継続性を担保しつつ、国家の為にもなるような存在でいられるように国策を変更していったのはすごいなと思いました。

Ⅳ 経済再建計画の答申

・ルワンダの経済再建計画を著者が策定することになり、その内容を検討するために様々なことを考慮に入れている様子が書かれていました。

・商業の点ではほとんど外国人商人が中心なところ、ルワンダの国内の商人の資質を見極め、能力を信頼するようにしたこと、外貨を得る唯一の手段と言っていいコーヒーの最低保証価格を上げることで農業の生産意欲を取り戻し、輸入に頼っていた日常消費の穀物の生産も上げるようにし、農家が余裕を持てるようにしたこと、毎年赤字の財政そのものにもテコ入れし、黒字になるようにしたこと、税制も外国人に有利で国民にとっては過大な税率を是正したことなど、現地の状況を理解して計画に反映した著者の能力はすごいなと思いました。

Ⅴ 通貨改革実施の準備

・予算均衡についてチマナ蔵相がなかなか態度を決めないことから、国際通貨基金からの資金援助がなかなか下りない様子や、税率を下げたことによる税収の低下が懸念され、ある程度上げざるを得なかったことなど、外から見たルワンダの状況が厳しく、いろいろな条件を突きつけられる著者の立場は大変だなと思いました。

・ルワンダの鉱業について、外国会社と交渉したり、ルワンダ商人の密輸を一定額まで合法化する政策を導入したり、様々なことに配慮し、動いて結果を出していくのはすごいなと思いました。

・新国会設立の祝賀式の演説で大統領が通貨改革に触れたことで著者が仰天し、投機が起こると覚悟したのに、誰も注目しておらず何も反応がなかったというのは、当時のルワンダの立ち位置を象徴している話だなと思いました。

Ⅵ 通貨改革の実施とその結果

・ルワンダの通貨基金の承認が遅延されている状況で、米国内の優先順位が低いことが原因だと判断して、米国のルワンダ大使のウィザース氏を動かして働きかけたことなど、ギリギリな状況での根回しで結果を出すのは見事な調整力だなと思いました。

・通貨改革について国会で審議する必要があるにもかかわらず、議員がその内容を理解していないという不安な状態で、著者の説明でホッとした様子が書かれていて、素朴で知識が足りない状態ながら真面目に議員としての活動をやり通そうとするルワンダの国会議員の様子が見て取れるなと思いました。

・通貨改革後、インド商人のラジャンが、砂糖を自分が損する価格に落としてでも敵対する白人商人を損させようとするところは、純粋な利益だけでは済まない恨みのような要素も商売には混じってくるということがよく出ているなと思いました。

Ⅶ 安定から発展へ

・ルワンダに2つ目の商業銀行を設立させる動き、ルワンダ開発銀行を中央銀行の傘下で設立し、日本人頭取を招聘したこと、産業を発展させるための倉庫会社やバス会社まで中央銀行の投資で実現したことなど、国家に必要な段階で必要なインフラを整備して運用していく様子が着実だなと思いました。
時期が早くても遅くても国家の発展は鈍りそうですし、この手の打ち方がうまいのはよく国家の状況、国民の状況を観察していたからだろうなと思いました。

Ⅷ ルワンダを去る

・通貨改革が始まり、ルワンダが発展していく中でももちろんトラブルがあり、人のトラブルとして蔵相が更迭され、能力が低い後任に決まったこと、気候や市況の悪化で著者がルワンダで就任している間に1年は大きな被害を受けたこと、後の民族紛争にも繋がる国外に逃亡した少数支配民族だったツチ族が国境を侵してきたこと、などが、乗り切ったものの存在したことが書かれていました。

・著者の後任に引き継ぎ、いよいよルワンダを去ると決まった壮行会で、大統領を始めとした様々な人たちが参列し、心から惜しんだ様子が書かれていましたが、著者の実績と人格の賜物だろうなと思いました。

増補1 ルワンダ動乱は正しく伝えられているか

・ルワンダの民族紛争は、今でこそ一方的な虐殺ではなかったという認識もありますが、当時の偏向報道の様子が書かれ、著者がそれに異議を唱えている内容とその根拠が書かれていました。

・少数支配民族のツチ族と多数民族のフツ族の対立で、後者が悪者として扱われていたが、ツチ族がフツ族の族長たちを殺害していったこと、フツ族の大統領爆殺など、その逆もあったでしょうが、一方的ではなかったと書かれていました。
ジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」でもルワンダ紛争が取り上げられ、実際にはフツ族同士での格差による紛争という一面もあったことが書かれていたことを思い出しました。

増補2 「現場の人」の開発援助哲学

・FXの会社であるセントラル短資の社長がアフリカについて語っているというそのこと自体が興味深いなと思いました。偏見ではなく、現場を見て、判断して動いた著者に感銘を受けたそうです。

○つっこみどころ

・特に数字で述べられていない著者の感じている内容で、異なる章で同じ時期のことを書いている時に相違があり、違和感がある箇所がありました。
主観なので全て整合性が取れているわけではないと思いますが、ポジティブな捉え方の後でかなりネガティブな捉え方が同じ状況について述べられていたので気になりました。