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【物語 イスラエルの歴史―アブラハムから中東戦争へ】レポート

【物語 イスラエルの歴史―アブラハムから中東戦争へ】
高橋 正男 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121019318/

○この本を一言で表すと?

 現代のイスラエルのある地域とその周辺をユダヤ人の動向を中心に書いた本

○この本を読んで面白かった点・考えた点

・紀元前の歴史について、聖書の記述と聖書以外の文書の記述から書かれているのはなかなか面白く、この時代にこれだけ細かく書かれた資料があって現代にまで残っている地域はなかなかないだろうなと思いました。

・話の流れに沿ったコラムが所々に出てきて、全体の流れの中で細かい話も知ることができてよかったです。

序章 イェルサレム

・イェルサレムがユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地とされていて誰が所有するかについて複雑な立ち位置にあり、イスラエルの首都としては国連も認めていない、政治の中心地には一度もなったことがない、というのは他にはない立ち位置だなと思いました。

第1章 パレスティナ・イスラエルの国土

・イスラエルの地理的な環境がざっと説明されていました。有名な死海が渓谷の谷の所にあるということは初めて知りました。

第2章 王政以前

・旧約聖書のユダヤ人の記述と聖書に書かれているユダヤ人以外のペリシテ人等の来歴についても触れているのは面白いなと思いました。

第3章 第一神殿時代

・旧約聖書で重要な位置を占めるダビデとソロモンの実績を発見された史跡などからも根拠づけているのは面白いなと思いました。
北のイスラエル王国と南のユダ王国の話は世界史の教科書に少し出ていたように思いますが、その来歴や盛衰について知ることができてよかったです。

第4章 第二神殿時代

・現代のユダヤ教に繋がっている律法や戒律、旧約聖書にも出てくるファリサイ派(パリサイ人)などの位置づけがそれぞれ詳しく紹介されていてよかったです。

・P.147のクムラーン宗教集団歴のカレンダーは毎年同じ日に同じ曜日が来て分かりやすく、宗教的行事にも聖書の記述にもうまく繋げていて見事だなと思いました。
1年を364日にして7で割れるようにしているところは前に少し話題になったハンキ暦を思い出しました。

第5章 対ローマユダヤ反乱

・ローマに対してユダヤ人が2度の大きな反乱を起こし、ローマにとってもそれなりに重要視されていたというのは興味深かったです。

第6章 ビザンツ帝国時代から初期ムスリム時代へ

・キリスト教徒がパレスティナに多く住むようになってサーサーン朝ペルシアが攻めとり、ムスリムがさらに奪い取るという流れは、勢力同士のちょうど境界にある地域だとしても動きが激しいなと思いました。

第7章 十字軍時代

・十字軍がイェルサレムを目指し、奪取したものの取り返されたりする流れは、それを口実にしていろいろ動きがあって興味深いなと思いました。

第8章 アイユーブ朝からマムルーク朝へ

・アイユーブ朝から奴隷王朝と言われるマムルーク朝になって破壊された史跡が復興されたり、その支配勢力の方針によって史跡などの扱いが大きく異なることはその統治の仕組みとも関係があるのかなと思いました。

第9章 オスマン帝国時代

・オスマン帝国が隆盛している時期と衰退している時期でパレスティナ地域をどこが主導して管理しているかが大きく異なっていく様が、その時代のパワーバランスを如実に表しているなと思いました。

第10章 ツィオニズム運動の開始

・ツィオニズム(シオニズム)運動の名前自体は有名ですし、ユダヤ人が自分たちの住む土地を求めた運動というイメージもありますが、その具体的な内容に触れてみるとイメージと少し違っているところもあり、いろいろ勉強になりました。

・パレスティナだけが候補だったというわけではなく、アルゼンチンなど、様々な候補地があり、一時期はパレスティナ以外に決まりそうになりながらも強硬派主導でパレスティナ一択になったという方針の揺れ動きは面白いなと思いました。

・ユダヤ人をうまく利用したい立場とアラブ人をうまく利用したい立場と自分たちで中東地域を統治したい立場を併せ持っていたイギリスの三枚舌外交の内容を当時交わされた文書と併せて説明されていて当時の国際情勢が垣間見えるようでこれも面白かったです。

・ツィオニズム運動に大きく貢献したベンイェフダーが、ヘブライ語をユダヤ人の象徴的な位置づけとしてその教育を進めたというのは、すでに他の地域に定着していたユダヤ人たちにも影響を与える上でかなり強力な手段だったと思います。

第11章 反ユダヤ暴動から建国前夜まで

・ツィオニズム運動に対して反ユダヤ運動もあり、その中でユダヤ人が3つの軍隊を持ち、第二次世界大戦直後に戦勝国各国の間で交渉しながら建国に繋げていく話は当時のユダヤ人の足場の不安定さを考えるとすごいことだなと思いました。

第12章 イスラエル王国誕生

・建国直後に第一次中東戦争で周りのほとんどが敵国という状態になり、それを乗り切ったのはすごいなと思いました。この時に乗り切れなかったら現在の中東情勢、中東国家地図とはかなり大きく変わっているだろうなと思いました。

終章 中東戦争

・イスラエルの地政学的状況からかなり不利な状況にもかかわらず、第一次~第四次中東戦争で生き残り続けたのはすごいなと思いました。
アラブ諸国側からの記述しかこれまでに読んだことがなく、割とイスラエルが強い状況だったような印象がありましたが、周辺のアラブ諸国も強力な軍隊を持っていたり、アラブ諸国間の微妙な関係等がなく完全に一致した同盟を組まれていたら一たまりもなかったのだなと思いました。

・イスラエル国外のユダヤ人、特にアメリカ在住のユダヤ人が大きく世論に影響していたというのは、現代の陰謀史観も含めて、誇張されているところもあるかもしれませんが、間違いなくイスラエルの存続・繁栄に影響していそうだと思いました。