【日本中枢の崩壊】
古賀 茂明 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062170744/
○この本を一言で表すと?
政治家、官僚の動きについて改革派官僚が感じたことを述べた本
○よかった点
・全体として、霞が関内部の立場からみた省庁、官僚の状況がいろいろ書かれていて面白かったです。
・官僚特有の霞が関言葉の使い分けが面白いと思いました。(「一元化」と「一体化」の違い(P.153)、「積極的に検討」は「やる」という意味(P.244)、など)
・独禁法改正の流れで、商法の江頭憲治郎氏など、知っている人物が登場していて面白かったです。(P.238)あと各省庁・委員会間のやり取りも、法案作りをこっそりやるために特許庁のビルの会議室を使う(P.250,251)など、具体的でした。経産省からOECDに派遣され、送電分離の方針を打ち出させて正月の新聞に載せるよう画策したというのも面白かったです。(P.258~262)(第七章)
・組織力とはチームワークの「和」や「協調性」だけでなく、決断力、俊敏性、行動力も含むもので、日本の組織力は欧米の政府や企業に比べて明らかに劣っている、というのは納得です。(P.281)
・「<最小><不幸>社会」というのが最悪のメッセージだということ、「スクラップ・アンド・ビルド」が重要だという考えは確かにそう思いました。(P.314~317)
・できるかどうかは別として、終章の思い切った政策の議論は面白いと思いました。
○参考にならなかった所、または突っ込みどころ
・やたらと「国民の声」という言葉を多用していますが、自分の意見を「みんな言っています」という幼稚な精神の人が振りかざす建前のような印象も受けました。(例えばP.161の1行目)
全体として「国民」の定義が曖昧になっている印象も受けます。(世論を指しているのか、公務員以外の人間を指しているのか、企業経営者と公務員以外の人間を指しているのか、など)
・著者の役職名、略歴の最後など、いろいろ皮肉が効いているなと思いました。