【消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし】レポート

【消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし】
ケンジ・ステファン・スズキ (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4047315346/

○この本を一言で表すと?

 デンマークの国籍を得てデンマークでビジネスをしている日本人が書いた本

○この本を読んで面白かった点

・「格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり」に比べるとまだ客観的に書かれていて、デンマークの制度や実際に生活している者からの視点、問題点などが俯瞰できてよかったです。

第1章 デンマークの高福祉社会

・デンマークでは医療費が無料であるものの、家庭医という制度があり、重大な用件でなければ公営の病院を利用しないように日常的な医療を担当しているそうです。家庭医は理由がなければ高熱が出ていても薬を出さないそうです。
歯医者は有料で日本よりも医療費が高額だそうで、国外に行って治療する者が多いそうです。

・著者の孫が心臓に欠陥を持って生まれてきて、その治療費だけでも1億円を超えるような額で、親の宿泊費や親が仕事を休む給料減、海外に渡航して手術を受ける際の費用などが掛かったところ、全てが補填されたそうです。
福祉国家のすごさを感じました。

・子供の出産や育児においての費用補填や有給休暇もかなり充実していて、子供が病気になった時の付添も有給休暇扱いになるそうです。
保育園や幼稚園が充実し、さらにベビーシッターや保育ママの利用も容易になっていて、子ども手当も保育費用の25%を目安に付与されるため、母親も「働いた方が得」という仕組みになっていて出産による就業への負荷がかなり減らされていることには感心しました。

・デンマークの学校制度も高校、大学間のランクづけがなく、学べる分野もそれぞれかなり違っていて、どの仕事に就くかで選ぶこと、仕事に就くことや上級職に昇進するためにも都度資格が必要になり、そのための勉強が必要になるというのは他では聞かない仕組みだなと思いました。
平均8年で職を替え、また新しい仕事に就く前に学校に通い資格を取るというのは日本との違いが顕著だなと思いました。

・年金制度が共生という目的に直結していて、お金を持っているものに渡るのはおかしいという認識が徹底しているのはすごいなと思いました。

・高齢者向けの民間サービスが排除され、高齢者の面倒は国が看ると徹底されているのは驚きでした。サービスが交通手段などを含めていろいろなシチュエーションで用意されているうえ、葬儀費用まで国が出すというのも驚きでした。

・失業者、障害者、生活保護者についても細かくシチュエーション別に支援制度があるというのも高福祉社会の名に恥じないなと思いました。

第2章 デンマークの高負担の実情

・デンマークでは個人登録番号が生まれてから死ぬまでついて回る仕組みになっていて、渡航者にも労働許可書が付与され、これが個人登録番号がわりになっているそうです。

・一人あたりの税負担が大きいことで有名ですが、25%の消費税はかなり細かく追跡され、年商5万クローネ(約75万円)以上の15歳以上の者は徴収されるというのはすごいなと思いました。

・デンマークの大企業が挙げられていましたが、国内需要規模が小さいため、海外展開している企業がほとんどで、学校でも国民学校の頃から外国語の習得や外国での就業について学ぶ授業があり、国家全体として海外への展開の準備がされているそうです。

第3章 デンマークの問題点と共生社会

・デンマークでは離婚が多く、その理由で一番多いものは「妻の夫に対する不満」だそうです。
その理由で離婚が増える原因としては妻が就業して自立していて「家事に参加しない夫は必要ない。離婚すれば夫の面倒を見なくていい分だけ負荷が減る」と考えられていることがあるそうです。
著者自身も離婚を経験しながらも子供のことで何かあればいつでも連絡がくるようにしたり、元妻の家族と親子付き合いが続くなどの体験をされたようです。

・デンマークでは自殺者がなかなか減らないそうですが、その理由は他国で多い経済的理由などは少なく、孤独感によるものが多いそうです。

・能力格差による所得の格差が存在し、高卒の給与と大卒の給与では倍ほどの差があるものの、誰でもいつでもチャレンジできる準備時間と機会が与えられる制度が整備されているため、そのことによる不満はあまりないそうです。

第4章 デンマーク史概略

・デンマークでは19世紀半ばに憲法が制定され、国家の防衛は国民によってするという精神から福祉制度が整えられていったそうです。
戦後も高福祉・高負担の福祉国家としての政策を推し進め、国家予算の約40%は福祉政策、約28%は地方交付税としてその一部は地方福祉行政に回され、約18%は学校運営、国防費、公務員給与に当てられその一部は国民への教育サービスに充てられるという合計約85%が国民に見えやすいサービスに割り当てられているそうです。

○つっこみどころ

・第1章が全体の半分以上を占めていてバランスが悪いなと思いました。後の章は付け足しのようなものでしょうか。第4章は特に短く、付け足し感が強いです。

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