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【物語イタリアの歴史―解体から統一まで】レポート

【物語イタリアの歴史―解体から統一まで】
藤沢 道郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121010450/

○この本を一言で表すと?

 十人の各時代の人物を軸に歴史を物語風に語った本

○この本を読んで面白かった点・考えた点

・「物語○○の歴史」シリーズの中ではスペインに次いで「物語」が強く、しっかり歴史についても述べられているなと思いました。
物語を繋ぐ描写で前章の何年後の物語かということを記載してから始めるのは歴史の連なりがうまく表現され、さらに物語風になっていると思いました。

第一話 皇女ガラ・プラキディアの物語

・ゲルマン民族の大移動からゴート族やヴァンダル族と関わってきた歴史が書かれていて、ただ一方的に攻められていたのではなく、同盟を結んだり、部下として使ったり、敵対する以外の方向でも関わってきたことを知ることができました。

・ガラ・プラキディアが何度も夫に死なれて様々なところをめぐるのは、日本の戦国大名の姫と似ているなと思いました。

第二話 女伯マティルデの物語

・十一世紀ごろの貴族と教会との関わりの一つの形として、ベアトリーチェとマティルデの後ろ盾となったイルデブランド(教皇グレゴリウス七世)の存在が興味深いなと思いました。
そのグレゴリウス七世が皇帝ハインリヒ四世に「カノッサの屈辱」を味わわせたこと、そのハインリヒ四世が過去に庇護を求めたベアトリーチェ母娘を追い払ったことなどは、すごい恩讐関係だなと思いました。

第三話 聖者フランチェスコの物語

・聖者フランチェスコのことは、具体的には知りませんでしたが、そういう聖者がいたということは割と有名な気がします。
そのフランチェスコの経歴は初めて知りました。

・十二、三世紀当時、異端派がかなり勢力を強め、カトリック批判が行われているところを、同じように異端に近いフランチェスコを当時の教皇イノケンティウス三世が重用することで対抗したのは、かなり典型的な「毒をもって毒を制す」だなと思いました。
そのフランチェスコが死んだ後でその思想を厳格に継いだ厳格派と妥協した穏健派が争いになり、厳格派が弾圧される側になったというのは、組織化しないという方針を継いだ側が立場としては弱かったというある意味自明な流れで、宗教的というより政治的な流れだなと思いました。

第四話 皇帝フェデリーコの物語

・多言語を扱えて、肉体的にも優れていた皇帝フェデリーコが、アラビア語も扱えて当時はヨーロッパより進んでいたイスラム教世界の君主アル・カミールと交流し、科学的な知見の実験を行っていたりしているのは、とてつもなく多才だなと思いました。
しかし、早過ぎる天才が理解されないという歴史上の典型事例そのものに該当し、後を継ぐ者がなくホーエンシュタウフェン家最後の皇帝となったというのは、まさに「物語」だなと思いました。

第五話 作家ボッカチオの物語

・名前だけは知っていた「デカメロン」の著者ボッカチオの経歴は初めて知りました。
十四世紀のペスト禍の規模がすごいなと思いましたが、その中で生に溢れた物語を書いたというのはすごいなと思いました。

第六話 銀行家コジモ・デ・メディチの物語

・有名なフィレンツェのメディチ家が隆盛を誇るようになったその基礎を築いた人物の物語でした。
都市国家が共和政を敷いているということは知っていましたが、どのような体制だったかということはあまり知りませんでした。
やはり時代的に平等な制度ではなく、既得権益者がかなり強かったというのはやはりという気がしました。
その中でメディチ家が既得権益者外から支持を得ていたというのは意外でした。

第七話 彫刻家ミケランジェロの物語

・コジモの孫のロレンツォ・デ・メディチに見出されたミケランジェロが、かなりの偏屈者であったこと、レオナルド・ダ・ヴィンチと対立していたこと、メディチ家と対立するサヴォナローラを支持して板挟みになっていたことなど、かなり複雑な人間関係だなと思いました。
宗教改革等のかなりの激動の時期に芸術家として生きることの大変さのようなものも伝わってきました。

第八話 国王ヴィットリオ・アメデーオの物語

・うまく立ち回ることで公から王になることができたヴィットリオ・アメデーオが、晩年は息子に王位を譲った後でまた王になりなくなって忌避されたというのは、老いてから身を退かない者が受ける報いを自業自得で受けているなと思いました。

第九話 司書カサノーヴァの物語

・いかにもイタリア人っぽい色男の物語で、ヴェネツィア、パリ、ロンドンで浮名を流しまくってやり過ぎて追われて流浪するというカサノーヴァをイタリアを語るための十人の内の一人に選んだのは面白いセンスだなと思いました。

第十話 作曲家ヴェルディの物語

・イタリア独立に至る話と、作曲家ヴェルディの話を交錯させて語っているのは面白い手法だなと思いました。
近代の作曲者一人を取り上げても奥さんを亡くして意気消沈していたところを女優の支援でオペラを仕上げ、その女優と結婚して、と劇的になるのだなと思いました。

○つっこみどころ

・地名や人名がいろいろ出てきますが、都度地図や表が出てくるわけではなく、位置関係や人間関係の把握が難しかったです。少々ページ数が増えても挿入してくれるとより理解できたと思いました。